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1093)最高裁の最初の階段は13段だった

 最高裁判所で開かれた口頭弁論の傍聴に行って来た。

 初めて最高裁判所の中に入った。

 千代田区隼町交差点近くの南口門より、石造りの城か砦を思わせる最高裁判所の建物内部に入るには、外階段を昇らなければならなかった。

 最初の階段を昇った。

 何段あるのか数えてみた。

 建物の階高を知る時、階段の1段の高さは同じ高さで必ず設計・造作してあることから、階段の段数を数えれば、1階と2階の階高を知ることが出来る。

 建物の評価をする時には、私は必ず階段数を数えている。
 この癖が出た。

 最高裁の建物の入り口に入るまでに続いている階段の段数を数えて行った。

 最初の階段は13段であった。

 13段の階段? 偶然なのか、意図的なのか・・・・・・・。

 踊り場を経て、次の階段を昇る。

 最高裁の建物の中に入るには、67段の階段を昇らなければならなかった。

 庁舎に入っても、またまた階段がある。

 階段を昇りきった処に広いロビーがあった。
 入廷までそのロビーで待つことになった。

 開廷の15分前程度であろうか、廷吏に公判の開かれる小法廷の傍聴席に案内された。
 第二小法廷であった。

 法廷の前の方の代理人席には、上告人側代理人弁護士3人、被上告人側代理人弁護士4人が既に着席していた。

 開廷の定刻が来た時、廷吏の

 「起立!」

の声とともに、法廷内の人々は全員起立した。

 法廷正面の扉が開き、法衣を着た裁判官が入って来た。
 4人の裁判官であった。
 女性の裁判官が一人いた。

 4人の裁判官が着席するのを見届けて、私も傍聴席に腰を下ろした。

 裁判長の裁判進行が始まった。

 上告した住民側の代理人弁護士による口頭弁論の陳述が始まった。

 主任弁護士である代理人弁護士の簡単な自己紹介から始まった。

 「・・・・・・・借地借家法の法律改定に携わり、定期借地権の制度導入に係わりました。そして御庁が平成15年6月26日に固定資産税評価額の適正時価について初めて判断を下された茅沼事件の代理人を務めました弁護士の吉田修平です・・・・」

 吉田修平弁護士の後を継いで、若い弁護士が具体について大意以下のごとく陳述する。

 「・・・・・被上告人が採用した不動産鑑定書の大きな間違いは、対象不動産が建蔽率20%、容積率80%の土地であるにもかかわらず、建蔽率60%、容積率200%に指定されている地域であるとして土地価格を求めている。

 その建蔽率、容積率の大きな違いがあるにも係わらず、控訴審判決は、建蔽率20%・容積率80%の土地価格と、建蔽率60%・容積率200%の土地価格は同じとしている。
 同じであると云うことはあり得ず、時価をオーバした固定資産税評価額である。
 この様な控訴審判決を合法と認めることは出来ない・・・・・・」

 若い弁護士も最高裁での陳述は、弁護士として初めてであろう。
 陳述口調から推測するに、かなり緊張している様子が伺われた。

 代理人弁護士の口頭弁論は終わった。

 裁判長が判決期日を指定して、上告審の閉廷を告げた。

 判決は、2013年7月12日に申し渡されることになった。3週間後である。
 意外に早く判決が出される。

 破棄差戻しか、それとも破棄自判か。
 私は、最高裁は破棄自判で、最高裁の新しい考え方を判示するのではなかろうかと思う。

 破棄差戻しで、時間をかけて再度高裁で審議し直すほどの時間は、固定資産税の裁判では残されていなく、又、1審、2審で原告側から出されている関係データで、最高裁は十分適正時価はいかほどか判断出来るのではなかろうかと思っているためである。

 最高裁が発表する司法統計を見ると、平成23年度に最高裁が扱った既済事件数(上告・上告受理・特別上告)は、民事・行政事件で4,854件である。
 その内「破棄」の判決がなされた件数は76件である。

 破棄判決とは、控訴審である高等裁判所の判決を破棄し、差戻し判決もしくは、最高裁が自判する判決である。

 本件の場合、口頭弁論が開かれたことから、棄却あるいは上告不受理では無い。それらでないということは、破棄判決がなされるということになる。

 破棄差戻し、破棄自判のいずれになろうとも、最高裁が控訴審判決を破棄する事件は、最高裁の扱う上告事件のうち、


          76件
               ─────  = 0.01567≒1.6%                        
                  4,854件

僅か1.6%である。大半が棄却決定である。いわゆる門前払いである。

 全裁判所が平成23年度に受けた民事・行政事件は、1,985,298件である。
 平成23年度に裁判所が受けた事件が、平成23年度に最高裁に上がっている事件では必ずしも無いが、各年度同じであろうとすれば、全民事・行政事件のうちで、最高裁の破棄判決される件数は、

          76件
               ─────   = 0.000038                           
                 1,985,298件

100万件で38件という割合である。

 最高裁が控訴審判決を否定する事件が如何に少ないかわかろう。
 弁護士にとっても一生に1件巡り会えるかどうかのものである。

 私が、自分の仕事をほっぽり出して、最高裁の口頭弁論に足を運ぶ理由も、この数値を知れば分かるであろう。


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