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1682)継続賃料利回りは期待利回りにはならない(その2)

 Jリート発表の還元利回りは、継続賃料利回りであるから、その利回りは新規家賃を求める期待利回りにはならないということを、鑑定コラム1678)「継続賃料利回りは期待利回りにはならない(その1)」(2017年8月21日発表)で述べた。

 今回は、地代の期待利回りと継続賃料利回りにおいても、鑑定コラム1678)で述べたことと同じ如くのことが行われていたという例を述べる。

 新規地代の期待利回りを求めるには、

    イ、新規地代事例を分析して求める方法
    ロ、賃貸事業分析法より土地の純収益より求める方法

の2つがある。

 イは、新たな借地権設定の場合の地代より求める方法である。

 更地を新たに貸宅地にする契約など殆ど無く、その事例を捜すことはほぼ不可能である。

 定期借地権の設定例による地代例で求める方法もあるが、これとてもそうそう事例が評価する地代の近くにあるというものではない。定期借地権の事例があったとしても、一時金の授受の取扱いを考慮しなければならない。

 新規地代の期待利回りの唯一の方法は、ロの賃貸事業分析法の純収益より求める方法である。

 その場所で賃貸建物を想定し、その賃料より期待利回りを求めるものである。

 家賃にその場所、地域の要因が反映されており、期待利回りは、この手法によって求める方が、より当該土地の価値を反映した期待利回りが求められる。

 但しこの求められる期待利回りは、更地の期待利回りであるから、借地権が付着している要因を考慮する必要がある。

 それをせずに更地価格に期待利回りを乗じた場合、求められるのは、更地の純収益であり、借地権が付着している要因を無視してしまうことになる。

 地代の増減額請求事件で、裁判所鑑定人不動産鑑定士の鑑定書(以下「裁判鑑定」と呼ぶ)が裁判所に提出され、訴訟当事者に提示された。

 その裁判鑑定の地代評価は、基礎価格を底地価格にしていた。

 ここで既にその鑑定書は、基礎価格を間違えていることから、不適切な鑑定書であると判断出来る。

 地代評価の基礎価格は底地価格ではなく、更地価格であると云うことについては、過去何度もこの鑑定コラムに記している。表題にして述べている鑑定コラムもある。下記の鑑定コラムである。

    鑑定コラム1319)「地代の基礎価格は、更地価格である」

 基礎価格を底地価格にしている鑑定書は間違っているから、それを理由にして当該鑑定書の証拠不採用を主張してもよいが、裁判官が自ら選定した鑑定人の鑑定書を、それだけで排斥することに、裁判官は、まず同意しない。

 経験的に一つの大きな間違いを犯している鑑定書は、外にも間違いを犯している場合がある。鑑定書を読んでみた。

 裁判鑑定は、対象地周辺を大きくとっても、借地権の新たな設定取引事例は無いと明言していた。

 そして、期待利回りは、底地ベースとして10数例の平均を採用していた。

 その算出の根拠は、事例@2.8%、事例A2.3%、事例B3.3%・・・・・と10例程度の利回りを列記して、その平均を期待利回りとするという求め方である。

 事例データの所在地も更地価格も借地権価格も年額地代も一切書かれていない。

 これでは鑑定書を読む人にとっては、どうしてそれぞれの期待利回りが求められているのかさっぱり分からない。かつその数値の客観的妥当性が全く判断出来ない。

 これでは期待利回りの妥当性を検証することが全く出来ない。

 鑑定書を読んだ読後感は、不動産鑑定士であっても裁判官であっても同じであろう。

 裁判鑑定は、適正であると裁判鑑定をした不動産鑑定士が自己主張されたとしても、その主張を、右から左に、ハイそうですかとそのまま認めることは出来ない。

 上でも述べたが、対象地周辺には、新規の借地権設定の取引はないと鑑定書に書いてある。

 無いと云うのであるのだから、新規設定借地権事例は無いハズである。

 それが、10数例の期待利回り算出の地代例が存在するとして期待利回りを求めている。

 おかしいなぁと思いながら、裁判鑑定を読んだ。

 裁判鑑定には、底地価格は、

     更地価格−借地権価格=底地価格

より求めたと記している。

 新規の借地権設定は無いことから、裁判鑑定の求めている借地権価格は、既存の借地契約のある土地の借地権価格ではなかろうかと推測される。

 それも借地権割合を相続税路線価の割合を採用し、例えば借地権割合40%とし、40%を更地価格に乗じて借地権価格を求め、それを更地価格より控除して底地価格を求めているのでは無かろうかと推測される。

 地代は土地賃貸借契約がずっと古くになされている継続地代では無かろうかと推測せざるを得ない。

 新規借地権設定の事例は無いと鑑定書に明記していることからすれば、地代は継続地代となる。

 継続地代から求められている利回りは継続賃料利回りであって、それを期待利回りとは云わない。それを期待利回りに採用することは不可である。

 この様に、やはり裁判鑑定は、ほかの個所でも大きな間違いをしていた。

 継続賃料利回りを期待利回りとして地代を求めるという間違いは、重過失の間違いである。

 裁判鑑定の求めている地代は、適正地代と云える代物では無い。

 当然裁判鑑定は失当ということになる。

 失当の裁判鑑定を、裁判官は自分が任命した鑑定人の裁判鑑定を不採用にする訳には行かないと云うメンツにこだわり、この鑑定を根拠に判決を書かれては、訴訟関係者はたまったものではない。


  鑑定コラム1678)
「継続賃料利回りは期待利回りにはならない(その1)」

  鑑定コラム1319)「地代の基礎価格は、更地価格である」
 

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