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351)東京主要5区の還元利回り1.05%

 条件付きであるが、東京主要5区の2007年1月の還元利回りが1.05%と求められた。甚だ低率であるが、その求められた手法、考え方を以下に説明する。

 シービー・リチャードエリス株式会社が、「オフィスマーケットレポート」2007Winter Vol.40を発行している。

 その賃料調査に依れば、2006年12月では、東京主要5区(千代田区・中央区・港区・新宿区・渋谷区)の36ゾーンの事務所の平均賃料は、坪当り13,230円(u当り換算4,002円)である。空室率は2.3%である。

 調査対象の36ゾーンの土地価格がいか程かが分かれば良いが、その土地価格を正確に求めることは、ほぼ不可能に近い。

 一つの方便として、主要5区の最高地価の平均を土地価格とする。
 こうして求められた場合、建物価格を一定とすれば土地価格は最高価格であるから、求められた還元利回りは、最低値の還元利回りと言うことになる。

 多くの土地価格が最高値の水準にあるわけでは無いことから、求められた最低値の還元利回りより上位の値にあることになるが、それでも地域の現在の賃料と最高値の土地価格より求められる最低の還元利回りを知ることは、それなりに意義あるものと判断される。

 その土地価格のデータとしては、2007年3月末に発表された国土交通省の地価公示価格を採用する。

 東京主要5区の最高土地価格は下記のごとくである。

 千代田区(5-42)  丸の内2-4-1   2950万円   1300%
 中央区 (5-22)  銀座4-5-6    3060万円    800%
 港区  (5-42)  新橋1-18-16   1050万円    800%
 新宿区 (5-24)  新宿3-30-11   1640万円    800%
 渋谷区 (5-22)  宇田川町23-3   1580万円    800%
    平均                             2056万円       900%

 ()内は公示地番号で、記述は所在地、u当り価格、容積率の順である。

 東京23区の地価は、品川、池袋、上野のターミナル駅を持つ品川区、豊島区、台東区の3区を代表の区として、その各区の最高地価の平均価格を23区の土地価格とする。
 下記の通りである。

 品川区 (5-1)   西五反田1-2-10   400万円    800%
 豊島区 (5-1)   東池袋1-1-4    750万円    900%
 台東区 (5-1)   上野4-5-5       750万円    800%
    平均                             633.33万円     833%

 シービー・リチャードエリス株式会社の調査賃料(2006年12月時)は、札幌から鹿児島まで15都市が発表されていることから、その15都市の地価は、2007年1月の地価公示価格のそれぞれの都市の最高土地価格を採用する。

 賃料時点と地価の時点とは1ヶ月のずれがあるが、2006年12月時点の賃料を2007年1月1日時点の賃料と同じと見なす。

 シービー・リチャードエリス株式会社の発表賃料・空室率と、地価公示価格の土地価格・容積率は下記の通りである。
 u当り換算は、
      1坪=3.30578u
で換算する。

  坪当り賃料 u換算賃料 空室率 u当り土地価格 容積率
東京主要5区 13230 4002 0.023 20560000 9
東京23区 12770 3863 0.026 6333333 8.33
札幌 8630 2611 0.07 2800000 8
仙台 9120 2759 0.084 2320000 8
横浜 10730 3246 0.034 5100000 8
静岡 9520 2880 0.093 1280000 6
名古屋 9630 2913 0.059 7100000 10
金沢 7940 2402 0.164 610000 6
京都 10020 3031 0.061 2570000 7
大阪 8750 2647 0.062 8440000 10
神戸 10040 3037 0.12 2810000 8
広島 9310 2816 0.107 2030000 9
岡山 8890 2689 0.134 1140000 6
高松 8460 2559 0.16 540000 6
松山 8790 2659 0.142 813000 6
福岡 9500 2874 0.08 6450000 8
鹿児島 8430 2550 0.088 1100000 7

 還元利回りの求め方は、当鑑定の著書『賃料<家賃>評価の実際』p265(清文社)、若しくはもう一つの著書『賃料<地代・家賃>評価の実際』p45(プログレス)に分析著述してある還元利回りの求め方の公式による。

 その公式は鑑定コラム19)「還元利回りの求め方」に記事にしてある。
 公式は下記のごとくである。

 還元利回り(総合還元利回り)は次の2つの公式で求めることができる。
@ 標準粗利回りの公式
  標準粗利回り=
(u当り支払賃料×12×共益費修正率×運用償却額修正率×空室率修正率×経年賃料修正率×容積率×賃貸面積率)÷(土地単価+建物工事単価×容積率×償却修正率)

A 還元利回りの公式
  還元利回り=標準粗利回り×(1−必要諸経費率)

 ここで還元利回りのその他の条件を下記のごとくとする。
 イ、事務所ビルの建物価格は、再調達原価を坪当り85万円(u当り換算257,000円)とする。
 ロ、シービー・リチャードエリス株式会社の発表賃料を検討すると、その賃料は新築ビルの賃料より安く、築5年以上の賃料水準に近い。

 このことから、建物価格は築5年の価格とし、次の修正を行った価格とする。
 a 中古である。      0.8
 b 5年経過している。
    (40-5)/40=0.875
   257,000円×0.8×0.875=179,900円
 建物価格をu当り179,900円とする。

 ハ、預かり金の運用償却額修正率は1.013とする。
 ニ、共益費率は1.20とする。
 ホ、レンタブル比(賃貸面積率)は0.7とする。
 ヘ、必要諸経費率(減価償却費は含まない)は0.35とする。

 東京主要5区の設定条件は下記の通りである。
   土地価格     u当り20,560,000円
   建物工事費    u当り257,000円
   建物償却率    0.7
   建物価格     u当り179,900円
   賃料       u当り4,002円
   共益費率     1.20
   運用償却額修正率 1.013
   空室率修正率   0.977
   経年賃料修正率  1.00
   容積率      9.00
   賃貸面積率    0.70
   必要諸経費率   0.35

 上記データを、前記の@とAの公式に代入して東京主要5区の還元利回りを求ると、還元利回りは、
      0.010530≒0.0105
である。
 即ち、東京主要5区の還元利回りは1.05%と求められる。

 同様にして、東京23区、15都市の還元利回りを求めると、下記の通りである。

  還元利回り %
東京主要5区 0.0105 1.05%
東京23区 0.0266 2.66%
札幌 0.0304 3.04%
仙台 0.0357 3.57%
横浜 0.0255 2.55%
静岡 0.0441 4.41%
名古屋 0.0204 2.04%
金沢 0.0473 4.73%
京都 0.0345 3.45%
大阪 0.0161 1.61%
神戸 0.0334 3.34%
広島 0.0412 4.12%
岡山 0.0418 4.18%
高松 0.0529 5.29%
松山 0.0480 4.80%
福岡 0.0178 1.78%
鹿児島 0.0458 4.58%

 還元利回り1%台は、下記の都市である。
       東京主要5区    1.05%
        大阪        1.61%
     福岡        1.78%

 2%台は、
     東京23区      2.66%
     横浜        2.55%
     名古屋       2.04%
である。

 還元利回り1%台は、購入したら、次の購入者がまず見つからない利回り水準で、言ってみれば「ババつかみ」となるものである。
 購入決定する場合に、それを覚悟して購入することである。
 いくら収益価格全盛の時とはいえ、不動産鑑定評価するときも、「ババつかみ」を前提とするような利回りで価格を求めることはしないであろう。

 還元利回り2%台も、1%台とほぼ同じである。これを「リスク」と言うのであろうか。
 この様な物件を購入しないことである。
 現所有物件が2%台であるのであれば、早く売り抜けることである。

 上記分析した還元利回りは、最初に述べたごとく全ての物件が上記利回りの水準にあるわけではない。

 地域の最高土地価格で求められた還元利回りであることを忘れないでいただきたい。

 新築ビルの場合には、賃料は上記シービー・リチャードエリス株式会社の発表賃料の平均賃料よりも高い水準にあることから、還元利回りは上記計算した数値よりも当然高い利回りとなると思われる。しかしそれも賃料次第である。
 

 鑑定コラム19)「還元利回りの求め方」

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