○鑑定コラム


フレーム表示されていない場合はこちらへ トップページ

田原都市鑑定の最新の鑑定コラムへはトップページへ

前のページへ
次のページへ
鑑定コラム全目次へ

2354) エンゲル係数30%

 2022年1月30日(日)の日本経済新聞の一面の企画記事『チャートは語る』は、「円安の重圧、暮らしに」という見出しで、次のごとく日本の現在の経済情勢が変換の過渡期の時期にあることを伝える。

 「「円安は日本経済にプラス」と云われてきた構図が変わりつつある。」で始まり、かっての日本は貿易で稼いでいたため、円高は輸出採算の悪化を招くとして嫌われ、円安政策が好ましいとして円安政策が取られてきた。

 しかし、多くの製造業が人件費の安い海外に工場を移転し、そのメリットも小さくなって来た。

 逆に、食料品、家電、衣料品の輸入依存が高まり、円安による物価高が国民の家計を圧迫してきた。

 今迄の円安政策のメリットは、薄れてきたと述べている。

 「豊かになれば下がるはずのエンゲル係数」といわれるエンゲル係数について、「家計の消費に占める食費の割合を示すエンゲル係数の上昇だ。21年1月〜11月は25%超と、1980年代半ば以来の水準に高まった。」と、南毅郎、佐伯遼、真鍋和也の3人の日経記者は連名で記す。

 殆ど忘れかけていた「エンゲル係数」と云う文言を目にし、現在のエンゲル係数が1980年代の割合と同程度となり、それは日本の円安政策が原因しているという指摘記事を読んで考えさせられた。

 そういえば、鑑定コラムで、一度もエンゲル係数と云う言葉を使用した事は無い。それに付いて述べた事も無い。全くエンゲル係数と云う言葉を無視、忘れていたに等しい。

 エンゲル係数の推移数値を発表しているものをネットで捜したが、1980年から2012年までのエンゲル係数は、農林水産省が、総務省の家計調査報告書より求めた数値があるのみである。

 仕方が無いから、1980年〜1999年までのエンゲル係数は、それを使用し、2000年以降は、総務省発表の家計調査報告書の二人家族の消費支出額と食品支出額より田原が計算して求めた。その数値は後掲の一覧表である。

 そのエンゲル係数の求め方は、

             食品支出額÷消費支出額=エンゲル係数
である。

 2000年以降2021年11月まで支出額を見ると、消費支出額は月額317,328円〜277,029円と減少している。

 食品支出額は、73,954円〜78,490円と増加している。

 消費支出額が減少し、食品支出額が増加していれば、両者の間の関係を示すエンゲル係数は上昇することとなる。それは当然の理である。

 食料支出を減らすことは難しいのが一般的であるから、エンゲル係数を低くするには、消費支出の原資である収入を増やすことしか無い。

 消費者である国民の収入を増やす、つまり国民の圧倒的多数を占める勤労者の賃金を増加する政策にすることである。

 政策の大変換である。その1つに円安政策の転換も当然ある。

 給与を低くする非正規社員の増加政策は失敗である。

 国民の賃金を増やすにはどうしたら良いのか。それについては、その為の専門家が日本には居よう。その人達が叡智を絞って考えょ。そして日本の現代のリーダーである企業経営者、政治家、官僚は実践せょ。その為に大枚の給与・所得、地位、権力、尊敬を得ているのであろう。

 1980年のエンゲル係数は29.0%である。

 2005年のエンゲル係数が22.9%である。

 エンゲル係数23%台の時期は多くあった。

 しかし、2021年7月にはエンゲル係数は30.0%、2021年8月にはエンゲル係数は30.5%になってしまった。エンゲル係数を30%超えにしてしまった政策、産業構造・経済構造は間違っていたと認識するべきではなかろうか。

 と、ここまで文章を書いて、改めて、さすが日経の記者は優れている。目の付けどころが違うと私には思われてきた。記事を書いた3人の記者に敬服する。

 下記に消費支出額、食品支出額、エンゲル係数一覧を記す。エンゲル係数は、1980〜1999年は農林水産省の計算値、2000年以降は田原の計算による。
 

  消費支出 円/月 a 食料 円/月 b  エンゲル係数 b/a
1980年     0.290
1981年     0.288
1982年     0.282
1983年     0.278
1984年     0.274
1985年     0.270
1986年     0.268
1987年     0.261
1988年     0.255
1989年     0.253
1990年     0.254
1991年     0.251
1992年     0.247
1993年     0.243
1994年     0.241
1995年     0.237
1996年     0.234
1997年     0.235
1998年     0.238
1999年     0.237
2000年 317328 73954 0.233
2001年 309054 71770 0.232
2002年 305953 71210 0.233
2003年 301841 69910 0.232
2004年 302975 69640 0.230
2005年 300531 68699 0.229
2006年 294943 68111 0.231
2007年 297782 68536 0.230
2008年 296932 69001 0.232
2009年 291737 68322 0.234
2010年 290244 67563 0.233
2011年 282966 66904 0.236
2012年 286169 67275 0.235
2013年 290454 68604 0.236
2014年 291194 69926 0.240
2015年 287373 71844 0.250
2016年 282188 72934 0.258
2017年 283027 72866 0.257
2018年 287315 73977 0.257
2019年 293379 75258 0.257
2020年 277926 76440 0.275
2021年1月 267760 74250 0.277
2021年2月 252451 72308 0.286
2021年3月 309800 79329 0.256
2021年4月 301043 75640 0.251
2021年5月 281063 79244 0.282
2021年6月 260285 76092 0.292
2021年7月 267710 80313 0.300
2021年8月 266638 81412 0.305
2021年9月 265306 76673 0.289
2021年10月 281996 79543 0.282
2021年11月 277029 78490 0.283


 上記数値をグラフにしたのが,下記である。



エンゲル係数2021年





フレーム表示されていない場合はこちらへ トップページ

前のページへ
次のページへ
鑑定コラム全目次へ