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1548)新規賃料と経済価値に即応した適正な賃料

 地代の評価において、土地賃貸借契約が60年以上も続き自然発生的な借地権価格が発生しているのにもかかわらず、借地権価格を全く考えずに地代を求める鑑定書が相も変わらず罷り通っている。

 地代評価と借地権価格とは無視出来ない関係があり、借地権価格を考えずに地代評価することはあり得ない。

 鑑定評価基準の「経済価値に即応した適正な賃料」の説明が曖昧であるため、更地価格に土地期待利回りである5%の利回りを乗じた純地代が経済価値に即応した適正な純地代と思い込んでいる。

 土地期待利回りと地代利回りが同じと思い込んでいる。

 借地権価格が発生していれば、5%の土地期待利回りから借地権価格の要因を考慮して地代利回りを求めなければならない。

 借地権価格要因の修正割合が50%であれば、

             5%×(1-0.5)=2.5%

が地代期待利回りである。

 鑑定基準は、継続賃料の差額配分法の項において次のごとく述べる。

 「差額配分法は、対象不動産の経済価値に即応した適正な実質賃料又は支払賃料と実際実質賃料又は実際支払賃料との間で発生している差額について」

と「経済価値に即応した適正な実質賃料又は支払賃料」と云い、経済価値に即応した適正な実質賃料又は支払賃料という新しい概念を記す。

 その新しい概念である経済価値に即応した適正な実質賃料とはどういうものかについて、「価格時点において想定される新規賃料であり、積算法、賃貸事例比較法等により求めるものとする」と述べる。

 経済価値に即応した適正な実質賃料とは、新規賃料であり、それは積算法、賃貸事例比較法等により求められるものということになる。

 経済価値に即応した適正な支払賃料ついては、基準は「契約に当たって一時金が授受されている場合については、実質賃料から権利金、敷金、保証金等の一時金の運用益及び償却額を控除することにより求めるものとする。」という。

 権利金の要因は、実質賃料を形成していると解釈される。

 権利金は償却するものではないことから、権利金要因相当を実質賃料から控除することになる。

 権利金が授受されていることは、権利価格が発生していることになる。

 ここで権利金については、権利設定のために授受されている権利金が当然含まれるが、借地権の場合、自然発生的に形成されている借地権価格も含まれる。

 鑑定基準を読むと、「経済価値に即応した適正な賃料」は新規賃料であり、それは積算法と賃貸事例比較法等より求めるといっていることから、それは新規賃料であり、「経済価値に即応した適正な実質賃料」という用語による賃料を作る必要は無いのではないか、という疑問が基準を読む人には当然生じる。

 しかし、新規賃料であるという一方、敢えて「経済価値に即応した適正な実質賃料」と区分することは、違いがあるということを意味する。

 その解は、「実質賃料より権利金」と云っている個所にある。

 経済価値に即応した適正な実質賃料、支払賃料とは、権利価格が発生している状態の実質賃料、支払賃料をいうのである。

 家賃の場合には、借家権価格が発生していることは少ないことから、積算法、賃貸事例比較法より求められた新規賃料となり、それはそのまま経済価値に即応した適正な実質賃料、支払賃料になるが、地代にあっては借地権価格が発生しているのが一般的であることから、借地権価格要因を新規賃料より控除したものが経済価値に即応した適正な実質賃料、支払賃料ということになる。

 地代における「新規賃料」と「経済価値に即応した適正な実質賃料、支払賃料」の概念をまとめると、下記である。

 地代における新規賃料とは、借地権価格が発生していない状態の新規地代である。

 地代における「経済価値に即応した適正な実質賃料、支払賃料」とは、新規地代であるが、借地権価格が発生している場合に、その要因を考慮した地代である。

 経済価値に即応した適正な支払賃料とは、価格時点で権利金相当を支払って、土地の新規賃貸借契約が結ばれる場合の支払地代を云う。

 自然発生的に借地権価格が発生している場合には、その価格相当の権利金の授受が価格時点でなされていると考えて、その状態の支払地代をいうのである。

 更地価格の50%の価格程度が借地権価格とすれば、借地権割合は50%ということになる。

 借地権価格が発生していない堅固建物所有目的の新規実質地代が、820,000円であったとする。

 つまり更地価格を前提にして、その土地利用で求められた地代が820,000円である。

 借地権割合50%ということは、その産み出された土地利用のうち、50%の利益配分を借地人が持つと云うことになる。

 そうすると、この借地権が付着する土地の経済価値に即応する適正な実質地代は、

               820,000円×(1−0.5)=410,000円

410,000円ということになる。

 (2016年9月9日、東京赤坂のホテルニューオータニの小さな会議室で開かれた田原塾平成28年9月会の講話レジュメに加筆して)


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