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2543) 夢洲地代関係で大阪毎日放送(MBS)に出演  2023年1月30日

 2023年1月30日(月)、大阪毎日放送(MBS)の『よんチャンTV』午後5時半からの「スクープ続編 IR用地をめぐる疑惑」に、専門家コメントゲストとして出演しました。

 大阪夢洲埋立地にIRカジノ誘致するについて、大阪市がカジノ業者に貸す土地の地代が安すぎるのではないのかと問題になっている。

 その発端は、地代評価を頼んだ不動産鑑定業者4業者のうち、3業者の鑑定書の土地価格12万円/u、期待利回り4.3%、支払地代428円/u・月の3つがぴったり一致することが分かったことによる。

 東京の私の所にも、情報公開条例によって取得した取引事例の所在、事例価格、面積等が黒塗りされた4不動産鑑定業者の鑑定書のコピーが大阪の放送局から送られてきた。

 それに一通り目を通して、私も余りの内容のひどさに驚いていた。
 
 しかし、それは大阪の不動産鑑定士協会、不動産鑑定士が対処するであろうと思っていた。

 ところが、大阪毎日放送の記者から突然電話が入り、私に特番放送に出て専門家の意見を述べて欲しいと要望があった。

 東京からわざわざどうして私が行かなければならないのか、大阪に意見を述べることが出来る不動産鑑定士はいるでしょうと云って断った。

 だが、記者が述べるには、大阪の不動産鑑定士の誰も出演してくれる方はいないという。

 どうしても私に出て欲しいと何度も頼まれれば、そうまで云われれば、「義を見て為さざるは・・・」何とかで、出演を引き受けた。

 30日の午後少し早めにMBSに着いた。

 受付でその旨を伝えると、出演者の控室に通された。

 部屋の入り口には「楽屋」と書いてあり、「田原拓治 様」の名札がついている。

 テレビ出演者の楽屋と称される部屋である。壁の一面がほぼ鏡の部屋である。

 暫くすると、アシスタント・プロデューサー、担当放送記者、デスクと次々と局の方々が部屋に入って来られる。

 番組の一通りの打合せを済ませる。

 出演の時間が迫り、放送中のスタジオに入る。

 番組は進行中であり、私の出番の合図があって、放送用ボードパネルの横にある立机の後に立つ。パネルの向う端は司会者が立っている。

 10メールほど先には、テレビカメラが数台こちらに向けられている。その回りにはプロデューサー等放送関係者が立ち並んで、こちらを見ている。
 
 司会者が、ボードパネルに書かれた夢洲IR用地をめぐる疑惑事項について述べていく。

 そして、「田原さん、このことについてどう思われますか。」

と話をこちらに振り向ける。

 それについて私が意見を述べる。

 この様にして番組は進んだ。

 話す内容予定の半分くらいもしない間に、予定放送時間が来て、番組は終わった。

 ネットにユーチューブ(https://www.youtube.com/watch?v=XoSjZYwWyzo)でアップされているが、放送された番組中の発言の文字越し・文章化もされている。

 随分と早い番組発言の文字越し・文章化である。アドレスは下記である。
 
 https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/303482?page=4

(アドレスをドラッグコピーして、自分宛のメールにアドレスをコピー貼り付けして、自分宛にメールを送信して、自分宛に来たメールの中の青字等カラー文字のアドレスをクリックすれば、繋がります。)

 私の発言の幾つかを転載すると、下記である。引用転載には、MBSの許可をとってある。

****


1.【IR用地の不動産鑑定業者の結果】
(土地の価格(1平方メートルあたり)、月額賃料(1平方メートルあたり)、利回り)
A社:12万円、428円、4.3%
B社:12万円、428円、4.3%
C社:12万円、428円、4.3%
D社:11万8000円、391円、4.0%

(Qこういうことはあり得る?)

 「3社、3つの価格が一致するということはまずありません」

 (Q田原さんが50年以上不動産鑑定をやっていて、今までの経験であまりこういったことは起きない?)

 「あまりじゃなくて、100%ありえないです」

 (Q最初にこの話を聞いたときはどう思った?)

 「報道で知りましたが、とんでもない鑑定が出てきたなと。不動産鑑定業・不動産鑑定士に対する信頼を非常に貶める行為だなと思いました」

2.大阪市の担当者の話では“たまたま一致した”ということだった。そこでMBSは、鑑定業者4社に対して、1社につき35問〜45問の質問を投げかけた。そして、土地の価格などが3社一致していることについては、以下のような回答だった。

【4社に質問:価格などが3社一致しているが?】
A社:回答なし
B社:意見を述べることは控える
C社:回答なし
D社:回答致しかねる

 (Q田原さん、鑑定者が答えないのはどうしてだと考える?)

 「不動産鑑定書は著作物です。ですから、書いた鑑定士が責任を持って、内容がわからなければ説明しなければ、著者としての義務を果たしてないということです。不動産鑑定では、いい加減な鑑定をすると懲戒処分となるんですけれど、それはなぜそういうことが起こるかというと著作権があるからです。答えないというのは、その自覚が全くないですね」

3.次に、IR用地鑑定業者の結果で、3社が1平方メートルあたりの土地の価格で『12万円』をつけたことについて。これが破格の安さではないかという点だ。大阪府内の他のエリアを見ると、USJの隣接ホテルは『46万3000円』、りんくうアウトレットでは『21万9000円』となっている。これと比べるとやはり12万円は安いと感じてしまう。

 (Q田原さん、このあたりの価格設定については?)

 「おそらく周辺の土地の価格を調査してなかったのでは。49万平方メートルと大きい面積ですから、その評価に使える取引事例は大阪市にはないということを決めつけてしまって、全国の規模のある事例を探したと。結果的にはそれらの事例が安いわけですから、それで安く出てきたんじゃないかなと思いますね」

4.大阪港湾局は“IR事業は国内実績もなく、評価上考慮することは適切ではない”と鑑定業者1社から意見を受け、4社に意向を確認したうえで、IRを考慮せずに鑑定を依頼。各社はショッピングモールなどの大規模商業施設を想定して鑑定したが、不動産鑑定評価書に詳細な説明はなかった。そのため4社に対して、具体的な棟数・用途・階層・床面積などの提示を求めたが、4社とも回答はなかった。49万平方メートルの使われ方は不明だ。

 (Qどういう計算だったのかは明らかにすべき?)

 「そうです。通常49万平方メートルを一まとまりの土地として利用することは考えないですね。標準的な規模として、2万平方メートルくらいを一まとまりの土地として利用することが考えられる。それに対する取引事例を考えれば、大阪市内にあるわけですから。そうすれば、かけ離れたような価格は出てこないはずなんです。最初の49万平方メートルを前提に一つの土地としての扱いで価格を決めようと。ですから、それで安くしたんじゃないでしょうかね」

****


 埋立地であるから原価法を適用出来るのに行っていない。

 ゴミ処分場であるから求められないという理由が述べられている鑑定書が2つあるが、現在埋め戻すとすればどれ程の費用がかかるかと考え、埋め戻し土量と立法メートル当り単価、擁壁の長さ或いは立面壁面積と築造のメートル当り単価或いはu当り単価を算出すれば、原価法の土地価格は求められる。

 依頼者は埋立事業を行っている港湾局であろう。埋立費用が分からないと云うことはあり得ない。

 そもそも4不動産鑑定業者の各担当不動産鑑定士は、誰一人、港湾局に埋立費用の明細提出を要求していないのではなかろうか。

 50万u、40万uを標準画地として土地価格を求めているが、標準画地とは、近隣地域・類似地域の標準的な一棟建物が利用している土地をいう。

 容積率400%であるから40万uの土地を標準画地とすると、160万u(40万u×4=160万u)の一棟の建物利用ということになる。その様な建物利用は無い。それ故、40万u、50万uを標準画地とする鑑定は間違っている。

 博多、豊橋等遠隔地に所在する事例の採用は、事例としての代替、競争関係は認めがたい。比較の適正性・合理性に欠け失当である。

 期待利回り4.3%は算出根拠不明である。本件は事業用定期借地権であり、新借地借家法に基づく期待利回りで無ければならないのに、旧借地借家法をベースにした考えで4.3%の期待利回りが求められている可能性が高く、4.3%そのものの法律根拠が疑われ、利回りは失当と思われる。

 4つの不動産鑑定書の中には、東京のAクラスビル、大阪のAクラスビルの家賃利回りを採用しており、家賃の利回りと地代の利回りとの区別が分からない不動産鑑定士が書いたのでは無かろうかと思われる期待利回り4.3%の鑑定書もある。とんでもない4.3%の地代期待利回りの求め方である。

 賃貸事例比較法を4業者とも行っていなく比準地代が求められていない。

 不動産鑑定評価基準(以下「鑑定基準」と云う)は、新規地代(正常賃料に同じ)を求める場合には、次のごとく規定する。

 「宅地の正常賃料の鑑定評価額は、積算賃料、比準賃料及び配分法に準ずる方法に基づく比準賃料を関連づけて決定するものとする。」(平成26年改正鑑定基準 国交省版P51)

 鑑定基準は、新規地代を求める場合は、積算賃料と比準賃料を求めて決定せょと云っている。

 本件の鑑定は、新規地代を求める鑑定である。4不動産鑑定業者は、賃貸事例比較法による比準賃料を求めていない。これは明白な鑑定基準違反の鑑定評価である。

 対象地は地価公示区域にある。

 地価公示区域にある土地を鑑定評価する場合、地価公示法と云う法律によって、不動産鑑定士は、地価公示価格と規準して鑑定評価することが義務づけられている。

 多くの本件土地評価の鑑定書(同じ不動産鑑定業者が価格時点を変えて複数回鑑定評価している)が、地価公示価格との規準をしていないことから地価公示法違反である。

 又、地価公示価格と規準していない不動産鑑定は判例違反でもある。

 これ等多くの疑問点があったが、それらは時間切れで話すことは出来なかった。


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