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192)2004年9月丸の内のビルの空室率は4.9%

 2004年9月期の企業の中間決算発表を踏まえて、大手不動産会社の2004年9月期時の空室率を、不動産情報紙の住宅新報(2004年11月23日号)が報じる。

 それによると、三菱地所の丸の内地区の貸ビルの空室率は4.9%である。

 東京駅皇居側の日本一のビジネス街である丸の内という地区で、日本を代表する不動産会社の賃貸ビルですら、空室率が4.9%もあるということは、いささか信じがたい現象である。

 新橋とか品川の地区再開発ビルに、丸の内の三菱村から企業が移ったということであろうか。
 どうも、そうとでも解釈しない限り理解しがたい。

 そのほか住友不動産、東急不動産の空室率についても住宅新報は報じている。これに三井不動産のホームページの2004年9月期中間決算からの発表数値を加えると、各社の空室率は次のごとくである。


   三菱地所(全国) 4.2%    三菱地所(丸の内) 4.9%    住友不動産   7.3%    東急不動産   2.6%    三井不動産(首都圏) 4.8%(注)      (注)三井不動産HPプレスリリース 2004年10月29日

 住友不動産の空室率が他社に較べて極めて大きい。東京の事務所ビルの平均的空室率にほぼ同じ位の数値である。
 「住友不動産」という、いわゆる大手不動産会社の一角を占める会社であって、どうしてこの様に空室率が大きいであろうか。どうも私にはその理由が分からない。

 東急不動産の空室率2.6%は、ここ半年の間での大変な企業努力の結果と思われる。
 というのは、半年前の2004年3月期の東急不動産の空室率は、4.7%であった。
 半年で空室率が約2%減少するということは、何か特別なことがあったのでは無かろうかと推測する。
 何もしないのに空室を借りる人が自然に増えてきて、空室率が2.6%になったという事は、現在の不動産不況の時期にあって生じる現象では無い。

 半年間での東急不動産の空室率約2%の減少は、賃料の大幅な値下げによって入居者を獲得するか、あるいは、空室率の大きいビルを売却してしまったかのいずれかによるのでも無い限り、生じない現象と私には思える。

 上記5つの大手不動産各社の空室率のデータより、2004年9月の賃貸ビルの平均空室率は4.76%である。これより4.8%あるいはもっとアバウトに丸い数値として、2004年9月の空室率は5.0%と判断して良かろうか。

 同じ会社の2001年9月中間決算での営業賃貸ビルの空室率は、本鑑定コラム5)の 「空室率4%」 の記事で紹介されている。
 次の通りである。

     三井不動産  2.4%
     三菱地所   4.4%
     住友不動産  3.3%
     東急不動産  1.6%
 3年前の数値と見較べると、3年の間に空室率は大きく変わっていることを知ることが出来る。

 空室率の1%の変動など、せいぜい利益が1%減じる程度で、大したことないと思われるかもしれないが、それは大変な間違いである。

 空室率1%のアップは、利益の1%の減少で済むというものでは無い。利益減は大変大きいのである。
 例を挙げて説明する。

 年間賃料収入2億円の賃貸ビルで考える。
 平均空室率が4%であるとする。
 この空室率4%が5%と6%に上昇した場合を考える。

 空室率0%の場合の年間賃料収入(売上高)は、
     2億円÷0.96=2.083億円
である。
 必要諸経費は、空室率0の満室の状態の売上高の35%とする。
     2.083億円×0.35=0.729億円

 純収益は、
     2億円−0.729億円=1.271億円
である。

 空室率4%の場合の純収益は、1.271億円である。

 次に、空室率が1%上昇して、5%になった場合の純収益を求めてみる。
 売上高は、
     2.083億円×0.95≒1.979億円
である。
 純収益は、
     1.979億円−0.729億円=1.25億円
である。
 即ち、空室率5%の場合の純収益は、1.25億円である。

 空室率1%上昇すると、純収益は、
     1.25億円÷1.271億円=0.983
     1−0.983=0.017
1.7%の減少となる。

 同じように、空室率が2%上昇して6%になった場合の純収益を求めてみる。
 上記と同じ求め方で求める。
 売上高は、
     2.083億円×0.94≒1.958億円
である。

 必要諸経費は、空室率が増えても建物の維持管理をしなければならなく、支出額は同じである。0.729億円

 純収益は、
     1.958億円−0.729億円=1.229億円
である。
 即ち、空室率6%の場合の純収益は、1.229億円である。

 空室率が2%上昇すると、純収益は、
     1.229億円÷1.271億円≒0.967
     1−0.967=0.033
3.3%の減少となる。

 以上の分析結果から、空室率が1%増加した場合は、純収益は空室率1%に対して、
       1.7%÷1%=1.7倍

 空室率が2%になった場合は、純収益は空室率2%にたいして、
     3.3%÷2%=1.65倍
となる。

 即ち、空室率1%増加すれば、利益は1%減少するのではない。
 利益は、空室率%の1.6倍程度の減少になるのである。

 1%、2%の空室率の増加と侮ることは出来ない。
     

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