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444)年金機関投資家にソッポを向かれたJリート

 プロスペクト・レジデンシャル投資法人に係わる不動産鑑定事件は、資本主義の根幹を揺るがしかねないものであり、この行為への対応を安易に放置していると、投資家はJリートに投資しなくなり、資本が集まらなくなる。それは資本主義の崩壊に繋がると、私は鑑定コラム442・443(2008年7月1日)で述べた。

 それを裏付けるアンケート調査結果が、2008年7月4日に社団法人不動産証券化協会(理事長 岩沙弘道)からプレスリリスされた。

 そのアンケートの名前は、『第8回「機関投資家の不動産投資に関するアンケート調査」集計結果』である。

 調査は今年2008年5月14日〜6月13日の1ヶ月間で行われた。
 対象投資家は、年金機関投資家と保険会社、銀行等の一般機関投資家である。

 回収率は22.0%(846送付、186回収)である。

 年金機関投資家の回答で見ると、Jリートへの投資が昨年調査では20%あったのが、今年2008年は14%である。6ポイントの減少である。

 何故減ったのかの理由ははっきりと分からないが、Jリートを行わない理由として、

    1位  市場が思わしくない
    2位  投資口価格のボラティリティが高い
という要因を挙げていることから、これらが関係しているのでは無かろうかと思われる。

 投資目的で重視する項目は、収益の安定性であり、インカムゲインによることを100%としている。

 年金機関投資家はキャピタルゲインを目的としてJリートを購入していないことから、ここ1年のJリートが株式投資のごとく値動きが激しく粗いことが、年金機関投資家のJリート離れを引き起こしたのでは無いかと推定する。

 Jリートに限らず不動産投資の課題として、年金機関投資家、一般機関投資家が第一に上げるのは、「不動産評価の信頼性の向上」という項目である。

 それには、リートの不動産の売り主と買い主の関係のうさん臭さ、及びその取引価格が親会社・子会社間で決められているごとくの不明瞭さの要因があるという不信感かもしれない。

 社団法人不動産証券化協会のアンケートは、プロスペクト・レジデンシャル投資法人に係わる不動産鑑定事件の前に行われたものである。

 もしその事件発覚後に調査が行われていたとしたら、第一位の占める割合はより高くなっているのでは無いのかと推定出来る。

 このことは、不動産鑑定が適正に行われていないJリートは、投資家の信頼を失い、投資家は資本投入をしないことを意味する。

 資本が集まらないことは、Jリートの上場の必要性が無いということになる。

 その一因を不心得な一部の不動産鑑定士・不動産鑑定業者が作り出して居ることになる。それは由々しきことで無かろうか。

 その様な資本主義を否定し、壊そうとする不心得な一部の不動産鑑定士・不動産鑑定業者は、資本主義の市場より撤退・排除されるべきものであろう。

 「資本主義の市場より撤退・排除」という言葉は、甚だ厳しい言葉であるが、その位のことを言わないと、己が犯した行為がどういうもので、重大な問題であることが分からない。

 しかしそれでもなお、「不動産鑑定士に倫理・・・・。そんなものは馬鹿馬鹿しい。資本主義の崩壊・・・。そんな事は俺たちには関係無い。愚かな人の云う事よ。国交省の処分? ・・・・・出来る訳無いだろう。」と薄ら笑いして云い、「金儲けが先さ」とほくそ笑んで居るのでは無かろうか。
 
 この姿勢は、先に機関投資家が不動産投資の課題の第一に挙げた、「不動産評価の信頼性の向上」という要因課題に適合するであろうか。


 上記社団法人不動産証券化協会のアンケートは、下記アドレスをクリックすれば見られます。
http://www.ares.or.jp/works/release/pdf/pr_20080704_2.pdf


(追記)2008年7月10日
 では具体的にJリートに資本投下されなくなった事実はあるのかという質問が当然あろうかと思われる。
 上記の、「年金機関投資家が、Jリートへの投資が昨年調査では20%あったのが、今年2008年は14%である。6ポイントの減少である。」もその事実を証明するものであるが、そのより具体的には次の資本行為を見れば、Jリートに資本が集まらなくなっている事が分かろう。

 2008年5月19日に大和ハウス投資法人が、翌月の6月19日に東証に上場すると発表した。それが上場予定の9日前の2008年6月10日になって、大和ハウス投資法人は東証上場を中止すると発表した。投資法人の東証上場を断念したのである。それはお金が集められないと見込まれた事であろう。

 一方、産業ファンド投資法人は、2008年7月1日に増資の中止を発表した 。
 資本主義の市場で増資を中止することは、何を意味するかは今更説明しなくても分かるであろう。

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