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164)物流会社の譲渡価格と投下資本利回り

 雪印乳業株式会社が、子会社の雪印物流株式会社の株式の90.22%を、株式会社エスビーエスに譲渡した。(雪印乳業HPプレスリリース、2004年4月1日)

 同プレスリリースによれば、譲渡金額は約30億円である。

 株式を購入するエスビーエスという会社は資本金3.1億円で、主な事業内容はサード・パーティ・ロジスティクスサービス、メーリングサービス、人材アウトソーシング、即配サービス等を行っている会社という。

 雪印物流の会社取得後も、引き続き雪印物流が行っている雪印乳業関係の物流事業を継続して行うということである。

 雪印物流の売上高は、38,054百万円(平成15年3月期)であるから、購入者のエスビーエスにとっては、これだけの物流の売上高が購入後も確保されることになる。

 投下資本に対する売上高倍率は、
     38,054×0.9022÷3,000=11.4倍
である。

 雪印物流の業績内容は次のごとくである。
     売上高   38,054百万円(平成15年3月期)
     営業利益    310百万円(平成15年3月期)
     総資産    8,595百万円(平成15年3月31日現在)

 取得株式に対する営業利益は、
     310百万円×0.9022≒279.7百万円
である。

 この物流会社を購入するための投下資本は、約30億円であるから、
     279.7百万円÷3,000百万円=0.093
 投下資本利回りは、9.3%である。約11年での投下資本回収である。

 購入する企業は、30億円を全額自分の資金で賄うことはまずしない。
 30億円のうち自己の資金は30%とする。
 残りの70%は銀行、或いは不動産ファンドによるものとする。
 借入金利を2%とする。
 自己資金の利益率をXとする。

      0.02×0.7+X×0.3=0.093
 この式を解けば、
      X=0.263
である。

 即ち自己の投下資金の利益率は26.3%である。
 これだけの利益が得られるというならば、企業経営者は指を加えて見過ごしているであろうか。

 雪印物流の総資産は85.95億円である。
 これは、賃借対照表に表示されている総資産の金額と推定する。
     85.95億円×0.9022≒77.5億円
 77.5億円の総資産が、30億円で売買されるのである。

 このことは、
     30億円÷77.5億円=0.387≒0.40
企業の総資産の約40%が、売買価格であるということを意味する。

 総資産の額相当が売買価格というならば、総資産の意味は理解出来るが、総資産の40%が売買価格ということになると、一体企業の賃借対照表に表示される総資産の金額というものは何なのかという疑問が生じてくる。
 賃借対照表の総資産の金額は、企業の実際の資産価値を表示していない数値ということになってくる。

 それとも負債付で物を買う企業人はいないのであろうから、負債が60%あり、それが差引されると、売買価格はたまたま総資産の40%相当になったということか。

 なお倉庫に関する記事の鑑定コラムは、つぎのものがあります。

    鑑定コラム157) 「大型倉庫の粗利回りは11%」
    鑑定コラム170) 「大王製紙の物流センター建設」
    鑑定コラム188) 「大黒埠頭の道路」
    鑑定コラム199) 「ナイガイの2つの倉庫の売却」

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