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1185)車返団地事件 納税者側全面勝訴

 車返団地事件の差戻控訴審の判決が、平成26年3月27日に東京高裁第14民事部の法廷であった。

 事件番号は、平成25年(行コ)第285号である。
 事件名は、「各固定資産評価審査決定取消等請求控訴事件」という。

 固定資産税の課税評価額の不当性を争っていた事件である。

 一審、二審は、課税側が勝訴したが、最高裁は、固定資産税課税評価額について新しい判断を示して二審判決を厳しく批判し、破棄差戻判決を出した。

 平成26年3月27日は、その差戻控訴審の判決が出されたのである。

 差戻控訴審の判決は、予想されていたが、法廷で判決の主文、主文言い渡しのあとの裁判長の短い要約の話を聞くと、課税側に対して甚だ厳しい内容のものであった。

 主文は次の通りであった。

 1.原判決中控訴人に関する部分を次の通り変更する。
 2.A市(注筆者)固定資産評価審査委員会が控訴人に対して平成21年10月13日付けでした審査決定(決定番号第1号)を取り消す。

  (注)判決文には市の名前が明記してあるが、筆者の判断で、A市とする。以下同じ。

 控訴人は、納税側住民である。
 被控訴人は、課税側のA市である。

 判決主文は、課税金額云々では無い。
 審査決定そのものを否定するものであり、当然課税金額そのものも否定する判決である。

 課税登録価格の違法性については、上告審の最高裁が新しい考え方を示したが、差戻控訴審はその考えに従い、その考えをより一層具体的に示している。下記である。

 「市街地評価法が適用されるときには、地域の区分、状況が相当に相違する地域区分、主要街路の選定、標準宅地の選定、標準宅地の適正な時価の評定、主要街路とその他街路の各路線価の比準、画地計算法の適用等が、いずれも適正に行われることが必要である。」

という。

 そして、
 「画地計算法の適用等が適正でなければ、その様な手続で決定された価格は、そもそも評価基準によって決定された価格とはいえないから、違法なものというべきである。」

と違法性の具体的内容を述べる。

 つまり、評価基準に従っていなくて求められている価格は違法であると、はっきりと判示する。

 それも、

 @ 地域の区分
 A 主要街路の選定
 B 標準宅地の選定
 C 標準宅地の適正な時価の算定
 D 主要街路とその他街路の各路線価の比準
 E 画地計算法の適用

の「いずれも」適正に行われていない場合は、違法となるのである。

 「いずれも」の文言を使用していることから、上記項目の1つでも適正で無いと、求められた登録価格は違法となるのである。

 手続や評価等が少々間違っていても、30%のアロウアンスがあることから、その範囲に登録価格が納まっていれば、適正時価を超えていないことになることからいいんだという考えを持って今迄登録価格を決めていたとしたら、その登録価格は違法ということになる。時価の7掛け云々の話では無いのである。

 時価の7掛け云々の価格とは別のサイドから、登録価格の違法性が問われているのである。

 A市の登録価格は、

 「標準宅地の適正な時価の評定が適切になされたものとはいえず、本件敷地登録価格の決定及びこれを是認した本件決定は、この点を看過した違法なものであるから、本件決定の取消を求める控訴人の請求には理由があるというべきである。」

と判示する。

 「標準宅地の適正な時価の評定が適切になされたものとはいえず」の具体的事項の最も大きなものが、一団地の住宅施設の土地利用制限を間違えて、土地価格を求めていることである。

 建蔽率20%、容積率80%の土地利用制限のある土地を、建蔽率60%、容積率200%の土地であるとして土地価格を求め、挙げ句に判断のミスを糊塗するごとく、建蔽率60%、容積率200%が正しいんだとする別の人の鑑定書を再発行した。

 その言い訳として、「建蔽率・容積率−10.0%」、「住環境+10.0%」として、プラスマイナス相殺されると主張し、課税価格は適正であると主張したのである。

 この点について、上告審の最高裁は、控訴審は充分審議していないとして、差戻の1つの理由にしたのである。

 それ故、差戻控訴審は、そこに踏み込み、長い長い一つの文章で、次のごとく判示する。

 「都市計画において一団地の住宅施設が定められているのは、当該一団地の住宅施設が存在する地域全体の健全な発展と秩序ある整備を計るためであり、その良好な居住環境を享受するという利益は、当該一団地の住宅施設の居住者だけではなく、広くその周辺住民においても享受することができる公共的な利益であって、被控訴人が主張する道路、公園及び学校等の公共的な施設等を利用 したり、開放的な雰囲気で精神的な安らぎを得られたりする利益は、当該一団地の住宅施設の居住者のみが享受するものではなく、周辺住民もほぼ同様に享受することができるのに対し、その敷地等について建ぺい率及び容積率が制限されていることによる不利益は、当該一団地の住宅施設の敷地を所有し、共有する住民だけが負担することになることから、一般論としては、そのような増加要因が減価要因を上回ることはないと考えられるところである。」

 建蔽率20%、容積率80%(以下80/20と呼ぶ)の地域である一団地の住宅施設は、居住環境が良いことは認める。

 しかし、その良環境は、当該住宅施設の人々のみが享受しているのでは無い。 周辺の居住者も、良環境の利益を享受している。

 それなのに、周辺地域の建蔽率60%、容積率200%(以下200/60と呼ぶ)の土地の税金を、80/20の人々は負担しなければならないのかということになろう。

 環境と建蔽率・容積率が、プラスマイナス相殺されるという安易な論理展開などするべきではない。

 もし当該地域に、その論理展開をするならば、膨大な頁による客観的な実証分析した学者による論文の添付が必要であろう。

 実証の裏づけも無い口先だけでの相殺論など述べるべきものでは無い。

 判決は、課税金額については論述していない。
 課税金額を論述する以前に、A市の課税登録価格の求め方が、根本的に間違っていることから、そちらを正すのが先であるということから、判決は課税金額を論述していないものと私は解釈する。

 しかし、それでは本件土地の課税をどうすれば良いのか困ることから、判決文の別紙で、課税評価額を添付している。

 この金額を参考として、本件土地の課税登録価格を課税側は決定せよと言うことであろう。

 とはいえ、裁判所が提示したことは、実質それで行えと云うことと同じである。
 A市は独自で再度計算仕直して決めるべきものでは無かろう。

 そんなことをしたら再度不服申立がなされる可能性が高い。
 再度紛争を起こすその様な愚かなことを課税団体は行うものでは無かろう。

 東京高裁提示の金額によると、本件の一団地の住宅施設の土地の標準価格は、u当り151,000円である。

 これに固定資産税課税特別修正率0.7を乗ずる。

     151,000円×0.7=105,700円

 この金額が、本件土地が面する主要街路の固定資産税課税の路線価である。

 この主要街路路線価に、不整形とか、広大地等の画地計算法の補正を行って求めた単価が、u当り81,500円である。

 これに当該土地を形成する一筆の面積15821.44uを乗ずる。

            81,500円×15,821.44u=1,289,447,360円

である。同様にして他の筆の土地の価格も求める。

 この金額は、控訴人つまり納税者側が裁判所に提出した金額である。
 即ち、不動産鑑定士春名桂一氏の不動産鑑定評価によって求められた金額である。

 標準価格のu当り151,000円とは、一団地の住宅施設である80/20の土地利用制限を考慮した価格である。

 周辺の土地取引事例(春名鑑定の取引事例は1低専の容積率80%の事例を採用)と比較した比準価格と、80/20の土地利用の賃料収入による収益還元法の収益価格の2つの価格を勘案して決定された土地価格である。不動産鑑定評価でいえば「正常価格」と呼ばれる土地価格である。

 これに比し、課税側のA市の鑑定は、200/60の取引事例を使用して、収益還元法も200/60の建物が対象地には建つと考えて収益価格を求め、標準価格をu当り304,000円とする。

 同じA市の都市計画課では、対象地は80/20であって、200/60の建物は建てられないと断言するのに、課税する課の不動産鑑定は、200/60の建物が建つとして土地価格を求めているのである。

 つまり一団地の住宅施設の要因を無視した200/60の土地利用による価格である。

 これに7掛けして、主要街路の路線価をu当り212,000円とする。

      304,000円×0.7=212,800円

 7掛けした路線価は、212,800円にならなければならないと私は思うが、A市の路線価はu当り212,000円である。

 212,000円に画地計算法の補正を行って、u当り164,560円と求める。
 これに一筆の面積15,821.44uを乗ずる。

            164,560円×15,821.44u=2,603,576,166円

とする。

 納税者側の春名鑑定士と課税側の両者の金額をまとめると、下記である。

                     標準価格(u当り)     課税評価額(u当り価格)

  春名鑑定鑑定士   151,000円    1,289,447,360円(81,500円)   A市   304,000円   2,603,576,166円(164,560円)

 A市の評価額は、春名桂一不動産鑑定士の

                2,603,576,166円
              ────────     = 2.02                         
                1,289,447,360円

2.02倍である。

 納税者の住民が怒るのも無理無かろう。

 個別的要因を考えると面倒であるから個別的要因修正は0として、ここでは標準価格を取り敢えず正常価格と考えると、課税評価額が時価の適正価格である正常価格をオーバーしている。再記すれば下記である。

    課税評価額(A市)    u当り164,560円
        正常価格(春名鑑定士)    u当り151,000円

 今迄の最高裁の考えに従えば、正常価格をオーバーした部分は、違法であるということになる。
 私もてっきりそうした判決が下されるものと思っていた。

     151,000円−164,560円=▲13,560円
          ▲13,560円×15,821.44u=▲214,538,726円

 2.1億円余が違法である。

 ところが、平成25年7月12日、最高裁第二小法廷(千葉勝美裁判官裁判長、竹内行夫裁判官、小貫芳信裁判官、鬼丸かおる裁判官)は、新しい判断を示したのである。

 「当該土地に適用される評価基準の定める評価方法に従って決定される価格を上回るとき」は、その固定資産税の登録価格の決定が違法となるという考えを示したのである。

 私がこの最高裁の新しい判断は、全国の固定資産税評価に与える影響は甚だ大きいと判断し、鑑定コラム1101)の記事を書いたのである。

 ▲214,538,726円の違法では無く、

          1,289,447,360円−2,603,576,166円=▲1,314,128,806

13億円余の違法ということになるのである。違法の金額があまりにも大きいから繰り返すが、2億円余の違法では無く13億円余の違法であることになるのである。

 平成25年7月の最高裁の新しい固定資産税の評価額の破棄差戻の考え方が、どれ程の強烈なものか数字を知れば分かろう。

 差戻控訴審の東京高裁の判決文に別紙として、春名桂一不動産鑑定士の評価額が付けてあることは、この金額で課税せよということであろう。

 今回の差戻控訴審の東京高裁の判決は、大変良い内容の判決である。
 本来はこの判決が、差戻控訴審では無く、差戻前の控訴審で出して欲しかった。

 全国の区市町村の税務課職員から「A市は何と云うことをしてくれた」という激しい怨嗟のぼやきが聞こえてきそうであるが、しかし、良い判決である。

 担当した判事の名前を記しておく。名前を覚えていて良い裁判官であろう。

    裁判長裁判官   須藤典明
             裁判官   小川 浩
              裁判官   島村典男


  鑑定コラム1101)
「破棄差戻 春名鑑定士よくやった」

  鑑定コラム1265)「車返団地事件 再上告棄却」

  鑑定コラム1266)「車返団地事件 『平成25年度重要判例解説』(ジュリスト)に選ばれる」

  鑑定コラム1300)「車返団地事件の最高裁判決が下級審で利用されだした」



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