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448)あんたはん もっと京都について勉強しなはれ

 日帰りで京都に行ってきた。
 京都嵐山の住宅地の土地建物が裁判所の競売に出された。その競売物件を東京の会社が落札したいと希望した。ついては落札する為の入札価格をいくらにしたらよいのかと私に相談してきた。

 企業の担当者は既に京都の当該物件を見ており、競売3点セットと呼ばれる不動産鑑定書、現況調査書等も手に入れていた。また独自に京都市内の4つ程の不動産業者への聞き込みも終え、ある程度の価格の把握も終えていた。

 企業担当者がそこまでやっておれば、私の価格意見書などの必要性は無いことから、
 「そちらの調査によって得た価格で入札されたらどうですか。私の不動産鑑定書や或いは価格意見書など必要無いでしょう。」
と答えた。

 しかし企業担当者は、
 「イヤ、役員会議にかける為には、私の調査結果による価格算定だけでは駄目です。田原さんの価格意見書が必要です。前の裁判事件で2人の不動産鑑定士に鑑定を頼んだが、その不動産鑑定書はそれなりの鑑定書でしか無かった。あの事件の時、最後に田原さんにたどり着いたが、田原さんが書かれた意見書は抜群だった。あの意見書の印象は強烈で、うちの役員に田原さんの名前が頭に強く残っている。田原さんの鑑定書か意見書があれば役員会議がそのまま通ります。評価の意見書をお願いします。」
という。

 「裁判所の評価人の鑑定書があるから、不動産鑑定書を書く必要性は無いでしょう。簡単な価格意見書で宜しいですか。
 とはいえ、現地を見なければなりませんから、現地案内をして頂けますか。」
ということになって、京都の嵐山の住宅地を見に行くことになった。

 一戸建ての不動産であるが、競売評価書は例のごとく、土地・建物別々に評価し、土地は法定地上権つきの底地価格、建物は法定地上権つき建物価格として求めてあった。

 どうして土地建物を一体として評価しないのであろうか。木造建物で築後40年近く経っており、建物価格は私は0円と査定した。

 しかし競売評価書は、建物価格80万円に法定地上権価格が土地価格の60%が加算されて求められていた。

 建物価格は現実には0円であるのに、建物価格を0円にすると法定地上権の価格だけになって具合が悪くなるのか、どの様に古くて使え無い建物にもなにがしかの建物価格をつけ、それに土地価格の借地権60%の価格相当を加算して建物価格が評価されている。

 競売評価人はこの評価が当たり前と思い込んで評価している様である。そして裁判所もそれが当然と考えている。
 私から見れば、世間常識から甚だかけ離れたおかしな考え方と思えるのだが、それがおかしくなく正しい求め方であるとして罷り通る世界が厳然と存在しているのである。

 対象物件は嵐山の渡月橋に近い住宅地であり、緑豊かな良好な住宅地であった。地元の不動産業者は土地価格は安くて坪当り70万円、100万円の売買でもおかしく無いという。

 土地の売買実例を調べると坪当り80万円前後で取引されていた。

 京都嵐山の住宅地は意外にも価格は高く、人気のある住宅地の様だ。

 近くに天竜寺があるから、そこを見ていこうと現地案内の企業の担当者はいう。時間はあまりなかったが天竜寺の庭を見る事にした。
 夢窓国師の作といわれる池庭を見てきた。簡にして静、静にして寂、寂にして巧、巧にして美の庭か。

 今からおよそ10年程前か。初めて京都の鑑定評価の仕事があり、京都の不動産鑑定士協会に資料の閲覧に行こうとした。前の日の夕方京都に着き、京都駅近くのホテルに泊まった。朝早く京都の不動産鑑定士協会に行くことにした。

 当時の京都府不動産鑑定士協会は、東洞院通り笹屋町445番にあった。(現在は移転している。)

 地図で見ると京都駅の北北東約600Mに「笹屋町」の地名があったから、協会はそこにあるだろうと思って、ホテルより歩いて建物を探した。

 しかしそれらしき建物が捜しても無い。地番表示が全く無い。分からない。

 朝であったためか、中年の女性が道路を掃き清めていた。
 その女性に、
 「すみません。教えて頂きたいのですが、東洞院通り笹屋町445番はどのあたりでしょうか。」
と問うた。

 箒を止めた女性は、
 「あんたはん、京都は初めてでしゃろ。京都で地番を聞いても誰も分かりまへんどす。東洞院通りの他に三条下ルとか上ル或いは五条下ルとか上ルとかついておりまへんか。」
と問い返された。

 私は、住所を見直して、
 「御池下ルとついております。」
と答えた。

 「そうでしゃろ。
 あんたはんが捜している処は、ここらへんではありまへん。
 地下鉄の烏丸御池駅近くですから、そちらでお聞きなはれ。
 あんたはん もっと京都について勉強しなはれ。」

 「どうもご親切に教えて頂き有り難う御座います。勉強致します。」
と私は云って、道を掃き清めていた女性に頭を下げて別れた。

 道を聞いて、中年の女性から「勉強せい」と説教を食らったのは、はじめてである。
 京都の女性は厳しいわいと舌を巻いた。

 京都に鑑定で来ると、必ずこの女性の言葉が想い出されてくる。
 

 今回は京都府不動産鑑定士協会の名前が出てくる鑑定コラムですが、その他の県不動産鑑定士協会の名前が出てくる鑑定コラムに、下記のものがあります。

  山形県不動産鑑定士協会
 鑑定コラム309)「山形天童ホテルでの東北会連合会の講演」

  兵庫県不動産鑑定士協会
 鑑定コラム393)「神戸ルミナリエ2007」

  神奈川県不動産鑑定士協会
 鑑定コラム483)「横浜にて・2008年晩秋」

  鑑定コラム981)「「ホテルが良く取れましたね」と言う京都のタクシー運転手」

  鑑定コラム983)「京都の景気は良いのか、悪いのか」

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