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56)古河電工のアメリカ工場買収

 古河電工という会社が昨年(2001年)11月、アメリカのルーセント・テクノロジーという会社の光ファイバー部門を2,800億円という巨額の金額で買収した。(日経2001.11.16)
 現在その会社はOFSという名前で古河電工の子会社となっている。
 この買収のニュースを知った時、このOFS買収の金額があまりにも巨額であり、光ファイバー工場はそれだけの投資をして1兆円位の売上がある会社であるのだろうかと当時思った。OFSの売上高がいか程か新聞は報じていなかったから、分からなかった。
 その後「売上高と同じ金額で買収出来るのだから安い買い物だ」という古河潤之助社長の発言が伝わってきた。
 それを聞いて「冗談であろう。工場を売上高と同じ価格で購入する経営者など居ない。工場の価格は売上高の4分の1か、5分の1だょ。売上高と同じ価格で工場を買ったら、会社は潰れてしまうょ」と職業柄すぐ思った。

 その後、古河電工の売上高にOFSの売上高を計上するために、OFSの1.5ヶ月分の売上高は、OFSの前期売上高から208億円と予測計算したという記事が出ていた。
 これから考えると、買収時のOFSの売上高は年間で、
       208億円×12÷1.5=1,664億円
と推定される。
 工場の価格は、売上高の1/4〜1/5である。
 売上の20%とすると、
       1,664億円×0.2≒333億円
333億円がOFSの工場の価格である。これを2,800億円という飛び上がる程の馬鹿高い価格で、どうして購入したのか。特許が絡んでいるであろうとしても無茶高である。
 2,800億円で購入したのであるから、古河電工の売上高はOFSの4.5ヶ月の工場の売上5,300億円(2,800億円×5÷12×4.5≒5,300億円)分が加算されて、2002年3月期の売上は1兆3000億円程度では無いだろうかと思っていた。
 それは決算書でいずれ分かるであろうと、古河電工の2002年3月期の決算書の発表を待った。
 古河電工の決算売上高は予想を全く覆すものであった。
 古河電工の決算書の売上高は次の通りであった。

  
   2000.4.1〜2001.3.31       8,270億円 
      2001.4.1〜2002.3.31              7,714億円
                                      (7,639億円)
 ( )内はOFSを除いた売上高である。
 OFSの売上高は、
      7,714億円−7,639億円=75億円
75億円である。4.5ヶ月の売上であるから、年間売上高に換算すると、
       75億円×12÷4.5=200億円
である。
 OFSの年間売上高は200億円でしかない。
 売上高200億円の工場を2,800億円で購入するとは。
 200億円の売上高の工場であれば、現在の工場の価値は40億円でしかない。
   2,800億円−40億円=2,760億円
 2,760億円の金を古河電工はこれからどの様にして回収しょうとするのであろうか。

 2,800億円の金額を投資しょうとするに際して、業績内容、製造商品の将来性と市場の動向、工場の土地建物の価格調査を充分に行ったのであろうか。それぞれの分野の専門の1業者のみに頼らず、3業者ほどの専門業者に依頼して、しっかりした調査に基づいて工場購入の決定を行ったのであろうか。
 調査をケチったのでは無かろうか。
 充分な調査を行った上での購入であれば、これ程ひどい金額での工場の購入はあり得ない。

   日本人、日本企業の悪い癖が出て、決定は全て他人任せでは無かったか。
 社長は専務によきにはからえとまかせ、専務は部長に検討してくれと、部長は課長に調べてくれと、課長は係長に調査せよと、係長は社員にやれという具合で、全て「よきにはからえ式」で決定されていたのでは無いのか。

 考えるに、古河電工にとって、このアメリカ工場購入の失敗のツケは大きい。古河電工はどの様にして生き延びるのであろうか。
 

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