○鑑定コラム


フレーム表示されていない場合はこちらへ トップページ

田原都市鑑定の最新の鑑定コラムへはトップページへ

前のページへ
次のページへ
鑑定コラム全目次へ

1319)地代の基礎価格は、更地価格である

 地代の基礎価格について述べる。

 元本と果実の関係から、まず述べる。

 拙著の『賃料<地代・家賃>評価の実際』(プログレス)のp307で、地代と土地価格は元本と果実の関係にあると述べている。下記に引用する。

   「元本と果実の関係より土地と地代を考えると、土地は元本であり、地代は果実である。土地は元本であるが、具体的金額で考えると、それは土地価格となる。
 その土地価格は、更地価格、建付地価格のどちらであるかとなると、一番最初に借地契約する時は、建物を建ててから借地契約することはあり得なく、建物の建っていない土地を借りて建物を建てるのであるから、更地価格である。

 一部の不動産鑑定士は、底地価格を元本と考え、積算法もしくは利回り法の基礎価格に底地価格を採用しているが、これは誤りである。

 上記で述べたごとく、一番最初の借地契約の状況を考えれば、更地状態でなければ借地目的の建物を建てることは出来ない。底地状態では建物を建てることは出来ない。とすれば、底地価格は元本になり得ないのである。元本がなければ果実は発生しない。即ち、底地価格からは果実である地代は発生しないのである。」

 賃貸事業分析法の側面から述べる。

 不動産鑑定評価基準(以下「鑑定基準」と呼ぶ)が、平成26年5月1日に改正され、平成26年11月1日より施行されることになった。

 新しい鑑定基準は、地代の新規実質地代の求め方に、「賃貸事業分析法」という新しい手法を加えた。

 その新しい手法については、26年改正国交省版鑑定基準P51に、

 「建物及びその敷地に係る賃貸事業に基づく純収益をもとに土地に帰属する部分を査定して宅地の試算賃料を求める方法」

であると述べる。

 地代・家賃を求める手法の一つとして、「収益分析法」という手法があり、地代の場合は、企業収益を賃貸建物の家賃収益に置き換えて地代を求めていた。

 その求め方は、対象地の上に賃貸建物を想定して、その家賃収入より、土地残余収益を求め、それより地代を求めるものである。

 つまりこの求め方は、26年改正鑑定基準に取り入れられた「賃貸事業分析法」の家賃収入から土地残余法によって求める手法そのものである。

 収益分析法の名称で行っていた手法を、「賃貸事業分析法」の名称にして、今回独立させたのである。

 土地残余法による土地利益を求め、その利益を借地人と土地所有権者で配分し、土地所有権者の配分部分が、地代の純地代となり、これに必要諸経費の公租公課を加算したものが、新規実質地代となる求め方である。

 「賃貸事業分析法」の求めている収益は、更地の土地残余法による収益である。

 土地残余法は、もともと更地の価格を求める手法である。

 それ故求められた収益は、更地の収益である。この収益から借地権者の利益を考慮して地代を求めることになる。

 地代算出に、土地残余法を使用すると云うことが何を意味するのかと云えば、地代の基礎価格は更地価格ということを意味している。

 つまり「賃貸事業分析法」で地代を求めよと鑑定基準が云っていることは、地代の基礎価格は、更地価格であると云っているのである。

 積算法地代の側面から述べる。

 土地価格に期待利回りを乗じて、必要諸経費を加算して地代を求める手法は積算法地代というが、この積算法地代は新規実質地代である。

 新規実質地代とはどういうことかというと、その土地を新規賃貸借する場合の地代ということである。

 「その土地を新規賃貸借する」ということは、新しく借地権を設定し、一時金の授受が必要であれば、一時金(権利金と呼ばれるもの)を支払って、土地を借りるということである。

 そうすると、そこには「底地価格」という概念が入る余地はない。

 何故かなれば「底地価格」は、借地権が既に発生している状態の所有権土地価格であるから、「底地価格」という概念が生じる前の状態で、後で生じることになる底地価格を基礎価格とすることは出来ない。底地価格を地代の基礎価格にするということは、生まれていない赤子を生まれているとして扱うごとくのものである。

 新規実質地代とは、価格時点で、土地の賃貸借契約を新しく結び、権利金の支払が必要ならば、権利金相当を支払って成立する地代をいうのである。

 以上より、地代の基礎価格は更地価格である。

 次に地代の期待利回りについて述べる。

 地代の基礎価格は更地価格であるが、では、それに乗じる期待利回りはどの様な期待利回りであろうか。

 更地価格に対応する期待利回りを乗じて純地代を求めてはいけない。

 借地権が附着している土地に対応する期待利回りでなければならない。

 更地価格に対応する期待利回りを更地価格に乗じて求めたものは、更地価格を求める純賃料であり、借地権が附着するものでは無いことから地代にはなり得ない。

 更地価格に対応する期待利回りで求められた純賃料を、その期待利回りを還元利回りとして還元すれば、更地価格が求められる。借地権が附着する土地価格は求められない。

 更地価格に対応する期待利回りは、土地上の賃貸建物の建設費は、土地所有権者が負担するものである。即ち土地建物が同一所有権者に属している事を前提にして求められる利回りである。

 それに比し、借地の場合は、借地上の賃貸建物の建設費は借地権者が負担するものであり、賃貸建物は借地権者の所有するものである。当然その建物投下資本の配当は借地権者に帰属するものである。

 更地価格に対応する期待利回りで求められた純賃料を地代とすると、借地権者が投下した建物投下資本の配当を、土地所有権者が獲得してしまうことになる。

 つまり、建物の投下資本を一銭も出さずに、建物の投下資本の配当利益を土地所有権者は自分のものとすることになるのである。

 借地権者には、借地権という権利と云うものがある。

 それには借地権価格というものが付着している。

 借地権価格が発生しているかどうかは、借地権という権利が、地域で熟成しているかどうかが関係するかもしれないが、東京とか大阪の大都市では、借地権に附随して、借地権価格が発生していると考えられる。

 更地価格に対応する期待利回りで求められた金額を純地代として、支払地代を求めると、借地権者に帰属する借地権を侵害する結果を招くことになる。

 それを具体例で説明する。

 賃貸事業分析法によって求められる更地の期待利回り4%で求められた支払地代が1000円であったとする。

 現行支払地代は300円であったとする。

 利回り4%で求められた1000円の地代からみれば、現行300円の地代は甚だ安い。

 差額配分法を使用して継続賃料を求める。

 差額配分法は喧嘩両成敗の考えによる折半法である。
 足して2で割る求め方である。

     (1000円+300円)÷2=650円

 差額配分法の継続賃料は、650円と求められる。

 スライド法では、地代評価では消費者物価指数の変動率が重要な物差しであることから、300円の地代が650円になる事などあり得ない。

 差額配分法の地代が、何故スライド法の地代と甚だしく乖離した650円と求められるかと云えば、650円の中に借地権者の権利価格の一部が地代名目で含まれていることが分かっていないために引き起こされる結果である。

 本件の適正地代が320円であったとすると、320円をオーバーする、

      650円-320円=330円

330円は、借地権者の権利価格の一部が勝手に削り取られ、それを地代という名目で、地主が受け取ろうとしているのである。

 利回り4%で求められた1000円の地代の中には、地主の取り分の利益のほかに、借地人の取り分の利益が含まれているのである。

 借地人の取り分を地主は侵害してはいけない。

 こうしたことより、更地価格に対応する期待利回りを乗じたものを純地代としてはいけないのである。

 ではどういう期待利回りなのかと云えば、それは借地権が附着している土地に対応する期待利回りということになる。

 それをどの様にして求めるのかということになるが、その算式は、

   更地価格に対応する期待利回り×(1−借地権者に属する利益割合)

で求めることになる。

 この「更地価格に対応する期待利回り」は、次のごとく求められる利回りである。

 賃貸事業分析法の家賃の賃貸収入から必要諸経費を控除して求められた純収益を、対象地の更地価格と建物価格を加算した金額で除して総合還元利回りを求める。

 その総合還元利回りから、土地・建物の価格に応じて土地・建物の還元利回りを求める。

 この求められた土地の還元利回りが、更地価格に対応する期待利回りである。

 Jリートの還元利回りとか地価公示価格で採用している還元利回りは不可である。

 また、アンケート調査による投資利回りの採用も不可である。

 借入金利と借入金割合から求めた期待利回りなど論外である。

 当該土地から得られる賃料収益が対象地の収益を現していることから、その賃料収益から求められる期待利回りでなければ、対象地の適正期待利回りといえないであろう。

 賃料収益から得られる土地利回りは4%(家賃から求められた土地の利回りで、「家賃利回り」と呼ぶ)であるのに、根拠不明の5.3%とか5.8%の期待利回りによる地代を求めている鑑定書も見受けられる。その利回りなど、論外も甚だしい。

 その期待利回りは間違っていると指摘すると、「適正である」と必ず主張してくる不動産鑑定士がほとんどである。もっと勉強せょと私は叱り飛ばしたいが。

 家賃利回りを上回る地代利回りなどあり得ないであろう。

 話がそれた。話を元に戻す。

 例えば、賃貸事業分析法の総合還元利回りから分析して求められた更地の期待利回りが4%であったとすれば、借地権者に属する利益割合をを50%とすると、

          4%×(1-0.5)=2.0%

2.0%が、借地権が附着している土地価格の期待利回りということになる。

 更地価格に2.0%を乗じて求めたものが、当該借地の純地代である。

 借地権者に属する利益割合を借地権割合とみることも出来るが、借地権割合をそのまま採用して求めると、失敗することもある。

 私は、東京銀座の地代評価で、銀座の相続税路線価の借地権割合が90%であったから、90%を採用して、銀座の地代を求めたところ、著しく低い地代が求められ、大失敗をした経験を持つ。

 土地所有権者は土地の提供、借地権者は建物建設費と賃貸建物のマネジメントの提供によって、当該土地の最有効使用をして利益を得るのであるから、共同事業の性格を持っていると考え、利益配分は50対50と考えて0.5とした方が実態に即していると思われる。
 
     (平成27年2月20日に開かれた田原塾27年2月会の講話録に加筆して)


  鑑定コラム1273)
「 鑑定基準に「賃貸事業分析法」という新しい地代手法が導入された」

  鑑定コラム1137)「地代評価で収益分析法は有用な手法である」

  鑑定コラム1071)「収益分析法についての1つのコメント」

  鑑定コラム1320)「底地割合による底地価格は鑑定評価基準違反である」

  鑑定コラム1552)「賃貸事業分析法の具体的な求め方」

  鑑定コラム1674)「脅し」

  鑑定コラム1682)「継続賃料利回りは期待利回りにはならない(その2)」


フレーム表示されていない場合はこちらへ トップページ

前のページへ
次のページへ
鑑定コラム全目次へ