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1277)霞ヶ関ビルの新築時の賃料

 久しぶりに不動産鑑定評価の名著である門脇淳著の『不動産鑑定評価要説』(税務経理協会 昭和46年12月20日 3版発行)を手にして、部分的に読み直して見た。

 何十年ぶりかである。

 私が不動産鑑定士になる時に、そしてなってからも分からない時があった時に、何度も繰り返し読み勉強した書物である。

 ところどころに鉛筆の下線が引かれている。

 そこが大切なところなのかと、今は懐かしく眺める。

 門脇淳氏は、著書奥書きから転載すれば、東大法学部を卒業して、大蔵省に入られ、最後は大蔵省税務講習所東京支所長から、日本不動産鑑定協会専務理事となられた。

 門脇氏は3つの旧鑑定基準(昭和39年3月の鑑定基準、昭和40年3月の宅地見込地の鑑定基準、昭和41年4月の賃料の鑑定基準)の起草に携わった人であり、昭和44年9月の統一鑑定基準の起草にも深く携わった人である。

 不動産鑑定業界にとって、門脇淳氏は、櫛田光男氏と共に、不動産鑑定制度を創り上げた大恩人の方である。

 その門脇氏の名著の中の「賃料に関する鑑定評価」の章を読んでいたところ、その章の最後に、「東京霞ヶ関ビルディング(地上36階)貸室条件」が掲載されていた。

 霞ヶ関ビルは、1968年(昭和43年)4月に竣工した地上36階(地下3階)のビルである。

 日本で最初の超高層ビルである。

 構造計算は、東大教授が、当時の最新の理論と計算技術を使って行ったと記憶している。

 建築主は三井不動産で、施工業者は鹿島建設と三井建設である。

 鹿島建設は、この霞ヶ関ビルの建設によって超高層ビルの建設技術を確実化し、以後多くの超高層ビルの建設を手がけてゆく。

 この霞ヶ関ビルの建設を描いた映画『超高層のあけぼの』を観たことを思い出す。

 門脇淳著の『不動産鑑定評価要説』P201に、霞ヶ関ビルの事務所、店舗、倉庫のu当り賃料が記されている。この賃料は、霞ヶ関ビル新築時の賃料と思われる。

 転載すると、下記である。

 (事務室)
           階        u当り賃料
            33                  2,600円
            27〜32              2,500円
            20〜26              2,400円
            12〜19(13階は除く)  2,300円
            4〜11               2,200円

 (店舗) 1 A 3,000円 B 2,400円 c 2,400円 2          3,000円 3          2,400円 12 2,300円
 (倉庫) 各階         1,300円 地下3 1,200円

 階層別の賃料、事務室と店舗の賃料差、事務室と倉庫の賃料差がどれほどかわかる。

 敷金は、どの用途も賃料の6ヶ月である。

 保証金は、事務室が支払賃料の約25ヶ月、店舗が1階A、2階が30ヶ月である。

 46年前の賃料水準、賃料慣行がどういうものであったかが分かろう。

 昭和43年という年は、私にとって忘れもしない年である。

 私の住んでいる場所から遠く無いところで、未だ未解決の『三億円事件』が起きた年である。

 二人一組の刑事の市内全戸の絨毯聞き込みを、何度も受けた。


  鑑定コラム1232)
「東京の住宅家賃にはアベノミクスは未だ及んでいない」


  

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