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2373) 京都市令和3年度市有地入札平均価格と予定価格  

 京都新聞ウエブ(2022年3月8日 6:00)が、京都市民が市財政が厳しいことから、観光客の入館料で潤っているお寺の固定資産に課税せょという要望が多く寄せられているという記事をネットに載せていた。

 宗教法人の所有する固定資産への課税は無理であるが、京都市が市財政で困っているのであれば、市有地を売却しているのでは無かろうかと推測し、京都市のホームページを訪れて見た。

 京都市は市有地を売却していた。

 京都市がホームページに、令和4年2月16日付として『令和3年度 市有地売却に係る一般競争入札の結果について 』発表していた。
  (https://www.city.kyoto.lg.jp/gyozai/page/0000293458.html)

 8件の市有地の入札売却を報告している。8件のうち1件は応募者が無く、売却されていない。

 市有地等の公有地の売却は、公開入札が原則である。そして最高価格を入札した人が落札ということになる。

 売却する場合、どれ程の金額でならば売却すると云うことの公開も必要で、売却予定価格とか、最低売却価格を同時に発表している。

 その価格決定は、役所が勝手に決めることはしなく、専門家である不動産鑑定士に評価を依頼して、その評価額を目安にして売却予定価格を決定している。恐らく京都市内に事務所を構える不動産鑑定士に評価依頼をしているのでは無かろうか。

 そして公有地を売却する場合には、原則として、売却する前に議会に諮り、議会の承認を得ない限り売却することは出来ない。

 それは地方自治法237条2項に決められている。

 地方自治法237条2項は次のごとく規定する。

 「第二百三十八条の四第一項の規定の適用がある場合を除き、普通地方公共団体の財産は、条例又は議会の議決による場合でなければ、これを交換し、出資の目的とし、若しくは支払手段として使用し、又は適正な対価なくしてこれを譲渡し、若しくは貸し付けてはならない。」

と規定する。

 東京都も都有地の入札売却結果をホームページに発表している。

 そのことは京都市と同じであるが、京都市の場合、入札した人々の各入札価格がホームページに公開されている。東京都はそこまでは行っていない。 落札最高額の表示までである。

 この点で云えば、京都市の情報公開はフェアであり、優れている。

 京都市の『令和3年度 市有地売却に係る一般競争入札の結果について』の物件の入札応募価格を見ていて、思った。

 「入札予定価格は、不動産鑑定士が必ず鑑定評価している価格である。その価格は、高からず、低からずの市場価格を反映した適正な価格であるハズである。入札応募した価格は高いのもあれば安い価格もある。それは当該土地を購入したい人が表明した市場性を反映した価格である。

 とすると、応募データ数が多い場合の応募価格の平均は、予定価格と一致するハズである。データの少ない現実では一致しないかもしれないが、近い価格になるはずであり、ならなければおかしい。」

と云う考えが浮かび、その仮説が立証出来るか、仮説が間違っているか調べてみょうと思った。

 予定価格、入札平均価格もいずれも単価円/uに換算して検討する。

 予定価格の単価円/uは、予定価格÷面積で求める。

 入札単価円/uは、入札価格÷面積である。入札単価平均はそれ等単価の平均である。

 京都市の8件の入札案件は下記である。入札最高額が落札額である。6号は入札者なしで、省略。



区分 所在 面積 u 予定価格 円 u単価円 入札額 円 入札単価 円/u
1号 北区紫竹下緑町 1675.74 479000000 285844 645000000 384905
          590000000 352083
          538000000 321052
          532250000 317621
          515100000 307387
          489009000 291817
          486980000 290606
          482000000 287634
          平均 319138
             
2号 伏見区横大路千両松町 2896.26 270100000 93258 761000000 454128
          350000000 208863
          290000000 173058
          平均 278683
             
3号 伏見区下鳥羽広長町 1882.98 214100000 113703 577700000 306801
          285220000 151473
          255100000 135477
          221680000 117728
          平均 177870
             
4号 伏見区深草直違端5丁目他 761.54 133300000 175040 172770000 226869
          158880000 208630
          146000000 191717
          141360000 185624
          133100100 174778
          平均 197524
             
5号 南区吉祥院石原東之口 6930.31 1080000000 155837 1350000000 194796
          1270000000 183253
          平均 189025
             
7号 左京区岩倉南三宅町 3308.59 398300000 120384 612200000 185034
          601590000 181827
          523399999 158194
          510500000 154295
          505550000 152799
          482100000 145712
          443000000 133894
          442200000 133652
          410344400 124024
          399000000 120595
          平均 149003
             
8号 伏見区深草紺屋町 329.34 71800000 218012 93300000 283294
          92000000 279347
          77800000 236230
          72800000 221048
          平均 254980



 各入札物件の予定価格と入札応募平均価格の単価をまとめると、下記である。


    予定価格 円/u 入札平均価格 円/u
1 1号 285844 319138
2 2号 93258 278683
3 3号 113703 177870
4 4号 175040 197524
5 5号 155837 189025
6 7号 120384 149003
7 8号 218012 254980


 入札平均価格を縦軸に、予定価格を横軸に取って、図にプロットすると、下図である。




京都土地入札1





 入札平均価格をY、予定価格をXとして、XYの関係式を求めると、

      Y=132822.7+0.547X
                  相関係数=0.605
である。

 相関係数が低すぎる。

 「おかしいな。どうしてなのか。私の仮説は間違っているのか。」

と思いながら、グラフ図を見ていた。

 1つのデータのみ飛び抜けて回帰式よりかけ離れている。2号のデータである。予定価格が92,258円/uに対して、入札平均価格は278,683円/uである。
          278,683円
                  ─────── = 3.0倍                           
                     92,258円
 入札平均価格が、予定価格の3.0倍である。この倍率はおかしい。あり得ない価格関係である。予定価格も安すぎるし、入札平均価格も高すぎておかしい。

 予定価格が果たして適正な価格なのか。落札価格が高すぎるのでは無いのかと云う疑問が湧いてきた。

 そうした疑問のあるデータは入れるべきでは無いと思い排除して、再計算する事にした。データは2号を排除した下記とする。


  予定価格 円/u 入札平均価格 円/u
1号 285844 319138
3号 113703 177870
4号 175040 197524
5号 155837 189025
7号 120384 149003
8号 218012 254980


 先と同じく、縦軸に入札平均価格、横軸に予定価格を取って、データをプロットすると、下図である。




京都土地入札2




 縦軸の入札平均価格をY、横軸の予定価格をXとして、XYの関係式を求めると、
      Y=49376.86+0.927X
                  相関係数=0.975
である。

 図に求められた上記関係式を表示すると、下図である。




京都土地入札3




 相関係数は0.975と甚だ高く、予定価格と入札平均価格との間には、強い相関関係があると分析された。

 仮説は立証された。

 関係者からは、部外者が余計なことを云うなと叱られそうであるが、2号のデータの異常が目につく。何かあったのか。京都新聞社の記者ょ。調べて見ようという好奇心が湧かないか。

 上記京都市の市有地土地売却に伴う入札応募・落札データは、もう一つのことを教えてくれるデータにもなる。

 不動産鑑定評価において、事例の修正項目の1つとして、「事情補正」というものがある。

 事情補正とはどういうものか。不動産鑑定評価基準は次のごとく述べる。

 「取引事例が特殊な事情を含み、これが当該事例に係わる取引価格に影響していると認められるときは、適切な補正を行い」

と説明する。これが事情補正である。

 特殊な事情で高い価格になっているとか、特殊な事情で安い価格になっていると認められる時には、適正な補正をして適正価格にして、取引事例比較法を行えということである。

 隣接土地で併合利用すると土地利用の効用が増加すると思われる時には、少し高くても隣地土地価格を購入する。

 或いは相続に伴い、相続税を支払う金が無く、止むを得ず土地を早急に安い価格でも売って税金を納付しなければならない場合の土地価格などである。

 上記京都市の市有地売却の競争入札の応募平均価格は、不動産市場が形成する適正価格であると認めれば、落札価格は、その土地がどうしても取得したい為に高い値段で入札したと考えられる買い進みの価格と云える。
     落札価格÷応募平均価格=買い進み割合
の算式から、事情補正の買い進みの場合の割合程度が分析出来る。

 2号データを除外して、各号の買い進み割合を求めると下記である。

                落札価格円/u          応募平均価格
         1号   384,805円      ÷   319,138円    = 1.206
         3号   306,801円      ÷   177,870円    = 1.725
         4号   226,869円      ÷   197,524円    = 1.149
         5号   197,796円      ÷   189,025円    = 1.031
         7号   185,034円      ÷   149,003円    = 1.242
         8号   283,294円      ÷   254,980円    = 1.111
                   平均                                  1.244
                   標準偏差                              0.247

 買い進みの範囲は+3%(1.031)〜+73%(1.725)の範囲にある。平均は+24.4%(1.244≒1.25)である。標準偏差は0.247である。

 標準偏差1倍までの出現確率は約68%であるから、
        1.244+0.247=1.491≒1.50
買い進みの事情補正として1.50迄は許容の範囲と云える。

 事情補正100/150の数値までは、許容範囲と統計数値分析からは許される。

 それを超えた100/160とか100/180等の事情補正をしていたら、その説明が求められ、それに答えられる充分な合理的根拠説明が必要となろう。

 事情補正の合理的説明としては、近くにある地価公示価格、基準地価格と比較して高いと判断される、或いは安いと判断されるという説明が最も良いであろう。

 京都市の市有地売却に伴う応募入札価格のデータ分析から、不動産鑑定評価の事情補正の平均補正率は、100/125であり、限界補正率は100/150であることが、理論的に裏付けされて分かった。


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