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417)新しい不動産鑑定塾の夜明けは岐阜から

 岐阜に行ってきた。
 不動産鑑定士森島信夫氏が主宰する、不動産鑑定塾『塾・鄙からの発信』の私塾開講の記念講演である。

 森島氏が私塾を開いて、今迄自らが経験した知識ノウハウを次の若い世代に惜しみなく伝える一方、不動産鑑定評価の根源論を参加者と共に議論し、不動産鑑定を見つめ直そうという考え、姿に、私は心意気を感じた。

 今迄の森島氏の生き方とは違う姿をそこに見いだした。

 自らの負担で私塾を開くと云うことは、森島氏は不動産鑑定業界に違った形で貢献したいのでは無かろうかと、私は森島氏の心の変化を見た。

 そうした考えで、これからの残された人生をおくられようとするならば、ならば私も協力を惜しまない。

 「良いことだから、手弁当で協力しますよ。」
と伝えた。

 数日後、塾開講の記念講演の講師をして欲しいというメールが来た。

 「ちょっと待て。私はそんなつもりで塾に協力すると云ったのでは無い。
 私が森島さんの塾の開講記念の講演を行うとはおこがましい。
 森島さんも多くの人脈を持って居られることで有ろうから、私以外に開講記念講演の講師にふさわしい人がいるのではないでしょうか。」
と断りの返事をした。

 しかし、森島氏は譲らない。私に記念講演の講師をせよと云う。
 根比べに私は負け、塾開講の記念講演の講師を引き受けることにした。

 さて、引き受けたが、塾開講の講演となると何を話してよいやら。
 いろいろ考えたが、不動産鑑定の根源論を青年の書生のごとく議論してみようとするのが塾の設立思想の1つでもあろうことから、現行不動産鑑定評価基準の間違い、見落としている問題、従来の評価手法とは異なる価格分析手法の紹介等問題点の提起をすることが、今後の塾の存在に役立つのでは無かろうかと考えた。

 講演の最初に、集まった不動産鑑定の専門家・ベテラン達に向かって、釈迦に説法のごとく、「不動産鑑定とは何か」をまず説いた。

 法律とか行動・判断基準等物事の規範となるものは、まず最初に用語のしっかりした定義というものがある。
 しかるに、現行不動産鑑定評価基準は、「不動産鑑定とは何か、どういうものか」と最初に全く定義していない。
 定義せずにして「十分理解せよ」とか「体得せよ」と鑑定評価基準は書くが、何を理解し体得するのかさっぱり分からない。

 不動産鑑定評価基準を改正するならば、「不動産鑑定とは」何かの定義づけをまず最初に行えと切り出した。
 つまり、現行不動産鑑定評価基準の最初の欠陥個所を指摘した。

 新しい価格分析の方法として、「地価コンケープ説」を黒板(昔は黒板といっていたが、現代ではマジックインクペンで描き消せる「白板」である)に図を描いて、長々と説明した。
 それに関係して「平均」で価格を求めるという考え方が、現在の不動産鑑定基準には全く無いことを指摘した。平均で価格を求める方法とはどういう方法かを白板に図を描いて話した。この姿は、まさに大学で私が学生に講義しているやり方と同じである。
 これらに時間を相当費やしてしまった。

 鑑定評価基準は市場分析、市場分析と云うが、求める正常価格に「市場滞留期間」の概念が附随しているのか。
 1ヶ月で売れても正常価格、売るのに6ヶ月かかっても正常価格、1年かかっても正常価格である。
 売れればまだ良い。1年かかって売れなくても正常価格である。
 そうなると、一体正常価格とはどういうものなのかという疑問が生じてくる。
 正常価格に時間の概念が必要では無いのか等、私の不動産鑑定の価格に対しての疑問点を述べている間に、2時間が過ぎようとしだした。

 予定では価格論のほかに賃料についても話すつもりで有ったが、賃料について話す時間が無くなって来てしまった。

 主宰者の森島氏に許しを乞い、参加者にも詫びて、価格論のみで3時間の講演を終えてしまった。

 後日、参加者の方から、
 「田原さんの賃料の話が聞きたかったが・・・」
という事を聞いたが。

 講演を聞いて得るものがあったかどうか、話す方にはさっぱりそれは分からないが、私の3時間の講演を熱心に聞いて下さった参加者に感謝致します。

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