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106)グループ企業再建に忙殺される東急電鉄

 東京急行電鉄がグループ企業再建に忙殺されている。
 経営再建3ヶ年計画の最終年度の2003年3月期末のグループ全体の有利子負債は、2兆1882億円になったという。(日経2003年3月26日)
 計画当初より8000億円少なくなったという。

 とすると、3年前にはグループ全体で、借金が3兆円というとてつもない巨額な金額であったことになる。

 そして、2005年3月期を目標とする経営再建計画を行い、更に大幅な有利子負債の減少に取り組むという。

 子会社か孫会社か知らぬが、ドンドン借金を膨らまし、借金が返せなくなり、親会社の電鉄本社に何とかしてくれと泣きついているのであろうか。

 どんな事情か、門外漢には分からないが、放置しておくと東京急行電鉄の本体もおかしくなってしまうための経営再建であろう。

 そうしたグループ合理化の一環としてであろうか。
 子会社、孫会社企業の売却、不動産の売却を東急電鉄は進めている。
 以前『鑑定コラム』にも紹介した ベーカリーの売却記事 もその1つである。

 そして、次の2つの売却を最近行った。
 1つは、食品製造、加工会社のゴールドパックという会社を、84.5億円で売却した。
 購入したのは投資ファンド会社のフェニックス・キャピタルという会社(このフェニックス・キャピタルの会社についての関連記事が、本鑑定コラム165) 「企業買収ファンドという新しいビジネス」 にあります。)である。
  ゴールドパックは、社員数540人で、売上高は430億円である。
 11億円の黒字会社である。

 投下資本に対する売上高倍率は、
           430億円/84.5億円≒5.0倍
である。
 売上高に対する投下資本の割合は、
           1/5.0=0.2
である。
 即ち、売上高の20%の売買価格である。

 ゴールドパックの利益率(利益/売上高)は、
           11/430=0.0255≒0.026
で、2.6%である。
 投下資本84.5億円に対する投下資本利益率は、
           11/84.5≒0.13
で、13%である。

 投下資本の回収期間は、
           1/0.13=7.7年≒8年
  で、8年である。

 8年で投下資本回収可能であれば、投資会社は購入するということと分析される。
 これを逆読みすれば、10年の投下資本回収では買わないということになる。 利益率10%では市場性が得られないということになる。このデータ結果は重要である。覚えていて良いと私は思う。

 もう1つの売却は不動産である。
 以前『鑑定コラム』で記事にした 東急文化会館 の敷地の売却である。
 その土地は、戦後の渋谷マーケットに使用されていた土地を、明治通りの拡幅に伴い、東京都より交換取得した土地と伝えられる。

 東急文化会館の土地の売却価格は257.6億円である。
 買主は三菱信託銀行である。(前掲日経)
 明渡しの条件は書かれていないが、建物の築年が古いことより、建物解体撤去して更地明渡ではなかろうか。

 この土地の面積は約3,600平方メートルと聞く。
 平方メートル当り単価は、
          25,760,000,000円÷3,600≒715万円
  約715万円である。

 対象地の平成14年相続税路線価は、5,640,000円である。
 路線価は、地価公示価格の8掛の価格と国税庁は発表している。
 即ち、
          地価公示価格×0.8=相続税路線価
である。

 対象地の推定地価公示価格は、
            X×0.8=5,640,000円
で、705万円ということになる。

 対象地は約3,600平方メートルという大規模画地である。
 商業地にあっても一画地3,600平方メートルという規模は大きい。
 この要因による修正を本来は必要であるが、渋谷駅前という稀少価値等の諸々の理由で、マイナス・プラス相殺されるとして行わないとすれば、相続税路線価より見た対象地の価格は、平方メートル当り705万円である。

 実際の売買価格は715万円である。
 少し開差があるけれども、不動産の価格は売主、買主のそれぞれの思惑が反映されて決められるものである。
 公的評価格から推定される価格と、実際の売買価格との間に開差があるのは当然である。
 東急文化会館土地の売買価格は、妥当な価格とすべきであろう。

 買主は三菱信託銀行と発表されているが、三菱信託銀行は金融業を専門とする銀行である。
 その銀行が、まさか貸ビルを建てて不動産賃貸業を行うわけではなかろう。
 どこか別の不動産会社、或いは投資会社が実際の買主で、三菱信託銀行の信託受益権の所有権移転ではなかろうかと思う。

 どうもよく分からないのが、「信託受益権」による所有権移転行為である。
 所有権移転であれば、単純に「売買」による所有権移転にすればよいと思われるが。
 信託受益権について私はあまり知らないので、この辺りはどうもよく理解出来ない。

 それはともかくとして、依然として長く続く不動産不況の中で、未だに一件で257.6億円という巨額な金額の土地取引が行われることに驚きを感じる。

 それだけの巨額の費用を投資する土地に、どの様な建物が建つか楽しみにしていたい。
 257.6億円の土地への投資金額だけで終わるのでなく、これから建物への莫大な建設投資費が必要となるのである。

 味も素っ気もない事務所ビルが建つのか、それとも、渋谷の街に、将来を先取りした24時間営業の新しい文化的魅力を持った建物が建つか。
 

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