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1138)契約減価とは

 不動産鑑定評価で使用する「契約減価」とはどういうものであろうか。

 契約に伴う減価などあるのであろうか。当初からあるのであれば、それを考慮して契約すれば減価など生じ無いのではないのか。

 上記のごとくの疑問が湧くのでは無かろうか。

 契約減価というのは、土地賃貸借契約によって生じる土地の効用減によって引き起こされる土地価格の減価をいう。

 それは、土地の賃貸借目的によって生じる。

 土地の賃貸借目的によって生じると云っても、どの様にして生じるのかが分からないことから、それについて説明する。

 非堅固建物所有目的は、別の言い方で云えば「普通建物所有目的」とも云われる。同じ内容のことである。木造建物を建てて土地利用することである。

 40年前の土地利用は、周辺一帯は木造2階建の土地利用であったため、貸地の土地の利用目的も普通建物所有目的の賃貸借契約であったとする。

 その後、日本経済の成長に伴い、周辺の宅地開発が行われ、また、人口流入によって住む人が増えてきた。それに伴い商店も増え、建物も木造建物からRC造のマンションが増えてきた。

 周辺の土地利用はRC造3〜4階建が標準使用となった。

 そうした土地利用の中にあって、当該地の借地の土地利用が木造2階建であることは、地域の標準使用とは似つかわしくなくなってきた。

 このことは、土地の利用効用が減じたということである。これが土地賃貸借契約に伴うことによって生じる契約減価である。

 契約減価は上記のごとくとして発生する。

 土地賃貸借契約の当初から、存在する訳ではない。

 では、契約減価が発生している状態とは、具体的にどういう状態のことを言い、それが土地価格、地代にどの様に影響を与えるのか。

 具体的に例示して説明する。

 地域の都市計画上の容積率は300%とする。
 標準使用は、RC造の4階建の建物利用とする。
 土地面積を200uとする。

 その土地上に建てることの出来る建物の延べ床面積は、

            200u×3=600u

である。

 借地の土地賃貸借契約で、普通建物所有の土地利用しか出来ないとすると、その土地に建てることの出来る建物は、

           200u×0.6×2=240u  (注 0.6は建蔽率)

である。

 土地利用制限がなければ、堅固建物で600uの建物を建てることが出来るにも係わらず、普通建物所有目的の借地契約があるために、240uの木造建物しか建てることが出来ない。

 土地利用制限は、

                 240
             ───── = 0.4                                     
                 600

40%の土地利用しか出来ないと云うことになる。

 100%の土地利用から見れば、40%しか土地利用出来ないことになると、それは著しい土地利用効率が落ちることになる。▲60%の建物面積利用の効用減ということである。

 普通建物所有目的という土地賃貸借契約があるために、▲60%の建物面積利用の効用減が生じるのである。これが契約減価と呼ばれるものの具体例である。

 それだけの土地利用効用が落ちることは、土地価格そして地代にも大きな影響を与える。

 他の条件が一定とすれば、▲60%の効用減は、土地価格で考えれば、▲60%減の土地価格となる。

 土地価格で考えずに、土地の利回りで考えると次のごとくである。

 最有効使用の状態の土地利回りが5%であるとすれば、

            5%×(1−0.6)=2.0%

 土地利回りは2.0%と云うことになる。

 借地権価格割合が50%あるとすると、

            2%×(1-0.5)=1.0%

 1.0%が地代利回りとなる。

 1.0%が地代利回りであるところを、5.0%が地代利回りであるとして実質地代を求めたら、実質地代はとんでもない高い地代となる。

 このとんでもない高い実質地代と従前地代を足して2で割って求めた差額配分法地代は、著しく高い地代になる。

 その著しく高い差額配分法地代の中には、借地権者の権利価格である借地権価格の幾ばくかが削り取られて、地代として紛れ込んでいないであろうか。
 

  鑑定コラム1137)
「地代評価で収益分析法は有用な手法である」

  鑑定コラム1143)「地代の事例の全くない地代の鑑定書」


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