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2144)仰天 土地取引事例ゼロの更地の評価書

 東京のど真ん中区で、土地面積約13.4万uを5街区に区分した土地がある。

 同一近隣地域には東京都基準地(中央-3)があり、その価格はu当り89.5万円(平成27年7月時点)である。

 求められている5つの街区の更地価格は、その基準地価格の3%〜13%の価格である。

 更地の価格を求めるとはっきりと価格の類型を表示した評価書に、土地取引事例が全く無く、土地価格水準の記載も全く無く、5つの街区の総計の更地価格は100億円を超える金額が表示された不動産鑑定士作成の評価書に出くわした。

 鑑定評価に50数年携わっていて初めてである。

 報告書の名前は『調査報告書』になっているが、不動産鑑定士が価格を求めている報告書である。

 対象地とか周辺の状況など膨大な頁数を使って縷々述べてある。頁数は100頁を越える書類である。

 その中に土地価格の価格水準に関する記述は全く無い。土地の取引事例の記載は全く無い。取引事例比較法も土地取引事例についての記載が無いことから行っていない。

 調査報告書であって不動産鑑定評価基準に基づくものではないという理由を縷々述べている。それは平成26年に改正された『不動産鑑定評価基準と評価等調査ガイドライン』に基づいた書類であると云うことを云うためであろうか。

 しかし、それ等以前に不動産鑑定評価には「不動産の鑑定評価に関する法律」(昭和38年7月16日 法152)があり、その第2条1項に次のごとく規定されている。

 「この法律において「不動産の鑑定評価」とは、不動産(土地若しくは建物又はこれらに関する所有権以外の権利を云う。以下同じ。)の経済価値を判定し、その結果を価額に表示することをいう。」

 そして第3条1項で、「不動産鑑定士、不動産の鑑定評価を行う。」とある。

 即ち、不動産鑑定士がどの様な名称の書類であっても、不動産の経済価値を判定して価格表示したものは不動産鑑定評価を行ったということであり、その金額を表示した書類は、不動産鑑定業者が発行したものは不動産鑑定書である。

   『調査報告書』の名称であるから不動産鑑定書では無いという主張など、「不動産の鑑定評価に関する法律」からは通らない話である。

 土地取引事例が全く記載無く、更地価格が求められるものなのか私には全く理解し難いことである。

 その調査報告書の名称の不動産鑑定書の作成を頼んだ団体は、その書類に記載されている金額は適正であると主張しているようである。

 更地の鑑定評価をする場合、まず対象地周辺の土地の取引事例をさがし、その取引事例の中から適正な事例を選び、地域格差等の比較を行い、比準価格を先ず求めるものではなかろうか。

 その土地の取引事例が一つも無くて適正な更地価格が求められるものであろうか。どの様にして土地の適正価格水準を把握するのか。不思議なことである。

 そして周辺に地価公示価格・基準地価格があれば、その価格を規準として更地価格を求めるものであろう。

 当該地の周辺・同一近隣地域に地価公示価格・基準地価格(令和2年からダブルの設定地)があるが、それについても全く触れていない。

 地価公示価格・基準地価格を完全に無視した鑑定評価書である。

 土地の取引事例の記載が全く無く、周辺・近隣地域にある地価公示価格・基準地価格も全く無視して更地価格を求めている不動産鑑定書を妥当な鑑定書として認めることが出来るだろうか。そこに表示されている価格を適正な価格と認めることが出来るであろうか。

 不動産鑑定士の団体である公益社団法人日本不動産鑑定士協会連合会は、そうした不動産鑑定書が横行することを許すのか。

 不動産鑑定評価の監督官庁の国土交通省は、土地の取引事例の記載が全く無く、かつ周辺・近隣地域にある地価公示価格・基準地価格を完全に無視して更地価格を求めている『調査報告書』と云う名称の不動産鑑定書とその鑑定評価の行為を許すのであろうか。

 地価公示法8条には
「不動産鑑定士は、公示区域内の土地について鑑定評価を行う場合において、当該土地の正常な価格を求めるときは、公示された標準地の価格(以下「公示価格」という。)を規準としなければならない。」
という規定があるが。
 

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