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581)東京の都市近郊林地価格と周辺住宅地価との関係

 東京駅からおよそ40Km以遠の東京の西郊外には、住宅地に隣接して市街化調整区域に指定されている山林(都市近郊林地)がある。

 この山林の鑑定評価を依頼される場合がある。

 市街化調整区域の地域にあるから宅地開発は出来ない。例外的に土地利用することが出来るが宅地利用の困難な山林である。

 こうした山林の価格をどの様に評価してよいものか価格査定では大変悩む。 まさか宅地見込み地として価格を出す訳にも行かない。
 といって、純山林の価格として反当り10万円(u当り100円)程度と出す訳にもゆかない。

 土地価格の1つの特性として「価格の引張り合い現象」という現象がある。
 隣接地、あるいは隣接地域同士は、それぞれの要因特性を価格に反映しながらも、隣接地あるいは隣接地域との間に価格の均等を保っている。

 住宅地に近いとか隣接している市街化調整区域の山林(都市近郊林地)は、宅地利用出来ない要因をもっているが、その要因を具有しながらも、隣接する市街化区域の住宅地の価格、あるいは市街化調整区域の既存宅地の価格との間に、価格の均衡が得たれている。「価格の引張り合い現象」というものである。

 都市近郊林地の価格を求めるのに、最もよいのは、類似の都市近郊林地の取引事例が近くにあれば良いが、その様にうまい具合には都市近郊林地の取引事例など、まず無いのが普通である。

 事例が例えあっても、遠く離れた行政区域の異なる地域の事例である。あまり離れた地域の事例では地域格差率の判定に逆に頭を悩ます。

 価格評価の難しい都市近郊林地の価格を、隣接する住宅地の価格より求める1つの方法を検討する。

 国土交通省が毎年1月1日時点の土地価格として発表している「地価公示価格」というものがある。
 その価格は主として住宅地、商業地等の価格が発表されているが、その中に価格番号で13-1、13-2という「13番」のつくものがある。

 この「13番」の番号の地価公示価格は、市街化調整区域の林地価格であるが、それは純山林の林地価格ではなく、東京にあっては、住宅地に近いか或いは隣接する都市近郊林地価格である。

 都内にあって地価公示地で「13番」のあるのは、町田市、八王子市、青梅市等の東京40Km圏以遠の市町である。

 分析として、町田市と八王子市のデータを採用して分析する。
 平成21年地価公示価格のデータで分析する。

                 13番の地価公示価格
         ─────────────────   = 価格割合           
            その近くの住宅地の地価公示価格

の算式によって、都市近郊林地価格(13番の地価公示価格)のその近くの住宅地の価格に対する割合を求める。

 @のデータ
    ・町田13-1    町田市相原町字七国2294   調整区域
                      相原駅2q     u当り3,250円

・町田69     町田市相原町字川島3165-3  1低専 相原駅3.1q   u当り94,000円
3,250円 ──── = 0.035 92,100円
 Aのデータ ・町田13-2    町田市上小山田町字十三号1872  調整区域 渕野辺駅4.3q  u当り3,650円 ・町田83     町田市上小山田町字二号163-1外  1低専 渕野辺駅3.9q   u当り90,000円
3,650円 ──── = 0.041 90,000円
 Bのデータ ・八王子13-1   八王子市美山町946       調整区域 八王子駅10.2q  u当り2,000円
・八王子47    八王子市上川町1958-3      1低専 八王子駅9.2q   u当り53,800円
2,000円 ──── = 0.037 53,800円
   Cのデータ ・八王子13-2   八王子市上柚木字十六号1644番イ   調整区域 南大沢駅2.1q  u当り3,900円
・八王子72    八王子市上柚木字十一号1050-3    1低専 南大沢駅2.5q  u当り116,000円
3,900円 ──── = 0.034 116,000円
 Dのデータ ・八王子13-3   八王子市川口町2455      調整区域 八王子駅7.8q  u当り2,400円
・八王子52    八王子市川口町2903-13外    1低専 八王子駅8q   u当り71,500円
2,400円 ──── = 0.034 71,500円

 E データのまとめ
 以上の分析をまとめる。
            @のデータの割合     3.5%
            A   〃                4.1%
            B      〃                3.7%
            C   〃                3.4%
            D   〃                3.4%
            平均                      3.62%

 都市近郊林地価格は、その周辺の住宅地価格の3.62%であることが分かった。

 当該都市近郊林地の近くの住宅地の価格に、0.0362を乗ずれば、当該山林の価格、傾斜とか道路条件等の個別的要因を考えない標準的な山林の価格が求められる。

 求められた標準的山林価格に、傾斜の要因、道路条件などの個別的要因の修正を施せば、当該山林の価格を求めることが出来る。

 後は近くに類似の山林の取引事例があれば、その事例と比較して比準価格を求め、前記で求めた価格との均衡を図って当該山林の価格を決定する。

 なお、2003年(平成15年)4月に鑑定コラム98)「里山価格」の記事で同様な分析を行っている。

 その時の分析した価格割合は、8.0%であった。

 今回は3.62%である。

 価格割合に大きな開差がある。
 その原因は、平成14年から平成21年の間の山林の価格の著しい下落が大きな原因と思われる。

 平成14年と平成21年の当該地価公示地の山林の価格は、次のごとくである。
 (単位u当り円)

                   14年            21年            割合
  町田 13-1   8,530円     3,250円     0.38
  町田 13-2   11,300円     3,650円     0.32
  八王子13-1   5,600円     2,000円     0.36
  八王子13-2   9,900円     3,900円     0.39

 上記のごとく、山林の価格の下落が激しい。▲61%〜▲68%の下落である。
 住宅地の価格も下落しているが、それ以上に山林の価格が著しく下落したことが、価格割合に大きな違いが出て来た原因と思われる。


  鑑定コラム98)「里山価格」

  鑑定コラム1789)「林地(山林)価格と麓の宅地価格の関係」

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