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175)特殊な画地・権利の鑑定評価特集のEvaluation13号

 不動産鑑定の実務理論雑誌である季刊誌Evaluation13号(プログレス、03-3341-6573、2004年5月15日)が発行された。

 13号の特集は、「特殊な画地・権利の鑑定評価」である。

 特殊な画地として大規模画地、私道、堤外地の土地についての論文、特殊な権利として道路占有利用権の価格の論文が寄せられた。

 「大規模画地(宅地)の評価」の課題で、不動産鑑定士の桜井誠三氏は、自らの固定資産税の画地評価で大規模画地の価格修正について問題意識を持ち、データ分析を行い試行錯誤を重ねながら、氏独自の大規模画地の規模補正率表を発表している。

 大規模画地の補正は、開発法によって解決される問題であると氏はいう。
 とはいえ、取引事例比較法で行う場合には、規模修正は必要となり、それは、間口と奥行の関係で置きかえられ、奥行に対し間口を0.8とすれば、地積大の修正問題は、奥行修正率によって置き換えられると説く。

 同誌8頁に補正率一覧表が掲載されている。
 この一覧表は鑑定評価の参考になると思われる。

 戸建住宅地で20万uの規模の住宅地の補正率も記されているが、戸建住宅地で一画地20万uの規模の戸建住宅地が存在するかどうか、いささか疑問に思われるが。

 私の個人的意見を述べれば、大画地の価格修正は「市場滞留期間」を併せ考えた方が価格の説明が付きやすいと思われるが。
 6ヶ月で売れる物、3年の期間を要して売れるもの等と分析し、売却までに数年を要する物件は、その間に地価の下落は生じ、かつ維持費もかかることになる。この面からの価格影響を考えて説明する方が分かり易いのでは無かろうかと思われる。不動産の価格は市場が決めることでは無かろうか。

 前記8頁の同表で「道路付補正」価値率一律0.3とあるが、これは無接道画地の修正率のことであろうか。
 無接道修正率は0.5とする報告書や書物が多い。
 0.3としたものを見るのは初めてである。
 無接道画地1/3が実際の取引価格に近い修正割合と思っていたが、同氏の分析による修正率はほぼそれに近い。

 不動産鑑定士、税理士の鵜野和夫氏は、「私道の評価」の課題で、相続税における私道の取り扱い方、国土利用計画法の土地価格比準表による私道の減価率について論述したあと、一般の不動産鑑定において私道付宅地においては、「私道付宅地の宅地部分と私道部分とは不即不離の関係で有機的に結合して、初めて効用を発揮しているものであり、宅地部分と私道部分とを分離して評価出来ないものである。」と論述する。

 私道沿の宅地と公道沿の宅地とでは、私道の道路の管理が悪く、道路としての機能が低下するようであれば、公道に接している宅地に比し、私道の補修費用負担の持分割合相当のマイナスが生じると述べる。

 不動産鑑定士の寺島鐐太氏は、「無道路地(私道付宅地)の評価」の課題で、建築基準法上の道路でない幅2mの通路に面している宅地の評価をケーススタディとして、実務的にどの様に価格を求めるべきか、具体的に価格算出の過程を述べる。

 不動産鑑定士の江見博氏は、「河川区域内の土地の評価」の課題で、堤外地の価格評価の考え方、評価先例を挙げて論述する。

 堤外地には1号区域、2号区域、3号区域の区分があるとは私は知らなかった。
 区域区分があることは、当然に価格差があることになる。

 堤内地の価格を100として、3号区域は50%、1号区域は10%を1つの目安と図を示して説明する。
 4つの評価例が示されているが、堤外地の評価に当っては、その考え方は参考になると思われる。

 不動産鑑定士の難波里美氏は、「道路占用許可に基づく敷地利用権価格」の課題で、道路占有権の性格、占用使用料の求め方を述べる。

 その求め方は単純ではなく、いくつかの手法があるようである。
 難波氏は評価先例を公開し、5つの手法によって完全所有権に対する道路占有価格割合を分析する。その割合は8.38%〜40%と巾が広い。中庸値の26%を評価割合とするが、決定額の説明責任を考えると、道路占有の利用価値を評価することは大変な難作業であると推測される。

 公道の下に地下街が造られているのをよく見かけるが、その占用使用料は近傍類似の土地価格の1%が標準ということを、この論文で初めて知った。

 一般論文として大学教授の論文が3つ並ぶ。

 1つは、中央大学法科大学院の丸山英気教授の、「等価交換方式マンションの管理問題をどう解決するか−東京地裁に現れた一事案を通して考える−」の論文。
 2つは、愛知工業大学の岡崎一浩教授の、「青色LED訴訟における無形固定資産評価に関する三通の鑑定書」の論文。
 3つは、松山大学の青野勝広教授の、「新土地譲渡所得税の提案−新土地譲渡所得税と含み益利子税付き譲渡所得税の統合−」の論文である。

 大学教授3人の論文は、Evaluationにでなく、いずれも学会誌に載せられてしかるべき内容の論文である。

 高邁な理論は苦手といって逃げずに、一読されて、思考の糧にされることを望む。
 思考の蓄積をさぼり、逃げていると、次の編集後記氏の叱声が耳に響いてくる。
 編集後記氏は、最後のページで、不動産鑑定士に対して厳しいことを云う。

 DCF法について、
 「世間では不動産鑑定士の<自家薬籠中の物>という美しき誤解があるようだ。
 しかし、実情は、甚だ心許ないものらしい。リスクフリーレートとかリスクプレミアムとかいう、ウォールストリートでのはやり言葉を鑑定書に使ってはいるが中身が何か、不動産鑑定士自身がよくご存じないケースもあるとか。
 考えてみれば、キャップレート、割引率、還元利回り、IRR、HPRのような言葉は今まで馴染みが薄く、ただでさえ空ろな頭脳が自爆テロで木っ端微塵に砕け散ってしまいそうである。
 不動産鑑定士も一層の研鑽が求められる時代になった。」
と。

 『Evaluation』13号の頒価は、1,500円+消費税です。
 大都市の有名書店のほか、下記ホームページから購入出来ます。

      http://www.progres-net.co.jp/
      

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