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1775)住友不動産賃貸ビル還元利回り(償却後)2.5%

 2018年5月10日、住友不動産株式会社が、平成30年3月期の決算を発表した。

 平成30年3月期の売上高は、9484億円であった。平成29年3月期の来期(30年3月期)の予想売上高は、9500億円であったことから、予想通りの決算となった。

 平成30年3月期の第3四半期の短期決算が発表された時、平成29年1月〜12月迄の1年間の売上高が9533億円であると、鑑定コラム1745)で記した。

 平成29年1年間の売上高が9533億円であるから、3ヶ月ずれても売上高は大きくは変わらないであろうと記した。

 結果はその通りとなった。

 住友不動産1兆円の売上高企業になれと応援していたが、1兆円がどうも遠のくと分かりがっかりした記事内容であった。

 来期は1兆円にと期待したいが、住友不動産は慎重で、31年3月期の売上高予想は、9700億円としている。

 そうすると1兆円になるのは再来年となるが、再来年は東京オリンピックで、オリンピックが終わると不況になることが充分予測されることから、1兆円の売上高は無理と云うことになる。

 いつになったら住友不動産は1兆円企業になるのであろうか。

 営業利益は2056億円である。

 住友不動産の営業利益が初めて2000億円台になった。

 営業利益率は、

                  2056億円
                ─────    =0.217                               
                  9484億円

21.7%である。

 住友不動産の賃貸ビルの平均賃料はどれ程か。平成30年3月期の賃貸事業の売上高は、353,880百万円である。賃貸総面積は、4843千uである。空室率は4.9%である。

 上記数値より、下記のごとく求める。

        ( 358,880,000,0000円÷12)/4,843,000×(1-0.049)u=6,403円

 u当り6,403円である。

 同様にして、過去の賃料を求めると、下記である。

            平成26年3月   u当り6,137円
            平成27年3月   u当り6,173円
            平成28年3月   u当り6,234円
            平成29年3月   u当り6,368円
            平成30年3月   u当り6,403円

 住友不動産の賃貸ビルの賃料は、u当り6,100円から6,400円と、4年間で4.3%値上りしている。

  賃貸事業ビルの還元利回りはどれ程か。

 賃貸等不動産の時価評価は総額しか記してないことから、収益はセグメントの数値を使用する。

 平成30年3月期の賃貸営業利益は、139,368百万円である。減価償却費は38,981百万円である。セグメントでの賃貸事業資産額は、3,565,087百万円である。

 セグメントでの資産額を使用せず、賃貸不動産等で時価評価している賃貸不動産の年度末時価の金額である5,678,415百万円を使用する。

 減価償却後還元利回りは、

                   139,368百万円
                ───────── =0.025                          
                 5,678,415百万円

2.5%である。

 減価償却前還元利回りは、

        139,368百万円+38,981百万円
            ────────────────  =0.031               
                    5,678,415百万円

である。

 減価償却費率は、

               0.031−0.025=0.006

0.6%である。

 セグメントでの資産として記載してある資産額で、過去の還元利回り等を求めると、下記である。

                    償却後還元利回り   償却前還元利回り  減価償却率

平成26年3月期 0.033      0.043   0.010 平成27年3月期 0.033      0.043   0.010 平成28年3月期 0.035      0.045   0.010 平成29年3月期 0.038      0.049   0.011 平成30年3月期 0.039      0.050   0.011

 還元利回りが少しづつ上がっている。

 おかしい。

 都心商業地の土地価格は大巾に値上がりしている。そうすると還元利回りは下がるハズであるが、住友不動産の還元利回りは上がっている。

 賃料が値上りしているからという反論があると思われるが、賃料の値上がりどころではなく都心商業地の土地価格の値上がりは激しい。

 土地価格が値上りすれば、賃料が同じであれば、還元利回りは下がる。これは経済現象としての原則である。

 これから一つの可能性を推測するに、セグメント記載の賃貸事業の資産額は、最近時価評価による見直しがなされていないのでは無かろうかと云う疑問が生じてくる。

 だが、その疑問に対して、賃貸事業資産額は、平成26年3月月が3兆108億円、30年3月が3兆5650億円と金額は増加していることから、資産額の見直しはされていると反論される可能性は高い。

 しかし、その賃貸事業資産額の増加率は18.4%である。

 都心商業地の土地価格の上昇は、その程度の上昇率では無い。

 このことからセグメント記載の資産額は採用せずに、賃貸不動産等の期末時価を採用する。


 下記に、分析に利用した数値と、計算一覧を記す。


  平成26年3月 平成27年3月 平成28年3月 平成29年3月 平成30年3月
           
賃貸事業売上高百万円 283729 289117 313340 337465 353880
賃貸面積千u 4094 4104 4395 4610 4843
空室率  0.059 0.049 0.047 0.045 0.049
月額u単価 6137 6173 6234 6388 6403
           
賃貸営業利益 百万円 97951 104441 111327 126213 139368
減価償却費 百万円 32975 31047 32098 36948 38981
償却費含む営業利益 130926 135488 143425 163161 178349
           
賃貸事業資産額 百万円 3010806 3123992 3194739 3359261 3565087
           
償却後還元利回り 0.033 0.033 0.035 0.038 0.039
           
償却前還元利回り 0.043 0.043 0.045 0.049 0.050
           
減価償却費率 0.010 0.010 0.010 0.011 0.011


追記 2018年5月19日

 追記前の記事で表題部は、「住友不動産賃貸ビル還元利回り(償却前)5.0%」としていたが、その計算ベースにしていた資産額は、セグメントでの記載の資産額採用して計算された利回りであった。期末の時価評価の金額で行うべきと判断し、賃貸不動産等の期末時価の金額で計算し直した。記事最後添付計算表は、セグメント記載の資産額によるものである。


  鑑定コラム1745)
「住友不動産の平成29年1年間の売上高は9533億円で1兆円に届かない」

  鑑定コラム1714)「住友不動産は1兆円企業になれるか」

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  鑑定コラム1844)「今度こそ1兆円企業か 住友不動産」

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