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1510)三井不動産は売上高1.75兆円を見込む

 ホテル業界の2016年の景気状況を記したが、不動産鑑定評価とは密接な関係がある不動産業はどうなんだと云うことになる。

 不動産業の雄の一つである三井不動産の2016年3月期の決算書と来期の予想売上高より、2016年の不動産業の景況を推定し述べる。

 2016年3月期の三井不動産の決算書によれば、売上高と営業利益率は下記である。

       売上高      1,567,969百万円(1.56兆円) 
              営業原価     1,214,805百万円
              営業総利益     353,164百万円
              販管費       150,681百万円
              営業利益      202,482百万円

 営業利益率は、

                        202,482百万円
                   ─────────   = 0.129                   
                      1,567,969百万円

12.9%である。

 前期(平成27年3月期)は、

       売上高      1,529,036百万円(1.52兆円) 
              営業利益      186,074百万円

である。

 営業利益率は、

                        186,074百万円
                   ─────────   = 0.122                   
                      1,529,036百万円

12.2%である。

 金額で云うと、営業利益は8.8%増であるが、売上高は2.5%増である。

 いずれも増額であるから、不動産業は不景気とか横ばいの状態では無い。景気が良いと判断される。

 とはいえ、黒田日銀の金融の超超緩和政策で多くの金が市場に出回り、そのかなりの部分が不動産業に流れ込んでいるのであるから、不動産業の売上高、利益は倍増していてもおかしくないと思われるが、三井不動産の売上高を見ると、売上高の伸びは、思ったほど少ない。

 これはどうした事であろうか。

 不動産市場が、飽和状態になりつつあるということであろうか。

 三井不動産の2016年3月期の決算書で、日本経済の状況と不動産業界の状況を、下記のごとく述べている。

 「当連結会計年度のわが国経済は、国内企業業績の着実な回復や雇用・所得環境の改善等が見られ、緩やかな回復基調が続きましたが、資源価格の下落や金融市場の混乱など、不透明感も見られました。

 当不動産業界におきましては、オフィス賃貸事業については、都心部および主要地方都市において空室率の改善傾向が継続し、また都心部では募集賃料も上昇傾向が継続しました。商業施設賃貸事業については、暖冬の影響による一部販売の伸び悩みや、年明け以降に消費者マインドに足踏みが見られたものの、力強いインバウンド消費等に支えられ、総じて堅調に推移いたしました。

 住宅分譲事業については、建築コスト等の上昇に伴う販売価格高騰などの影響が懸念されましたが、新規供給戸数の水準が比較的低位となったこと、また、低金利での融資の継続や税制をはじめとした政策の効果などにより、総じて堅調に推移いたしました。不動産投資事業については、緩和的な金融環境の中でリートによる資産取得が進み、平成28年3月末時点の、Jリート53銘柄による資産総額は14兆円を上回りました。

 また、オープンエンド型私募リート16銘柄による資産総額は1兆4千億円を上回りました。」

 極めて簡単に要約すれば、

  @ 日本経済は回復した。

  A 不動産業界は、個別分野で云えば、賃貸業は堅調に推移している。

  B 住宅分譲事業も堅調である。

  C 不動産投資事業は、資産取得が絶好調である。

ということである。

 来期(2016年4月〜2017年3月)の状況については、次のごとく述べる。

 「今後の社会経済環境の見通しにつきましては、米国経済は底堅い個人消費にけん引され概ね好調に推移すると見込まれます。

 一方で、中国その他新興国の先行きや原油価格の動向などに不透明感も見られ、さらには英国のEU離脱に向けた動きや地政学的リスクの高まりなど、世界経済全体としては不確実性が高まってきています。

 わが国においては、雇用・所得環境のさらなる改善による個人消費の伸びや、インバウンド需要の拡大も期待されますが、消費税率引き上げ再延期を巡る動きや、世界の政治・経済の情勢が日本経済に与える影響にも十分留意する必要があるものと考えております。

 また、ICTの加速度的な進化やダイバーシティの進展により、くらしや働き方がますます多様化し、当社をとりまく事業環境が大きく変化していくことが予想されます。」

 上記を同じく極めて簡単に要約すれば、

  @ 原油価格の動向、英国のEU離脱等より世界経済は不透明である。

  A 日本経済は、世界経済の動きの影響があり、要注意である。

  B 情報通信技術の進展、より積極的な多様な人材の活用が求められている。

ということである。
  
 ICTは、「Information and Communication Technology」(インフォメーション アンド コミュニケーション テクノロジー)の略語である。日本語訳では「情報通信技術」である。

 ICTなどの英文字を使う必要性が、ここにあるであろうか。

 「情報通信技術の加速度的な進化」と日本語で表現すれば、良いでは無かろうか。何故「ICTの加速度的な進化」と表現しなければならないのか私には理解し難い。

 世界経済、日本経済の状況は分かった。

 ではそうした世界経済、日本経済の中にあって、三井不動産が業として属している不動産業はどう動くのであろうか。

 それについては、三井不動産の決算書には述べられていない。

 来期の不動産業の景況はどうなるのかについては述べられていないことから、それは三井不動産の来期の予想売上高から推定してみることにする。

 三井不動産の来期(2016年4月〜2017年3月)の予想売上高は、下記である。単位百万円。

                 29年3月予想          28年3月           増減率

  賃貸   544,000 509,178 +6.8% 分譲      525,000      391,577      +34.1% マネジメント 340,000      334,652      +1.6% 三井ホーム   249,000      247,455      +0.6% その他      92,000       85,104      +8.1% 全体     1,750,000     1,567,969      +11.6%

 賃貸事業とその他事業は、6〜8%増である。その他事業とは、主としてホテル事業である。

 賃貸事業とホテル事業の不動産業は、伸びが見込まれると判断できる。

 マネジメント事業は、三井不動産リアルティによる個人向け仲介事業やリパーク事業である。この事業はほぼ横ばいである。

 個人向け仲介の不動産業は、伸びないと判断できる。

 駐車事業も頭打ちということである。

 三井ホームは、戸建住宅事業の会社である。三井ホームの事業は現状維持である。

 戸建住宅の不動産業は、頭打ちと判断できる。

 分譲事業は、分譲マンション事業である。この部門は30%強の伸びを見込んでいる。

 これは分譲マンション事業は、大巾に伸びるということである。

 不動産業の分譲マンション業者は、2016年はまだまだ我が世の春を謳歌できるということのようである。

 日本経済は要注意の状態であると云いながら、11.6%の売上高増を見込むことは、云っていることと予想結果とは大きく異なっていると私には判断され、違和感を感じる。

 上記のごとくの疑問が少しあるが、三井不動産の平成29年3月期の予想売上高より、2016年の不動産業の景気状況が分かるのではなかろうか。

 三井不動産の売上高の推移を見る。単位百万円

     平成17年3月     1,111,359
     平成18年3月     1,159,280
     平成19年3月     1,229,193
     平成20年3月     1,360,023
     平成21年3月     1,418,945
     平成22年3月     1,358,806
     平成23年3月     1,405,269
     平成24年3月     1,338,102
     平成25年3月     1,445,644
     平成26年3月     1,515,252
     平成27年3月     1,529,036
     平成28年3月     1,567,969

 三井不動産の上記売上高の経緯を見ると、平成22年3月期(平成21年4月〜平成22年3月)に、売上高はダウンしている。

 平成21年3月期が、平成17年3月期以降増額して来た売上高のピークを付けている。

 不動産ファンドバブルという地価上昇現象のピークを付けたのは、平成19年7月である。それ以降地価は下落した。

 平成20年9月のリーマン・ブラザーズの倒産、同年暮れのトヨタ自動車の赤字決算の発表が、地価下落に追い打ちを掛けた。

 不動産ファンドバブルの崩壊を考えると、決算売上高のピークは平成20年3月期であるべきと思われる。

 東京都財務局発表の地価公示価格の23区の住宅地平均価格は、下記である。

                                u価格   

       2001年      454,000円     2002年      453,000円 2003年      443,000円 2004年 438,300円        2005年      440,300円 2006年      454,900円 2007年      517,500円 2008年 579,400円 2009年      530,500円 2010年      492,000円 2011年 487,800円        2012年      484,000円 2013年      478,000円 2014年 504,800円 2015年 518,600円

 地価公示価格のピークは、2008年(平成20年)1月1日の価格である。

 三井不動産の売上高のピークは、平成21年3月期であり、1年遅れている。

 この決算数値の遅延性という要因と、現在がリートバブルの状況にあるということを考えると、三井不動産の平成28年3月期の売上高増が2.5%と少ない現象を少し再考する必要性がある。


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