○鑑定コラム


フレーム表示されていない場合はこちらへ トップページ

田原都市鑑定の最新の鑑定コラムへはトップページへ

前のページへ
次のページへ
鑑定コラム全目次へ

285)東京X

 「トウキョウエックスはありますか。」
と、私はJR中央線国分寺駅ビル「丸井」の地下食品街にある「柿安」という店舗の店員に聞いた。

 「トウキョウエックスは、土曜日・日曜日にしかおいてありません。
 生産量が少ないので販売日を特定しております。
 今日は、鹿児島XXと沖縄アグーを販売しています。」
と店員は答える。

 「鹿児島XXは、東京Xを意識して、その倍のおいしさがあると命名したのか。」

 「さあ、それは分かりませんが、鹿児島黒豚を改良したものです。美味しいですよ。」

 私は、鹿児島XXとか沖縄アグーという商品名を聞くのは初めてである。
 聞けば鹿児島XXは、柿安のプライベートブランドで最近売り出したものという。

 「沖縄アグーとは何なのか。」
と私は店員に聞いた。

 「沖縄にしか無い琉球王朝時代より伝わる幻の島豚の高級肉です。
 これも美味しいですよ。」
と店員は、しっかりした商品知識を持って私に購入を勧める。

 沖縄はウコンとか泡盛や黒糖の他に、今度は沖縄アグーという琉球王朝時代より伝わる島豚の肉を特産品として売り出してきたのか。

 柿安という店は三重県の桑名が本店と聞く。
 明治4年の開業で、牛鍋店で商売をはじめたという。現在まで精肉を中心にして企業経営を続けているのであるから、大変なしっかりした経営力のある老舗の店の様だ。時代変化への対応とおいしさへのこだわりが、経営の神髄か。

 明治4年とは、明治新政府により、断髪令が出された年である。
 牛鍋とは、今で云うすき焼きであろう。

 すき焼きは、日本人が明治時代に考え出した牛肉の美味しい料理法である。
 柿安は明治4年に開業し、牛鍋店をしていたというから、まさにすき焼き料理を出して、食の文明開化を行っていたことになる。

 すき焼きを食べながら、
 「散切り頭をたたいてみれば文明開化の音がする。」
と云っていた当の店の一つでは無かろうかと推定する。

 話がそれた。何も柿安の紹介宣伝をするために、今回の記事を書いているのでは無い。戻る。
 
 JR国分寺駅を利用するために自転車で行く場合、自転車の置き場所に困る。
 国分寺駅ビル地下に自転車置場がある。
 そこに一日おくと100円かかる。

 路上に自転車を放置して、新宿辺りに行って帰ってくると自転車がない。市役所から依頼された業者が、路上に留めてある自転車を撤去してしまう。

 それを避けるためにはどうしても、国分寺駅ビル地下の自転車置場に自転車を預けなければならない。その為には上で述べたごとく100円の駐輪代が必要になるのである。

 その地下1階にある自転車置場にフロアで隣接する、国分寺駅ビル地下商店街で1000円以上の買い物をすると、自転車駐輪代は只になる。その為1000円以上の買い物として、柿安で東京Xという肉を買おうとしたのである。

 話は甚だみみっちいことである。
 100円の自転車駐輪代をケチろうと考えているのである。

 しかし、良く考えると、100円を惜しむために1000円の出費をしょうとするのである。
 自分ではケチっているつもりでも、ビル経営者、店舗側の人々の知恵に見事に利用されて、多大な出費をしていることになる。

 駐輪代が100円であれば、100円支払えば良いであろう。
 何も1000円以上の商品を買う必要はないであろう。

 そう分かっていても、つい1000円以上の買い物をして、100円の駐輪代を只にしょうと考え、行動してしまうのである。

 柿安によれば、平日には東京Xはおいていないため、今回は東京Xを買い損ねた。

 私が東京Xを知ったのは、今(2006年)からおよそ4年程前である。

 東京郊外の八王子の林地の評価のために、林地の案内を受けた。
 40年杉、60年檜の立派な立木を持つ林地であった。

 広い丘陵山林を見るために、案内人とともに歩いていたら、案内人が突然私に言った。

 「トウキョウエックスを知っているか。」
 「 トウキョウエックス・・・。知らない。それ何。ロックバンドの名前か。」と私は問うた。

 案内人の息子が「Tokyo X」という名前のロックバンドを編成し、今売り出し中で、それを私が知っているのかと聞いてきたのだと、私はてっきり思った。

 ロックバンドの名前では無かった。

 案内人はいう。
 「Tokyo Xとは、東京の多摩地区で新しく品種改良された豚だょ。
 青梅にある東京都の畜産試験場の偉い先生が、7年かかって、北京黒豚などの品種を掛け合わせて作った豚だ。
 霜降りの肉だょ。」

 「霜降りの肉・・・。
 それは神戸牛とか松阪牛では無いのか。」
と私は疑問を感じて聞いた。

 「そう、豚肉の霜降りだ。
 食べてご覧。一度食べたら、他の豚肉は食べられなくなるから。」

 「またオーバーな。
 それほど云うならいつか食べてみますが。
 ところで、どうしてあなたは東京Xにそれほど詳しいのだ。」
と私は山林の案内人に問うた。

 案内人は云う。
 「東京Xを私が育成しているからょ。
 この豚の育成が大変難しいんだ。
 豚舎をきれいにし、風通し、日当たりをよくしなければならない。
 豚に食べさす飼料は質・量とも決まっており、その通りにやらなければならない。」

 「東京Xを飼っている人は、多くいるのですか。」
と私は疑問の点を次々と山林案内人に聞いた。

 「イヤ。八王子、青梅辺りで、現在6、7軒の農家の人しかいない。
 だから供給が少ない。
 販売は土・日曜日で特定され、デパートの食肉店でしか買えない状態だ。
 何とか飼育農家を増やしたいが、育て方が難しく、たやすく増やすことが出来ない。」

 「どうして東京Xを飼育する気になったのですか。」
と案内人に問うた。

 「東京には、特産の農産物がない。
 立川ウドでは仕方がない。
 農家の生き残りをかけて東京特産品を作ろうと、東京Xの生産にかけてみたのだ。」
と山林案内人は云う。

 東京X(トウキョウエックス、Tokyo X)と呼ばれる豚は、青梅にある東京都畜産試験場の兵藤勲氏が、7年の歳月を掛けて品種改良し、平成9年に完成した豚と聞く。

 北京黒豚にイギリスのバークシャ種、デュロック種を掛け合わせてたどり着いた豚である。
 肉は上質の赤みと脂肪がほどよく混じり合っており、「霜降りの豚肉」である。

 値段は安くない。高い。しかし、折り紙付きに美味しい。
 「東京X」又は「Tokyo X」が、東京の特産肉として一つの食肉市場を作りつつある。

フレーム表示されていない場合はこちらへ トップページ

田原都市鑑定の最新の鑑定コラムへはトップページへ

前のページへ
次のページへ
鑑定コラム全目次へ