京浜急行電鉄株式会社が330億円で、「ホテル グランパシフィック メリディアン」を売買取得するという。(日本経済新聞 2005年5月20日)
京浜急行電鉄は東京品川から横浜、横須賀を結び三浦半島の先端近くまで、東京湾沿に電車を走らせている鉄道会社である。
平成16年(2004年)3月期の売上高は138,876百万円、営業利益は17,716百万円である。
かっての昔、東急五島慶太氏と西武堤康二郎氏が事業拡張を巡って激突し、堤康二郎氏が東急コンツェルン攻略の一つとして買収を仕掛けたが、出来なかったといわれている電鉄会社である。
京浜急行電鉄は「ホテル グランパシフィック メリディアン」を、日本生命より借りて経営運営しているという。土地は東京都の所有という。
京浜急行電鉄は同ホテルの建物と借地権を330億円で買取、後日のいつの日か土地も所有者の東京都から購入する予定という。
「ホテル グランパシフィック メリディアン」は、日経の記事に依れば、地下3階、地上30階、延べ床面積123,000平方メートル、客室884のホテルである。
立地は人気のあるお台場にあり、海外の著名なスポーツ選手、タレント等が宿泊して、時々新聞紙上を賑わしている。
売上高は2006年3月期で120億円という。
取得金額は330億円であるから、取得価格は売上高に対して、
330億円÷120億円=2.75倍
である。
売上高は取得価格の、
120億円÷330億円≒0.36
0.36である。
西武鉄道が最近造った東京プリンスホテルパークタワーが0.43である。
ホテルオークラ神戸は0.52である。
これらより見ると、ホテルグランパシフィックメリディアンの0.36は随分と低値である。即ちホテルグランパシフィックメリディアンの売買価格は、いささか高いのでは無かろうか。
投下資本330億円を回収するのに、どれ程の期間が必要であろうか。
ホテルであるから5年、10年で回収するのは困難であると考えられるが、といって、現在のごとく経済変動が激しく将来予測の難しい時に、20年、25年の長期期間で、投下資本を回収するというごとく考える事はリスクが大きすぎる。
投下資本の回収期間を15年とする。
1÷15≒0.067
利回り6.7%である。
ホテルグランパシフィックメリディアンへの投下資本330億円を15年で回収するとすれば、年間利益は、
330億円×0.067=22.1億円
となる。
ホテルグランパシフィックメリディアンの年間売上高は120億円である。
15年回収の年間営業利益は22.1億円であるから、営業利益率は、
22.1億円÷120億円=0.184
18.4%となる。
ホテルグランパシフィックメリディアンの営業利益率が、現実にどれ程であるのか分からない。
18.4%の利益率であれば良いが、果たしてその様な高利益率が得られているであろうか。
ホテルとして上場している帝国ホテルと藤田観光の営業利益率は次のごとくである。
帝国ホテルは、平成16年3月期で、
売上高 52,196百万円
営業利益 3,080百万円
であるから、営業利益率は、
3,080百万円÷52,196百万円=0.059
5.9%である。
藤田観光は、平成16年12月期で、
売上高 51,094百万円
営業利益 4,675百万円
であるから、営業利益率は、
4,675百万円÷51,094百万円=0.091
9.1%である。
帝国ホテル、藤田観光の営業利益率は5.9%、9.1%である。
2つのホテルのデータから結論づけるのはやや無謀かもしれないが、都心ホテルの営業利益率は8%程度と思われる。
これよりホテルグランパシフィックメリディアンの利益率を8%と推定しても、その推定におかしさは無かろう。
とすると、
18.4%÷8%=2.3倍
ホテルグランパシフィックメリディアンの価格は2.3倍高い価格ということになる。
330億円÷2.3≒143億円
ホテルグランパシフィックメリディアンの適正な価格は、143億円程度と求められる。
この価格には土地価格も含まれる価格であるから、建物価格と借地権価格では、さらにこの価格以下になることになる。
別の分析からも143億円の価格が求められる。
売上高120億円であるから、営業利益率を8%とすると、
120億円×0.08=9.6億円
9.6億円が営業利益である。還元利回りを6.7%とすれば、
9.6億円÷0.067=143億円
ホテルの価格は143億円となる。
143億円が妥当なホテルの価格と思われるが、これを何故330億円と甚だ高い価格と思われる金額で、京浜急行電鉄は購入するのであろうか。
ただ一つ心配な事がある。
京浜急行電鉄の売上高は138,876百万円である。その2割は27,775百万円である。330億円の金額は、売上高の2割の金額を超えた額である。
ホテル投資も設備投資と考えると、設備投資の金額は、売上高の2割を超えたら過剰投資という経営格言がある。
部外者の私には価格決定の過程については、知る由も無いが、京浜急行電鉄が羽田空港の拡張などの将来を見据えた経営事業方針を決め、現在はその産みの苦しさの時と解釈すべきか。
ホテルについては、次の鑑定コラムの記事があります。
鑑定コラム 44)「ホテルオークラ神戸の売買価格」
鑑定コラム 3)「ホテルの売買事例」
鑑定コラム 211)「ある都心一流ホテルの投下資本売上高倍率は0.43」
鑑定コラム 85)「ホテルの経営配分利益割合」