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151)東京区都心部の住宅地価の底は2002年4月だったか

 不動産鑑定士の価格分析研究会である不動産鑑定士市場賃料研究会が、毎月発表している『東京地価指数(住宅地編)』2004年1月号(2004年2月11日発行)によれば、2003年12月の地価指数は、次の通りである。(2000年平均=1.0)


          東京全域   0.96
     区部都心部  0.99
     区部南西部  0.92
     区部北東部  0.84
     北多摩地域  0.91
     南多摩地域  0.68

 未だ2000年の地価水準にもどらないが、地域ごとに見れば、かなり特色ある地価動向がうかがえる。上記指数のみ見ているだけでは、土地価格は上がっているのか、下がっているのか等の土地価格の動きはさっぱり分からない。前後の指数の動きを見ることによって、それらが分かってくる。

 区部都心部の地価指数を記すと、次のごとくである。

     2002年 1月  0.96 
                  2月  0.98
         3月  1.00
                  4月  0.92
                  5月   0.97
                  6月   0.98
         7月   0.99
                  8月   1.02
                  9月   0.98
                 10月   0.97
                 11月   1.02 
         12月   1.04
          2003年 1月   1.00
                  2月   0.99
         3月  1.01
         4月  1.02
                  5月  0.99
                  6月  1.06
                  7月  0.99 
                  8月   0.99
                  9月   1.05
                 10月   1.06
                 11月   1.03
                 12月   0.99     (2003年平均 1.02)

 上記数値をグラフに落として、図示して見ると土地価格の変動状況がよく分かる。

 土地価格が1ヶ月ごとに上下するのはおかしいと思われるかもしれないが、不特定多数の人々がそれぞれの考えで価格提示するものであることから、価格にブレが生ずるのは如何とも仕方が無い。それは上場株式の価格上下の現象と同じである。例えば、年率マイナス6%の土地価格の下落が続いて居たとしても、全ての土地が毎月等しくマイナス0.5%下落しているというものではない。

 2002年4月の地価指数の0.92が底値で、それ以降上下をくり返しながら、ゆるやかに右肩上りを示している。即ち地価上昇の傾向にある。
 2002年4月より2003年の平均指数(1.02)での値上り率は、10.9%(1.02÷0.92≒1.109)である
。  年率では6.4%の上昇率である。

 区部南西部は、2003年3月に0.86を底値にして上昇に転じている。都心部の地価変移から11ヶ月のタイムラグである。
 2003年の平均指数(0.91)でみる年率上昇率は、7.8%である。

 区部北東部は、2003年6月に0.76を底値にして上昇に転じている。都心部の地価変移から14ヶ月のタイムラグである。
 2003年の平均指数(0.81)でみる年率上昇率は、実に13.4%である。

 北多摩地域は、2003年11月に0.84という最低値の指数を示し、12月には上昇の数値を示しているが、1ヶ月のみの上昇数値で、これが底値とは断定出来無い。
 これから6ヶ月程度の価格変動を見る必要がある。そしていつ底値打ちするかが今後の注目である。都心部の地価変移よりどれほどのタイムラグがあるのか興味が湧く。

 南多摩地域は、底値が見えず未だ下落傾向にある。この地域も近い将来下落底打ちするであろうと予測する。

 東京の都心部のみでなく、区南西部、区北東部の住宅地価も底打ちし、上昇に転じたという現象は、非常に大きな意味を持つ。

 日本の土地価格の経済経験則として、東京の地価が、他地域の地価の変動の最先端にある。
 東京の地価より先に大阪や福岡の地価が先に動意を示すことは無い。それは経済の中心が東京であるためである。

 その東京の住宅地価が都心部、区南西部、区北東部にも底打現象が見られたということは、地価の下落が止まったということである。バブル崩壊後14年を経て、地価の下落は止まったのである。

 東京の地価の現象は、時間の差を伴うが必ず地方都市にも伝播すると私は考えるが、中には、それは今迄の経済経験則で、今回もそれが通用するとは限らないと言う人もいる。即ち少子高齢化が追い打ちを掛ける疲弊した農山村や廃村になった地域の土地価格は、下落に歯止めが止まらないと予測する人もいる。
 もっともなことである。収益が見込めなく、宅地需要の減る地域の土地価格は下がらざるを得ないであろう。

 それら地域の将来の土地価格の予測はともかくとして、長く続き、いつ下げ止まるかと多くの人を悩まし苦しめ、日本経済の足を引っぱってきた地価の下落が、日本の経済中心地である東京でやっと止まった。

 土地は、経済はもちろん生活、生産、消費等あらゆるものに関係し、その基礎になっている。その土地価格の下落が止まったのである。日本経済の明日に希望を見いだしたい。

 地価指数の分析を行っているのはどういう不動産鑑定士の方々かについては、このホームページの『鑑定コラム』104)「「東京の住宅地価の3局化」  に紹介してある。そちらの記事を見ていただければ幸いである。

 なお、この地価分析結果に基づいて、不動産鑑定士市場賃料研究会を代表して、会の代表者の平澤春樹氏が、2004年3月15日発売の経済誌『週刊エコノミスト』(毎日新聞社)2004年3月23日号p94〜p97に、「地価 東京の住宅地価は2年前から上昇を続けている」という記事のタイトルで論文発表した。

 上記分析をより詳しく分析し、具体的に都心の世帯数の最近の著しい増加現象等を書き加えて、良い内容の論文に仕上げている。

 オリジナルであり、且つ、日本経済の現状分析にとっても有意義な内容と判断されたからこそ『週刊エコノミスト』は取り上げたと思うが、日本の著名な経済誌に4頁の論文が載ると云うことは、なかなか出来るものではない。この辺り自画自賛になるが、たまにはそれは大目に見て頂きたい。

 『週刊エコノミスト』2004年3月23日号を買って、目を通して頂ければ幸いである。
 

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