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347)『不動産鑑定評価基準』はダブルスタンダードなのか

 現行の『不動産鑑定評価基準』(平成14年7月3日改正)は、総論と各論に分かれ、各論は2章から成り立っている。その各論に第3章の1章が2007年7月1日より付け加えられることになった。

 つまり『不動産鑑定評価基準』の一部改正が今年の7月1日より、施行実施されるのである。
 付け加えられる章は第3章となり、それは「証券化対象不動産の価格に関する鑑定評価」の題目の章である。

 不動産の証券化が不動産証券市場に拡大し、無視できないそれなりの証券市場を持つようになってきた。
 今迄不動産の取引、担保価値の把握、公共事業用地取得等の為に利用されていた不動産鑑定書であったが、その不動産鑑定評価の考え方では、不動産証券化の鑑定評価としては対応に無理が生じてきた為に、新しい評価基準を作らざるを得なくなったのである。

 その改正の原因は、ここ1・2年続いた不動産証券化に伴う不動産鑑定評価書の内容の不祥事によるものと思われるが、私には原因ははっきりとよく分からない。

 しかし、全国約4000人の不動産鑑定士が、半端強制的に義務研修と称する研修会に現在(2007年4月)参加させられて、新しく改正される各論第3章のセミナーを受けて居る。
 そのセミナーでは、不動産証券化に伴う不動産鑑定評価の不祥事がマスコミに流される度に、何度も国交省から鑑定協会に出された不動産証券化の不動産鑑定評価に付いて留意する様にと言う局長通知が、パワーボードに映され、講師がそれについて説明することから、やはりそれに関係して各論第3章を作らざるを得なかったのであろうと思わざるを得ない。

 主な改正・追加は、

 1.証券化不動産の範囲
 2.不動産鑑定士の責務
 3.エンジニアリングレポートの利用
 4.収益還元法にDCF法の採用
 5.収益還元法の費用項目の統一
  である。

 改正される各論3章の内容は、賃貸ビルを考えての収益還元法であり、企業収益による不動産に属する収益による土地建物の価格の求め方については、全く蚊帳の外である。
 それ故、下記に述べることも、全て賃貸ビルについて当てはまることであって、企業の売上から原価、販管費等を控除して営業利益を求め、そこから経営配分利益を控除して不動産に属する利益を求める考え方の企業収益還元法についての評価基準ではない。

 費用項目の統一では、純収益は次のごとく求めることになった。
     運営収益−運営費用=運営純収益
     運営純収益+一時金の運用益−資本的支出=純収益

 今迄は一時金の運用益は収入の部で考えられていたが、今後はそこに入れず、別項目にすることになった。
 資本的支出は、今迄支出の部でみていたが、これも別項目で考えることになった。

 一時金の運用益、資本的支出の計上する場所が変わったが、結果としての純収益には変わりが無い。

 注目すべきことは、運営収益の項目の中に、
    .空室等損失
    .貸倒れ損失
が入ったことである。

 現行『不動産鑑定評価基準』は、空室等損失、貸倒れ損失を必要諸経費等という支出項目に入れている。

 このことに対して、私は以前より論文・著書で、
 「空室損失は必要諸経費を形成するものでは無い。
 経費項目に入れているのは間違っている。」
と主張してきた。

 それは裁判の鑑定で、法廷の証人尋問においても主張してきた。
 しかし、私の主張に対して、多くの不動産鑑定士は代理人弁護士を通じて準備書面或いは意見書で、
 「田原不動産鑑定士の考え方は間違っている。」
と激しく、猛烈に反論・非難してきた。

 その根拠にしているのが、現行の『不動産鑑定評価基準』である。
 「『不動産鑑定評価基準』が空室損失を必要諸経費の項目に入れて居り、空室損失は支出経費を構成するものである。それに異を唱える田原鑑定の主張は誤りである。」
と。そしてそれに続けて、
 「そうした不動産鑑定評価基準違反の評価をしている田原鑑定は信頼出来ない。」
と。或いは、
 「不当鑑定である。」
と。
 その非難・批判は一度や二度では無い。何度聞かされたことか。

 今回、『不動産鑑定評価基準』の一部改正により、空室損失が収入項目に入ることになった。
 私にとっては、当然のことと思われるが、何故突然そういうことになったのか私にはよく分からない。

 そして過去に、法廷等で私の主張が間違っていると批判し、非難した不動産鑑定士の方々はどういう態度をとることであろうか。
 手のひらを返すごとく、『不動産鑑定評価基準』が収入に入れたから、収入に入れるべきであると、甲高に主張することになるのであろうか。

 空室損失は収入の項目を構成することになった。
 一方、『不動産鑑定評価基準』の総論7章・第2節で述べる「必要諸経費等」では、支出項目に入る「貸倒準備費、空室等による損失相当額」は、どういうことになるのであろうか。

 同じ『不動産鑑定評価基準』の中で、同じ項目が、総論では支出項目、各論では収入項目に入るというおかしな現象が生じることになる。
 論理の一貫性・整合性のとれない、非論理的な『不動産鑑定評価基準』ということになってしまう。
 これでは「基準」たり得ないであろう。
 

 空室損失については、下記の鑑定コラムに記事があります。
  鑑定コラム184)空室損失は家賃の必要諸経費なのか

  鑑定コラム579)空室損失は経費ではない
 
  鑑定コラム1133)何度言えばわかるであろうか 空室損失は経費では無いと

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