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1124)利回り法賃料の講話

 月に一回、都内で15名前後の不動産鑑定士が集まり、私の賃料の話を聞き、その後飲み食い会の懇親会となる会合が開かれている。二次会でカラオケ店に流れることもある。

 その勉強会を参加者は「田原塾」と呼んでいる。
 参加者のうち私が最年長で、他の参加者は私よりも遙かに若い40〜50歳前後の不動産鑑定士の方達で、女性も4〜5人常に参加されている。

 講話は家賃の新規賃料から始まり、現在は家賃の継続賃料に入っている。
 家賃が終わったら地代の話に入ることになる。
 いつまで続くか分からないが、それでももう1年半も続いている。

 平成25年9月は、継続賃料の利回り法について話した。
 その講話の大要を記す。

@ 利回り法の算式

              価格時点の基礎価格×価格時点の継続賃料利回り
              +価格時点の必要諸経費

=利回り法賃料

A 時制の一致

 基礎価格、継続賃料利回り、必要諸経費の時点は3つとも価格時点の時点である。

 これを継続賃料利回りは、従前合意時点の利回りを使用している不動産鑑定書が大半である。

 『鑑定基準』は継続賃料利回りは従前合意時の基礎価格に対する利回りを使用せよ(「標準とし」という言葉を使っているが)といっている。

 『鑑定基準』通りに評価作業を行うと、地価上昇の時には著しい高い家賃が、地価下落の時には著しく安い家賃が求められてしまい、裁判官及び代理人弁護士が鑑定に対して非常に大きな不信感を持ってしまった。

 それは『鑑定基準』の前段部分の「標準とし」の表現にとらわれすぎて、後段で記述されている「基礎価格の変動」ということを忘れて評価を行った為である。即ち時制の一致を不動産鑑定士が無視していたためである。

 利回り法は地価の安定した時でないと使用出来ないという不動産鑑定士が少なからずいる。

 しかし、地価が安定的な時にしか適用出来ないと鑑定基準は述べていない。
 「基礎価格の変動」という文言があり、地価の変動時でも適用出来ることを明言している。

 賃料改訂時以後の基礎価格の変動も考え、価格時点の類似の不動産の利回りも考えて決定せよと言っているのである。

 例えば、平成2年の頃は地価は高騰していた。しかし、そのときでも基礎価格はあり、その基礎価格に対する賃料の利回りはあった。その利回りは当然低い利回りである。

 その後地価が下落した現在でも賃料は存在し、基礎価格は存在し、利回りはある。その利回りは平成2年の時と比べれば甚だ高い利回りである。

 分かり易く説明する為に、建物価格を考えず、土地価格だけで考えれば、土地価格の高い時の利回りが2%であったとした場合、その後土地価格が下落して1/5になったとすれば、賃料の変動がゼロとすれば、現在の利回りは、

      2%÷1/5=10%

になるのである。
 これが現在・価格時点の継続賃料利回りとなるのである。

B 価格時点の継続賃料利回りを求める算式

                                              賃料変動率
              従前合意時の継続賃料利回り ×───────           
                                             不動産変動率

=価格時点の継続賃料利回り

C 従前合意時の継続賃料利回りを求める算式

      従前合意時の支払賃料の純賃料
         ─────────────────                         
           従前合意時の基礎価格

      = 従前合意時の支払賃料の継続賃料利回り

D 従前合意賃料は支払賃料を使用した方がよい

 実質賃料で行うと一時金の運用益、共益費、償却益を求めなければならなく、面倒である。

 それらを考える必要なく支払賃料で考えた方が計算が楽である。

 その際「支払賃料の純賃料」と明記しておけばよい。

 求められる従前合意時の継続賃料利回りも、支払賃料の純賃料に対する継続賃料利回りということになる。

 求める賃料は支払い賃料であるから、実質賃料を必ず使用しなければならないと云うものではない。

 実質賃料を使用するのは、差額配分法までで、差額配分法で支払賃料を求めてしまえば、他の手法のスライド法、利回り法も支払賃料で求めても、論理的に何の問題も発生しない。

E 純賃料を求めるには必要諸経費が必要である

 従前合意時点の純賃料(支払賃料の純賃料)を求めるためには、その時点の必要諸経費が必要である。

   支払賃料の純賃料=支払賃料−必要諸経費

 ここで問題が発生する。

 必要諸経費の重要項目である公租公課が、公租公課の証明は5年間までしかなされない。6年以上の場合、公租公課が分からないという現象が生じてしまう。

 公租公課が分からなければ、必要諸経費は求められない。必要諸経費が分からなければ純賃料が求められない。純賃料が求められなければ、継続賃料利回りが求められない。つまり利回り法が試算出来なくなるのである。

 これが利回り法の最大の欠点である。

F 継続賃料利回りは、新規期待利回りと無関係には存続しない。

 継続賃料は新規期待利回りと無関係には存在しない。関係して存在している。

 例えば2年前に新規契約し、2年後に賃料評価する場合、2年後の賃料は継続賃料である。

 期間2年経っているだけで、

   2年前  ・・・・新規契約だから新規期待利回り
   2年後  ・・・・継続だから継続賃料利回り

となる。

 2年しか経っていないことから、新規期待利回りと継続賃料利回りとは殆ど近似の利回りの数値である。大きな乖離があった場合は、別の要因の存在によるものであろう。

 通常新規期待利回りに近い水準の継続賃料利回りが求められる。

             新規期待利回り   6.3%
             継続賃料利回り      5.5%

の類である。こうした場合、両利回りの中間の5.9%を継続賃料利回りとする。

             新規期待利回り   6.3%
             継続賃料利回り      1.5%

のごとくの場合がある。
 この原因は、従前賃料が著しく安いことが原因している。

             新規期待利回り   4.5%
             継続賃料利回り    10.3%

のごとくの場合がある。

 この場合は、従前賃料が甚だしく高い場合である。

 いずれの場合も、その原因を解明して、より良い継続賃料利回りを決定することである。

G 昔の利回り法の求め方

 現行鑑定評価基準前の利回り法の求め方は、

          価格時点の基礎価格×価格時点の継続賃料の利回り

であった。
 従前賃料は全く関係なく、利回り法の賃料が求められた。

 この手法の場合、公租公課の金額など必要なく、利回り法の試算が出来ないという事態など生じなかった。

 この求め方が無くなり、純賃料、必要諸経費を求めなければならなくなった。

H 利回り法とスライド法は求め方の原理は同じである

 純賃料、必要諸経費を使用して求めるやり方は、スライド法の求め方であり、利回り法とスライド法は、やり方は異なるが、ほぼ同じ分析手法である。

 数値が異なるから違うやり方に見えるが、スライド法と利回り法は実質的には同じであり、スライド法のやり方を2度やっていることになる。

 それ故、スライド法で求められた賃料と、利回り法で求められた賃料は、極めて近似した賃料が求められることになる。

                (2013年9月11日の田原塾の講話録大要)


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