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2708) 賃貸事業分析法について神奈川県不動産鑑定士協会にて講演

 令和6年(2024年)3月15日、横浜市中区万代町の横浜市技能文化会館で開かれた一般社団法人神奈川県不動産鑑定士協会(会長 橋芳明不動産鑑定士)が主催する令和5年度研修会で講演した。

 講演の演題は、「紛争事例に学ぶ! 賃料評価の論点〜新規地代の事例を題材にして〜」である。

 具体的な題名は、
   1部:「賃貸事業分析法と継続地代」
   2部:「公租公課倍率法について」
   付記:家賃に占める地代の割合(横浜市)
である。

 講演時間は13:35〜16:35であった。途中に15分程度の休憩を挟んだ。

 参加者は100名を超えていた。

 最初の士会の会長の挨拶で、東北地方から私の講演を聞きに来ている方がいると云う話を聞き私は驚いてしまった。

 新幹線の乗車料金と時間をかけて、そんなに遠くから聞きに来られるとは!

 果たして私の話す内容にそれだけの価値に相当するものがあるであろうかと恐縮する。

 私の講演を聞くために、東北地方から横浜まで来られた不動産鑑定士の方に頭を下げます。有り難うございます。私の拙い話を聞き、何か得るものがあったのであれば幸いです。

 講演の最初に、レジュメの計算間違いがあり、レジュメに訂正数値を参加者に書き込んで頂くという、講演としては甚だ情けない状態から始まった。

 講演レジュメを主催者に渡す前に、講演者は何度も読み返して、間違いを見つけておくべきという叱責を、甘んじて受けざるを得なく、主催者に詫びたい。

 講演を聞きに来られた不動産鑑定士の中には、知り合いの不動産鑑定士も少なからずおられた。その知り合いの不動産鑑定士の方々に感謝する。

 講演の内容はどういう内容であるかは、2024年2月26日に行った千葉県不動産鑑定士協会(会長 佐藤元彦不動産鑑定士)での講演の内容と共に、いずれこの鑑定コラムに記したい。

 3時間に及ぶ講演が終わった。

 講演主催者である神奈川県不動産鑑定士協会の幹部の方、講演を開催するに準備して下さった研修委員会の関係者が、私に講演の疲れを労って、横浜の中華街の中華料理店で豪勢な酒食夕食会を催して下さった。

 横浜中華街は行き来する人も多く、人々は店の前で、何処にしようか品定めをしている。

 新型コロナウイルス感染拡大中の時は、閑古鳥が泣いていたと囁かれていたが、賑やかな人出を見ると、完全に新型コロナウイルス禍の影響を乗り越えていると判断される盛況ぶりである。

 酒食夕食会の中華店の料理は美味しく、量も多かった。

 出された料理は、私は食べきれず、残してしまった。出された料理を残すという大変失礼な事をしてしまった。主催者の方に、その失礼を詫びたい。

 お酒を飲み、中華料理を食べながら、不動産鑑定評価についてテーブルを囲む士協会の幹部の方々と懇談した。

 話は、酒も入り、私一人が殆どしゃべっていたごとくであった。

 横浜の青葉台にある大学で、学生にどの様な事を講義で話しているのかの質問があり、それに付いて、学生に話している内容を具体的に話した。

 例えばとして、土地価格の特性の一つである駅から遠ざかるに連れて土地価格は安くなる事を、具体的にデータで立証分析する方法を学生に話していると述べた。

 データ分析のデータは、取引事例で行うべきであるが、取引事例採用は恣意性を疑われる可能性もある事から、客観性のデータとして青葉台駅勢圏にある住宅地の地価公示価格を採用して、縦軸に土地価格、横軸に駅距離をとってグラフ化すると、データは右下がりの直線が描かれるごとく点在する。

 それを数式に求める方法を学生に説明していると話した。

 その話をしたところ、テーブルを囲んでいる一人の方が、青葉台のその地価公示価格は、自分が評価に関与していると発言された。

 これを聞いた時は、私はびっくりしてしまった。

 「エーッ!」

 まさかテーブルを囲んで酒食懇談している不動産鑑定士の一人の方が、青葉台の地価公示価格に関与されているとは、私は思いもしなかった。

 「地価は駅距離に比例する」と云う命題を立証する重要な証拠としては、客観性のある地価公示価格の方がデータの信用性があると思い採用したのである。

 その分析データが、テーブルを囲んで酒食懇談している不動産鑑定士の一人の方が評価関与されていたとは。それを知って、私は甚だしく驚いた。

 その分析データが、「地価は駅距離に比例する」と云う経済現象の命題を立証する、重要な証拠として使用され、かつ大学の講義の教科書に掲載されていると云うことは、考えようによっては、逆に、鑑定冥利に尽きる凄い事であると云う人もいるかも知れない。

 以下に、桐蔭横浜大学で私が講義の教科書として使用している著書『考論 不動産鑑定評価』P74(プログレス 2021年)の当該部分を転載する。

****


9.地価は駅距離に比例する

 @ 地価と駅距離の関係

 土地価格は経済中心地を頂点にして、その中心地より遠ざかるにつれて逓減する傾向がある。この価格現象は経済地理学者によっても指摘されている。

 経済中心地は地域を大きくとった場合、それが東京であったり、東京全体で考えた場合はそれが皇居であったりする。皇居は経済の中心地ではなく東京駅が中心地であると考える人いるかもしれないが、東京駅を経済の中心地のごとく見せかけているのは、皇居の存在が東京駅の後にあるからである。東京駅は皇居の玄関口であるに過ぎなく、皇居が中心地である  

 地域を更に細分化していくと、東京の西の方向は新宿駅、渋谷駅という具合にターミナル駅が方向地域の中心となる。

 そして日常生活圏という小さい地域になると、最寄駅が経済中心地となる場合が多い。

 駅以外には商業地の核となる店舗が中心となる場合がある。商店街の四辻にある銀行とか百貨店等である。その他、お城とかお寺が中心になっている場合がある。

 多くの地域の土地価格現象を調査・分析していると、ほぼ間違いなく経済中心地(駅が多い)を頂点にして、直線的に中心地距離に比例して土地価格は逓減している。


番号 所在 土地面積 u 土地価格 千円/u 青葉台駅距離 100m
1 つつじが丘15-15 277 296 7.0
2 松葉台22-304 160 284 11.0
3 青葉台1-21-22 280 342 6.5
4 みたけ台7-24 205 257 13.0
5 たちばな台2-5-45 154 248 18.0
6 しらとり台52-20 182 253 13.0
7 桂台1-19-13 216 244 17.0
8 鴨志田町554-26 140 195 28.0
         
         
  平成31年地価公示価格 横浜青葉区住宅地 6.5m道路      


 上記データを縦軸に土地価格、横軸に青葉台駅距離をとって、グラフに図示したのが、下記グラフである。
 土地価格は、青葉台駅から遠ざかるにつれて、安くなっている。


青葉台駅勢圏駅距離と住宅地地価



                Y  :  土地価格 u当り千円
                X  :  青葉台駅距離 100m

として、XYの関係式を求めると、
                Y=346.65−5.76X
           r:相関係数 0.92
                      標準偏差 17.7
である。

 上記式のXに距離数値を代入すれば、その距離の価格が求められる。
 駅距離400mの価格を評点100として、求めると下記の一覧である。

 青葉台駅勢圏の住宅地の接近距離による修正率を、この表を使えば求めることが出来る。


距離100m 土地価格千円/u 評点
1 340.89 105
2 335.13 104
3 329.37 102
4 323.61 100
5 317.85 98
6 312.09 96
7 306.33 95
8 300.57 93
9 294.81 91
10 289.05 89
11 283.29 88
12 277.53 86
13 271.77 84
14 266.01 82
15 260.25 80
16 254.49 79
17 248.73 77
18 242.97 75
19 237.21 73
20 231.45 72


 データから算式を求める上記解析を回帰分析というが、後日の講義で回帰分析の求め方を説明する。
(『考論 不動産鑑定評価』P74 プログレス)

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  鑑定コラム2693)「2不動産鑑定士協会で講演予定」


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