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673) 減価償却費の求め方は、不動産鑑定士の自由な判断であるという主張

 中古建物の減価償却費を再調達原価で行っている継続賃料鑑定に対して、その求め方は間違っていると私が指摘したところ、概ね下記の様な内容の回答が裁判所を通じて当該不動産鑑定士から返ってきた。

 「鑑定評価基準は、減価償却費の求め方について述べていないことから、減価償却費の求め方は、不動産鑑定士の自由な裁量によるものである。再調達原価によって減価償却費を求めることは、鑑定評価基準が明記していないから、鑑定評価基準違反では無く、何ら問題は無い。」
と。

 私は不動産鑑定評価基準違反云々であるとは言っていない。実務上そうした求め方は行わないことから、求め方が間違っていると言っているのみだが。

 そしてもう一つ。
 「再調達原価で行っても、価格時点の建物価格で行っても、求められる減価償却費にそんなに大きな数値の違いがあるわけで無いから、問題にする程のことではない。」
と。

 そんな理屈が通るものなのか?
 不思議な不動産鑑定業界である。

 所得税法施行令120条の2のいう取得価額で減価償却せよの違反であるという指摘については、概ね次のごとくの内容の回答が返って来た。

 「不動産鑑定評価基準には、減価償却費を税法によって求めよということなど書いてないから、税法違反という主張は通らない。それは田原不動産鑑定士の独自の主張であり見解にすぎない。」
と。

 税法とは不動産鑑定は無関係であると言う。税法では減価償却費は取得価額でせよと言っているのに、不動産鑑定はそれに従う必要は無く、不動産鑑定士の自由裁量によるものであるから再調達原価によって減価償却費を求めても良いと言う主張である。

 だが、主張の主が借地権価格を求めるのに、相続税の決めている相続税路線価の借地権価格割合を使用して借地権価格を求めているのでは無いのだろうか。一切それは使用せず借地権価格を求めているというのであれば論理の一貫性があって、その主張も頷けるが。果たして ?

       中古建物取得価額=再調達原価
とは私は思わないが。

 私の独自の主張・見解は、まともなものでなく「悪」とでもいわんばかりである。
 物事には、まともな筋の通った独自の見解・主張は大切であると私は思っているが。

 そしていずれも再調達原価で減価償却費を求めている自身の継続賃料の不動産鑑定書は間違っていなく、適正であると主張する。

 求め方が間違っていることを、間違いでないと主張する態度は、立派なものである。
 黒を白と堂々と主張し、間違っていると指摘する田原不動産鑑定士こそが、間違っていると反論してくる。

 どうも再調達原価で減価償却費を求める不動産鑑定士達は、不動産鑑定評価基準に書いてなければ、何でも自分勝手の判断で評価をしても良いと思い込んでいるようである。不動産鑑定評価基準は、超法規基準と錯覚しているようである。

 不動産鑑定評価基準に求め方が書いてないからといって、他の法律に抵触する求め方は、行うべきものでは無かろう。

 日本は法治国家である。反法律行為は鑑定評価においても行うべきものでは無かろう。

 不動産鑑定評価基準は、「超法規基準」では無い。

 再調達原価で減価償却費を求めることによって、経費がかさ上げされ、それによって継続賃料が高く求められていることに対する専門家としての適正鑑定評価責任は、一体どうするのであろうか。

 さて、国交省の地価調査課は、この問題についてどういう裁きをくだすことか。

 訴訟関係者は、黒を白と頑強に主張してくる不動産鑑定士の態度に怒り出してしまった。人間だれでも誤りをするものであるから、「間違えました、訂正します」といって鑑定書を訂正すれば許すであろうが、あくまでも突っぱねてくる態度に怒りが爆発してしまった。

 再調達原価で減価償却費を求めている継続賃料の不動産鑑定書の発行業者及びその不動産鑑定書を書いた不動産鑑定士を、「不動産鑑定評価に関する法律」第42条に基づいて、国交省の地価調査課に対して不当鑑定の措置請求を行うと息まいている。

 果たして訴訟関係者が措置請求を本当に行うかどうか私には分からないが、不当鑑定の措置請求された不動産鑑定士の方は、国交省に対して自分の鑑定評価について充分正当性を主張されたい。

 いつだったか、不動産鑑定書に署名押印しなければならないのに、記名押印の不動産鑑定書に対して、国交省は不動産鑑定業者と二人の不動産鑑定士を懲戒処分の対象にし、「注意」処分を行った。

 継続賃料の裁判鑑定は今に始まったものでは無い。
 私が不動産鑑定士になった時から既にあった。

 しかし、中古建物の減価償却費を再調達原価で行うと言う様な継続賃料鑑定書は、無かったし、見たことも無かった。先輩達は行っていなかった。

 価格時点の建物価格を残存耐用年数で除して、減価償却費を求めるというやり方を、鑑定人不動産鑑定士、賃料を鑑定する不動産鑑定士はやっていた。

 それが取得建物への投下資本を回収すると言う目的である減価償却費の当り前のやり方であり、正しい求め方である。

 ところが、突然再調達原価で減価償却費を求める継続賃料鑑定書が流通するようになったのである。

 このことは、はっきり言って、継続賃料鑑定を行う不動産鑑定士の質のレベルの低下が顕著になって来たことの証拠である。
 求め方は間違いと注意しても、それが分からず、逆にこちらに食ってかかって間違いを正当と言って反撃してくるのである。

 さて、継続賃料の中古建物の再調達原価での減価償却費の求め方に対して、監督官庁である国交省地価調査課はどういう判断をくだすことか。


(追記) 2010年7月1日

 本記事は、建物価格の減価修正の話をしているのではありません。
 建物価格を求める減価修正と間違えて読んでいる人がいるようですが、本記事は賃料の必要諸経費等の中の経費項目である減価償却費の話です。減価修正と減価償却費とは全く異なります。間違われないように。


 鑑定コラム645)「鑑定協会は実務修習テキストの継続賃料の減価償却費の求め方を即刻訂正せよ!」

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