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218)330億円のホテルの売買

 京浜急行電鉄株式会社が330億円で、「ホテル グランパシフィック メリディアン」を売買取得するという。(日本経済新聞 2005年5月20日)

 京浜急行電鉄は東京品川から横浜、横須賀を結び三浦半島の先端近くまで、東京湾沿に電車を走らせている鉄道会社である。

 平成16年(2004年)3月期の売上高は138,876百万円、営業利益は17,716百万円である。

 かっての昔、東急五島慶太氏と西武堤康二郎氏が事業拡張を巡って激突し、堤康二郎氏が東急コンツェルン攻略の一つとして買収を仕掛けたが、出来なかったといわれている電鉄会社である。

 京浜急行電鉄は「ホテル グランパシフィック メリディアン」を、日本生命より借りて経営運営しているという。土地は東京都の所有という。

 京浜急行電鉄は同ホテルの建物と借地権を330億円で買取、後日のいつの日か土地も所有者の東京都から購入する予定という。

 「ホテル グランパシフィック メリディアン」は、日経の記事に依れば、地下3階、地上30階、延べ床面積123,000平方メートル、客室884のホテルである。

 立地は人気のあるお台場にあり、海外の著名なスポーツ選手、タレント等が宿泊して、時々新聞紙上を賑わしている。

 売上高は2006年3月期で120億円という。
 取得金額は330億円であるから、取得価格は売上高に対して、
     330億円÷120億円=2.75倍
である。
 売上高は取得価格の、
     120億円÷330億円≒0.36
0.36である。

 西武鉄道が最近造った東京プリンスホテルパークタワーが0.43である。
 ホテルオークラ神戸は0.52である。

 これらより見ると、ホテルグランパシフィックメリディアンの0.36は随分と低値である。即ちホテルグランパシフィックメリディアンの売買価格は、いささか高いのでは無かろうか。

 投下資本330億円を回収するのに、どれ程の期間が必要であろうか。
 ホテルであるから5年、10年で回収するのは困難であると考えられるが、といって、現在のごとく経済変動が激しく将来予測の難しい時に、20年、25年の長期期間で、投下資本を回収するというごとく考える事はリスクが大きすぎる。

 投下資本の回収期間を15年とする。
     1÷15≒0.067
利回り6.7%である。

 ホテルグランパシフィックメリディアンへの投下資本330億円を15年で回収するとすれば、年間利益は、
     330億円×0.067=22.1億円
となる。

 ホテルグランパシフィックメリディアンの年間売上高は120億円である。
 15年回収の年間営業利益は22.1億円であるから、営業利益率は、
      22.1億円÷120億円=0.184
18.4%となる。

 ホテルグランパシフィックメリディアンの営業利益率が、現実にどれ程であるのか分からない。
 18.4%の利益率であれば良いが、果たしてその様な高利益率が得られているであろうか。

 ホテルとして上場している帝国ホテルと藤田観光の営業利益率は次のごとくである。
 帝国ホテルは、平成16年3月期で、
      売上高     52,196百万円
      営業利益     3,080百万円
であるから、営業利益率は、
      3,080百万円÷52,196百万円=0.059
5.9%である。

 藤田観光は、平成16年12月期で、
      売上高     51,094百万円
      営業利益     4,675百万円
であるから、営業利益率は、
       4,675百万円÷51,094百万円=0.091
9.1%である。

 帝国ホテル、藤田観光の営業利益率は5.9%、9.1%である。
 2つのホテルのデータから結論づけるのはやや無謀かもしれないが、都心ホテルの営業利益率は8%程度と思われる。

 これよりホテルグランパシフィックメリディアンの利益率を8%と推定しても、その推定におかしさは無かろう。

 とすると、
      18.4%÷8%=2.3倍
ホテルグランパシフィックメリディアンの価格は2.3倍高い価格ということになる。
      330億円÷2.3≒143億円

 ホテルグランパシフィックメリディアンの適正な価格は、143億円程度と求められる。
 この価格には土地価格も含まれる価格であるから、建物価格と借地権価格では、さらにこの価格以下になることになる。

 別の分析からも143億円の価格が求められる。
 売上高120億円であるから、営業利益率を8%とすると、
     120億円×0.08=9.6億円
9.6億円が営業利益である。還元利回りを6.7%とすれば、
     9.6億円÷0.067=143億円
 ホテルの価格は143億円となる。

 143億円が妥当なホテルの価格と思われるが、これを何故330億円と甚だ高い価格と思われる金額で、京浜急行電鉄は購入するのであろうか。

 ただ一つ心配な事がある。
 京浜急行電鉄の売上高は138,876百万円である。その2割は27,775百万円である。330億円の金額は、売上高の2割の金額を超えた額である。
 ホテル投資も設備投資と考えると、設備投資の金額は、売上高の2割を超えたら過剰投資という経営格言がある。

 部外者の私には価格決定の過程については、知る由も無いが、京浜急行電鉄が羽田空港の拡張などの将来を見据えた経営事業方針を決め、現在はその産みの苦しさの時と解釈すべきか。
 


****(追記) 2016年4月30日  「600億円のホテル売買」 鑑定コラム1481を転載

 2016年4月26日と27日の両日で、鑑定コラム218)に500件程度のアクセスが殺到した。

 私はびっくりした。そんな事は滅多に無い。

 どうしてそんなに多くのアクセスが殺到するのか、さっぱり分からなかった。

 アクセス殺到する鑑定コラム218)のコラム名を見てみた。

 「330億円のホテル売買」という名のコラムであった。

 京浜急行電鉄(以下「京急」と呼ぶ)が、330億円で「ホテル グランパシフィック メリデイアン」を買収すると云う内容で、2005年6月5日に発表した記事である。11年前の記事である。

 売上高は120億円であるから、143億円程度が適性価格であろうという記事内容である。

 アクセス言語を知って、何故鑑定コラム218)にアクセスが殺到したかが分かった。

 2016年4月26日の日本経済新聞の朝刊が、一つのホテルの買収記事を載せた。 「ヒューリック ホテル買収 東京台場で600億円」という見出しの記事である。

 ヒューリックという旧富士銀行系の不動産会社が、お台場にある「グランパシフィック LE DAIBA」(以下「グラパシ台場」と呼ぶ) というホテルを、600億円超で京急から買収するという記事である。

 新聞記事と云うものは、人が犬を叩いても、犬が人にかぶりついても記事にはならない。人が犬にかぶりついた場合に記事になる。

 つまり特異な現象の場合にしか記事にしない。

 ホテルの売買は多くある。
 それら売買を新聞はいちいち報道しない。

 では、今回のグラパシ台場のホテル売買を、何故日経は報道したのか。

 それは、そのホテル売買が、一般的の範囲のものでなく、特異な現象と認知したために、新聞記事にしたのである。

 では、何が特異な現象なのか。

 特異現象の一つに売買価格が入る。

 グラパシ台場の売買価格が、甚だ高いという特異性があると思われるために、記事になったのでは無かろうかと私は判断する。

 日経の発表記事を見て、日経新聞の読者は、「グランパシフィック 売買」の用語で、グーグル或いはヤフーで検索すると、鑑定コラム218)が、トップで検索される。

 それをクリックして、私の鑑定コラム218)に、アクセスが殺到したと判断される。

 買収価格は600億円超と、日経は記すが、「超」は面倒であるから、600億円の表示として、以下考える。

 600億円のホテル売買価格は適正か、否か。以下で検討する。

 グラパシ台場の料金は、同ホテルのホームページによれば、一人当りの料金は、以下となっている。

       A   9,500円
              B    14,300円
              C    16,800円
              D    17,300円
              E    18,850円
              F    19,800円
              G    21,450円

 部屋の程度とかサービス内容によって料金が異なっているのであろう。

 一人当りの料金を、18,000円とする。

 ホテルは一室2人使用である。一室料金は、

      18,000円×2=36,000円

である。

 満室状態の場合の年間収入は、

            36,000円×884室×365日=11,615,760,000円

である。

 客室稼働率を90%とする。

      11,615,760,000円×0.9≒10,454,000,000円

 客室収入は、104.54億円である。

 宴会等の収入を客室収入の50%とする。

 総収入(売上高)は、

     104.54×1.5≒157億円

157億円である。

 ホテルの賃料は、売上高の13%が標準である。

          157億円×0.13=20.46億円

 ホテルの賃料は、20.46億円となる。

 賃料の経費率を28%とすると、賃料の純賃料は、

      20.46億円×(1-0.28)≒14.7億円

14.7億円である。

 買収価格は、600億円であるから、

                  14.7億円
               ─────  = 0.0245≒0.025                        
                  600億円

2.5%の還元利回りである。

 2.5%の還元利回りは、丸の内の丸ビルの還元利回りクラス(鑑定コラム1390)「丸ビルの還元利回り」)である。

 グラパシ台場は、丸の内の立地に相当する場所にあるのか。

 「否」であろう。

 ということは、グラパシ台場の600億円の買収価格は、甚だ高い価格ということになる。

 2.5%の還元利回りとは、600億円の投下資本を回収するのに40年かかるということである。

       1/0.025 = 40

 不動産とは云え、投下資本を回収するのに40年もかかる様な、悠長なビル経営をしていては、競争に負けてしまう。

 不動産の投下資本は、15年で回収しなければならない。

 15年で投下資本を回収し終え、それ以降の純収益の金額は、全額利益として手許に残すのが、不動産業の経営ではなかろうか。京急は、11年で取得物件を売却することによって、結果的に投下資本を回収し、多額の利益を獲得している。

 1室の客室単価が高ければ、売上高が増え、それに伴い賃料収入が増えるという反論があろうと思われる。

 本件の価格計算では、1室の宿泊料金は、平均38,000円と設定している。
 安くない料金である。

 日本のホテルで、トップの帝国ホテルの1室料金はいくらか知っているであろうか。

 平成27年3月期で、1室料金は、30,658円(鑑定コラム1363「帝国ホテルの1室料金(平成27年3月)」)である。

 本件グラパシ台場は、帝国ホテルの料金よりもはるかに高い38,000円で価格計算しているのである。

 600億円の売買価格は、甚だ高い金額である。

 では、妥当な価格はどの辺りなのか。

 還元利回りを4.5%とすると、

     14.7億円÷0.045≒327億円

327億円である。

 ホテルの価格は、売上あっての価格である。

 都心の高級一流ホテルの場合の投下資本に対する売上高倍率は0.5倍前後である。

 この算式は、

                    ホテル売上高
                  ──────────  = 0.5                     
          都心一流ホテル価格

である。

 この算式を使って、グラパシ台場の価格を求める。

 投下資本即ちホテル価格をX億円とする。

                      157億円
                  ──────────  = 0.5                     
             X

      X =157億円÷0.5=314億円

314億円である。

 上記2つの求められた価格から、320億円程度が、妥当な価格と云うことになろうか。

 京急は330億円という当時でも馬鹿高い価格で、グラパシ台場を購入した。

 それを10年余使用し、倍近くの600億円で売り抜ければ、大もうけということになる。

 上記の検討数値及び結論は、私の勝手な判断、推論によるものであり、実際の数値とは異っている場合があることを了承していただきたい。

 
  鑑定コラム 44)「ホテルオークラ神戸の売買価格」

  鑑定コラム  3)「ホテルの売買事例」

  鑑定コラム 211)「ある都心一流ホテルの投下資本売上高倍率は0.43」

  鑑定コラム 85)「ホテルの経営配分利益割合」

  鑑定コラム1067)「売上高の2.8倍のホテル価格」

  鑑定コラム1481)「600億円のホテル売買」


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