○鑑定コラム


フレーム表示されていない場合はこちらへ トップページ

田原都市鑑定の最新の鑑定コラムへはトップページへ

前のページへ
次のページへ
鑑定コラム全目次へ

1591)城南5区流通価格と地価公示価格との関係

 不動産情報会社アットホームが発表している東京城南5区住宅地流通価格(以下「流通価格」と呼ぶ)と、地価公示価格の城南5区住宅地価格(以下「公示価格」と呼ぶ)の間に関係があるか分析してみる。

@ 流通価格は、鑑定コラム1576)で分析した3ヶ月移動平均価格を使用する。下記である。( )内は、対前年比の変動率である。

                          流通価格円/u     変動率% 

   平成23年1月     701,500円     − 平成24年1月     619,600円    (▲11.7%) 平成25年1月     598,900円    (▲3.3%) 平成26年1月     706,200円 (+17.9%) 平成27年1月     763,600円 (+8.5%) 平成28年1月     773,700円 (+1.3%)

 公示価格は、下記である。東京都財務局計算の数値を採用する。


年月 品川区 大田区 目黒区 渋谷区 世田谷区 平均 変動率%
               
平成23年1月 595800 449100 696700 980600 516000 647640
平成24年1月 595300 444600 689300 964200 510100 640700 ▲1.1
平成25年1月 590500 444700 714900 961900 512300 644860 0.6
平成26年1月 628900 463400 775000 1018600 526500 682480 5.8
平成27年1月 654300 472200 797900 1046600 534900 701180 2.7
平成28年1月 661000 478000 811000 1054000 544100 709620 1.2


 流通価格と公示価格そして変動率を対比一覧にすると、下記である。

年月 流通価格 変動率% 公示価格 変動率%
         
平成23年1月 701500 - 647640
平成24年1月 619600 ▲11.7% 640700 ▲1.1
平成25年1月 598900 ▲3.3% 644860 0.6
平成26年1月 706200 17.9 682480 5.8
平成27年1月 763600 8.5 701180 2.7
平成28年1月 773700 1.3 709620 1.2


A 両価格を対比検討すると、妙な現象が認められる。

 平成24年1月の変動率を見ると、

      流通価格    ▲11.7%
      公示価格    ▲1.1%

である。

 流通価格は11.7%下落しているのに、公示価格は1.1%しか下落していない。

 流通価格と公示価格の上昇率の乖離率は、

       1.1%
           ────   = 0.094                                      
       11.7%

である。

 公示価格の下落率は、流通価格の下落率の約10%である。

 公示価格は、価格下落が大きい時には、下落率の10%程度しか反映していないということになる。

B 逆の価格上昇の時を見ると、次のごとくである。

 平成26年1月の変動率をみると、

      流通価格     +17.9%
      公示価格     +5.8%

である。

 流通価格は17.9%上昇しているのに、公示価格は5.8%しか上昇していない。

 流通価格と公示価格の上昇率の乖離率は、

        5.8%
           ────   = 0.324                                      
       17.9%

である。

 公示価格の上昇率は、流通価格の上昇率の約32%である。

 平成27年1月の変動率をみると、

      流通価格     +8.5%
      公示価格     +2.7%

である。

 流通価格は8.5%上昇しているのに、公示価格は2.7%しか上昇していない。

 流通価格と公示価格の上昇率の乖離率は、

        2.7%
           ────   = 0.318                                      
        8.5%

である。

 公示価格の上昇率は、流通価格の上昇率の約32%である。

 平成26年、27年の流通価格の上昇率は17.9%、8.5%である。これに比し公示価格の上昇率は5.8%、2.7%である。

 公示価格の上昇率は、2年とも流通価格の上昇率の32%とピタリとあっている。これは偶然の一致なのか。不思議だ。

C 次に、価格について考察してみる。

 平成23年の流通価格と公示価格は、

    流通価格     701,500円
    公示価格     674,640円

である。

 公示価格は、

        674,640円
             ──────  = 0.923                                 
                701,500円

流通価格よりも約8%安い価格である。

 公示価格が、流通価格よりも高い価格水準にあることは不自然である。

 上記8%程度下位にあることは、これがノーマルな姿であり、妥当な姿と私は判断する。

 公示価格と流通価格の間には、0.923の開差があることが適正とし、平成24年以降の公示価格の妥当性を検討する。

 流通価格に0.923を乗じた価格が適正な公示価格と云うことになる。

 平成24年の適正な公示価格は、

            619,600円×0.923=571,891円

である。

 ところが、公示価格は、640,700円である。

 このことは、公示価格は、

                      640,700円
                   ────── = 1.120                            
                      571,891円

12.0%高いということになる。

 平成25年は、

    適正公示価格  598,900円×0.923=552,800円
        公示価格    644,860円
        開差率
                        644,860円
                     ────── = 1.167                          
                        552,800円

公示価格は、16.7%高いということになる。

 平成26年は、

    適正公示価格  706,200円×0.923=651,823円
        公示価格    682,480円
        開差率
                        682,480円
                     ────── = 1.047                          
                        651,823円

公示価格は、4.7%高いということになる。

 平成27年は、

    適正公示価格  763,600円×0.923=704,803円
        公示価格    701,180円
        開差率
                        701,180円
                     ────── = 0.995                          
                        704,803円

公示価格は、流通価格と8%の開差を持って妥当な水準にある。

 平成28年は、

    適正公示価格  773,700円×0.923=714,125円
        公示価格    709,600円
        開差率
                        709,600円
                     ────── = 0.994                          
                        714,125円

公示価格は、流通価格と8%の開差を持って妥当な水準にある。

 上記をまとめると、下記である。

    平成23年1月  公示価格妥当
    平成24年1月  公示価格12.0%高い
    平成25年1月  公示価格16.7%高い
    平成26年1月  公示価格4.7%高い
    平成27年1月  公示価格妥当
    平成28年1月  公示価格妥当

D 平成29年1月の公示価格の推測

 平成29年1月の城南5区の住宅地の地価公示価格を推測してみる。当たるか外れるかどうかは分からないが、とにかく推測してみる。

 流通価格が発表されているのは、平成28年11月の価格までである。

 平成28年11月の城南5区住宅地の3ヶ月移動平均価格は、u当り801,900円(鑑定コラム1584)である。

 平成29年1月の城南5区の住宅地3ヶ月移動平均価格がいくらになるか予測し難い。

 上昇するかもしれない。下落するかもしれない。それらは不明である。

 それ故、現在分かっている価格が、2ヶ月後の29年1月の流通価格と考える方が、誤りが少なくより安全と判断出来る。

 こうした考えによって、平成29年1月の価格を、u当り801,900円と仮定する。

 適正な公示価格は、流通価格の0.923の価格である。

     801,900円×0.923=740,153円≒740,000円

 平成29年1月の城南5区住宅地の公示価格は、u当り740,000円と推測される。

 もう1つの推測方法は、年間の変動率からである。

 流通価格の平成28年1月〜29年1月の変動率は、

      801,900円
         ──────   = 1.036                                   
            773,700円

3.6%である。

 公示価格の地価変動率は、流通価格の変動率の0.32と分析されている。

      3.6%×0.32=1.15%

 変動率は1.15%である。

 平成28年1月の公示価格は、709,600円である。

     709,600円×1.015 = 720,244円 ≒ 720,000円

 変動率からの29年1月の価格は、720,000円と求められた。

 上記2つの分析から、

    イ、u当り740,000円
    ロ、u当り720,000円

の2つの価格が推測された。

 価格ゾーンは、720,000円〜740,000円である。

 中央値は、730,000円である。この辺りの価格であろうか。

 2ヶ月後の今年(2017年)3月20日頃に、平成29年1月1日時点の地価公示価格が、国土交通省から発表される。

 さて、果たして結果はどうなるか。私は予測が大きく外れることを願う。


  鑑定コラム1576)
「東京住宅地価28年8月がピークか」

  鑑定コラム1584)「東京住宅地価平成28年8月ピークの検証」

  鑑定コラム1593)「都心住宅地価格が下落し始めた」


フレーム表示されていない場合はこちらへ トップページ

前のページへ
次のページへ
鑑定コラム全目次へ