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『民事再生法と資産評価』

執筆者の一人 不動産鑑定士 田原拓治

 2001年1月の倒産件数は1358件と帝国データバンクが発表した(日本経済新聞13年2月16日)。このうち民事再生法申請件数は77件である由。割合は5.67%(77÷1358=0.0567)である。

 民事再生法申請件数は、2000年4月施行後から2001年1月までの10ケ月間で675件である。この間の倒産件数については日経は報じていないため、調査したところ11,863件とわかった。割合は5.68%(675÷11863=0.0568)である。今年(2001年)1月単月の割合と10ケ月累計の割合とが殆ど同じである。民事再生法の申請件数は倒産件数100件に対して5.6件と言える。

 縁あって民事再生法がらみの鑑定評価をすることになつた。
 平澤氏と彼が代表の都市開発研究所の6人のスタッフとを加えて、全国に散らばるいくつかの再生企業の工場等の資産、ゴルフ場を鑑定した。

 上記民事再生法申請件数の中には、私が関与した案件のいくつかがあることになる。

 仕事に着手したが、評価の途中で壁にぶち当たった。
それは、民事再生法適用申請するのは製造業あるいはゴルフ場が多く、原価法の積算価格を出しても企業再生の価格として使い物にならない。
 会社更生法の資産価格の評価で、評価のいい加減さを弁護士がさんざん批判する事実を経験している。

 使い物になる価格を合理的に説明するには、企業収益からの収益価格にならざるをえない。

 しかし、企業収益からの収益還元法の分析に確立した手法が未だない。
 暗中模索で理論構成したが、その分析結果をしまっておくのはもったいない。いっそ公開してしまえということになり、書物を書くことにした。
 本書がそれである。

 著者はあいうえお順で、田原拓治、平澤春樹、松原幸生そして監修として企業の破産処理に造詣が深い弁護士の山岸洋氏にお願いした。

 平澤氏が経験に基づく民事再生法の鑑定評価を行うときの注意点を書き、私が工場の企業収益からの価格分析を担当し、松原氏が工場の不動産ファンドも視野に入れた不動産証券化について書くことにした。Q&Aは山岸弁護士の助言を得て3人が分担して執筆した。

 我々の原稿に対する山岸弁護士の朱書きが厳しく、版下原稿がなかなか出来上がらなかったが、やつと出版にたどり着くことが出来た。
 
 私の担当部分の内容のエッセンスを書けば、製造工場の純収益の経営・資本への配分率は経営に平均16%、資本に13%である。
 残余利益として不動産に配分された利益を除して工場の土地建物の価格を求めるのであるが、その利益を除すために採用する還元利回りは、業種平均で18.7%である。5%とか6%の低い還元利回りではない。
 経営のリスクを考えれば、5、6%のごとく低い利回りで工場を建て経営しようとする人はいない。

 早期売却要因による正常価格に対する修正率は、マンションで67%、ゴルフ場で27%と分析されている。

 私以外の平澤氏の担当章では、民事再生法の資産の評価ではどういう所に注意するのか、注意点が良く分かると思われる。

 また松原氏の担当章では、巷間いわれる不動産証券化というものがどういうものなのか理解出来ると思われる。

 発刊の本書物は、不動産鑑定の実務に大いに利用出来ると思う。
 また民事再生法の資産の価格はどの様にして求められているのか知りたい人には、成るほどこうして不動産の価格は求められるのかと理解出来ると思う。
 映画の宣伝ではないが、内容は「乞ご期待」と勝手に思い込んでいる。
                    (同書 「はしがき」より)

(目次内容)
T Q&A 民事再生法のポイント
U 民事再生法と資産評価
 1.民事再生法の特色
 2.民事再生法と不動産鑑定評価
 3.なぜ資産評価が必要か
 4.民事再生法の資産費用かはどういう価格か
 5.求める価格の時点はいつか
 6.調査の秘密性
 7.評価のための資料
 8.鑑定評価の費用と時間
V 価格分析
 1.企業収益からの新しい価格の求め方
 2.製品売上高に対する家賃割合
 3.工場の利回り
 4.資本に配分される利益
 5.経営に配分される利益
 6.機械装置の価格
 7.民事再生会社の工場の評価
 8.不動産利益配分からの工場評価
 9.企業収益DCF法による工場の価格分析
 10.DCF法の一つの問題点
 11.ホテルの新しい価格の求め方
 12.早期売却価格修正率
 13.土地・建物回転率
W 企業再生と不動産証券化
 1.証券化とは
 2.どうして不動産証券化がよいのか
 3.倒産企業に帰属の不動産の証券化
 4.どのように証券化を行うか
 5.費用と時間
 6.わが国の不動産ファンド
付録 民事再生法 民事再生規則 

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