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2914)千葉県佐倉市の住宅地の土地期待利回り(償却後)は2.18%


1.はじめに

 千葉県佐倉市のゴルフ場の借地の地代の鑑定評価依頼があった。
 地代評価の最大の難所は、期待利回りである。期待利回りをどれ程にして求めたら良いのか迷う。

 市街化区域の既存住宅地の土地の還元利回りはどれ程か調べ、それを参考にしてみようと思い、佐倉市の既存住宅地の土地還元利回りを求めて見た。

 公開されている地価公示価格の収益還元法のデータによるのが、論理的に信頼性のある分析結果が出るものと思われ、令和7年の佐倉市の住宅地の地価公示価格で、収益還元法を行っている地価公示価格のデータを分析して求める事にした。

2.公示地の選定

 佐倉市内の住宅地の地価公示価格で、収益還元法を行っている公示地は13地点ある。

 そのA鑑定、B鑑定を分析する事にした。A鑑定、B鑑定とは、地価公示価格は2人の不動産鑑定士が行っており、公開鑑定書の先にある鑑定書をA鑑定、後にあるのをB鑑定と呼ぶ。

 佐倉市内の13の地価公示地の内、収益還元法を採用している早い地価公示番号の地価公示地は、佐倉−3である。求め方の説明には、この公示地のA鑑定の収益還元法のデータを使用して求めることにする。

 佐倉−3の地価公示の所在等は下記である。
   所在  千葉県佐倉市臼井台16-111
   地積  173u

3.公示地の土地価格

 佐倉−3の地価公示価格は、令和7年1月1日時点でu当り51,000円である。
 公示地の土地価格は、
       51,000円×173u=8,823,000円
である。

4.公示地上の想定建物価格

 佐倉−3のA鑑定(以下「A鑑定」の表示は省略する。)の公示地上に想定されている最有効使用の賃貸建物は、木造2階建延床面積172.92uの共同住宅である。

 その建物建築費は、佐倉−3の収益還元法では、30,300,000円としている。

5.土地建物価格

 佐倉−3の土地建物の価格は、
      土地価格   8,823,000円
      建物価格   30,300,000円
       計     39,123,000円
である。

6.純収益

@ 総収入

 佐倉−3の収益還元法によれば、月額賃料はu当り1,600円であり、月額支払賃料は270,848円である。

 共益費、敷金運用益、空室損失を考量した年間総収入は、2,982,895円である。

A 総費用

 イ、償却前総費用
 地価公示価格の収益還元法は償却前利益で計算されている。

 公租公課、維持管理費、修繕費、火災保険料、取壊費用の総費用は、527,005円である。

 ロ、償却後総費用
 求めようとするのは、地代算出の為の土地利回りである。借地上の建物の所有権は建物所有者であり、建物減価償却費は建物所有者の投下資本の回収費であるから、建物減価償却償却費は賃貸費用に含めて計算しなければならない。

 建物価格は30,300,000円である。佐倉−3の収益還元法では建物の経済的耐用年数は30年としている。

 減価償却費は、
      30,300,000円÷30=1,010,000円
である。

 償却後総費用は、
      527,005円+1,010,000円=1,537,005円
である。

B 純収益

 純収益は、
      2,982,895円−1,537,005円=1,445,890円
である。

7.総合還元利回り

 総合還元利回りは、
      純収益 ÷ 土地建物価格
である。

 上記算式に数値を入れれば、
      1,445,890円÷39,123,000円=0.036957≒0.037
3.7%である。

8.土地期待利回り

  総合還元利回りは、3.7%と求められた。

 この利回りは、土地建物の総合還元利回りである。

 この利回りから、土地の還元利回りと建物の還元利回りを求めなければならない。

 建物の利回りは、土地の利回りより高い。それは、建物には経済的耐用年数があるためである。建物の残存耐用年数が短ければ、建物の利回りは高くなる傾向がある。

 それは、建物の投下資本の回収を早めようとすることによる現象であって、経済行為として当然の行為である。

 土地の還元利回りをXとする。建物の還元利回りは、
      X+償還基金率相当
であるとして求める。

 償還基金率とは、n年後1円にするために毎期末に預託すべき率をいう。

 耐用年数n年の建物の取得価格を、n年後に再取得するために、年利率rで年末に一定額を償却額として積立てる場合に使用する率が償還基金率である。

 償還基金率の算式は

              r 
                   ──────────                           
                  (1+r)のn乗 −1 
             但し、r:利率
                n:年数

である。年金終価率の逆数である。

 償還基金率を求めるための利率は、建物の経済的残存耐用年数の平均償却率を採用する。本件想定建物の経済的残存耐用年数は30年である。
        1/30=0.0333
の数値を使用する。

 利率0.0333、期間30年の償還基金率は、上記式のrに0.0333、nに30を入れて求めれば、0.01992である。

 鑑定評価基準は、還元利回りの求め方の1つとして、土地と建物に係わる還元利回りの場合は、「その物理的な構成要素(土地及び建物)に係わる各還元利回りをそれぞれの価格の割合より加重平均して求める」と規程する。(平成26年改正鑑定基準国交省版P30)

 価格割合と云うが、価格で求めても同ことである。

 上記鑑定基準の規定は、総合還元利回りと土地・建物の還元利回りの関係を述べているものであり、それを算式にすれば、下記である。

      土地価格×土地還元利回り+建物価格×建物還元利回り
     ──────────────────────    =総合還元利回り
                 土地価格+建物価格

 土地の還元利回りXは、次の算式で求められる。

           8,823,000×X + 30,300,000(X+0.01992)
          ─────────────────────=0.037         
                8,823,000 + 30,300,000

 この式を解けば、
      X=0.0215723 ≒ 0.0216
と求められる。

 佐倉−3の土地の還元利回りは、2.16%である。

 還元利回りと期待利回りは、貨幣の表と裏の関係にあることから、求められた還元利回りを期待利回りとし、
      佐倉-3A鑑定の土地期待利回り2.16%
と求める。

9.佐倉−3A・B鑑定の土地償却後期待利回りの計算一覧

 上記で求められた求め方を表にしたのが、下記である。


令和7年          
公示番号 佐倉-3 A鑑定     佐倉−3 B鑑定  
所在 千葉県佐倉市臼井台16-111        
公示価格 51000 円/u   51000 円/u
土地面積 173 u   173 u
土地総額 8823000   8823000
建物価格 30300000   29900000
土地建物価格 39123000   38723000
建物構造 W造2階共同住宅     W造2階共同住宅  
延べ床面積 172.92 u   172.92 u
賃貸面積 169.28 u   169.28 u
月額支払賃料 270848   269295
平均支払賃料 1600     1591
年間総収入 2982895   2965791
年間総費用(償却前) 527005   550946
建物償却額 1010000   996667
償却後年間総費用 1537005   1547613
純収益 1445890   1418178
総合還元利回り 0.037     0.0366  
建物耐用年数 30   30
平均償却率 0.0333     0.0333  
償還基金率 0.01992     0.01992  
土地還元利回り      
建物還元利回り X+償還基金率     X+償還基金率  
土地還元利回り 0.021572349     0.021218754  
  0.0216     0.0212  


10.千葉県佐倉市住宅地の土地の償却後期待利回りの一覧

 上記と同様な求め方で、佐倉市住宅地の13件の地価公示地のA鑑定、B鑑定の償却後期待利回りを求める。

 求められた期待利回りの一覧は、下記である。


   
公示地番号 土地利回り % 公示地値価格 円/u
1 佐倉-3A 2.16 51000
2 佐倉-3B 2.12 51000
3 佐倉-9A 2.10 83000
4 佐倉-9B 2.22 83000
5 佐倉-10A 2.20 102000
6 佐倉-10B 2.26 102000
7 佐倉-11A 1.78 92600
8 佐倉-11B 2.14 92600
9 佐倉-13A 2.19 98800
10 佐倉-13B 2.21 98800
11 佐倉-17A 2.06 74900
12 佐倉-17B 1.87 74900
13 佐倉-22A 2.16 41500
14 佐倉-22B 2.18 41500
15 佐倉-24A 2.37 59200
16 佐倉-24B 2.16 59200
17 佐倉-25A 2.11 85200
18 佐倉-25B 2.28 85200
19 佐倉-29A 2.39 84600
20 佐倉-29B 2.35 84600
21 佐倉-32A 2.38 120000
22 佐倉-32B 2.42 120000
23 佐倉-34A 2.00 95000
24 佐倉-34B 2.04 95000
25 佐倉-37A 2.33 75900
26 佐倉-37B 2.30 75900
  平均 2.18 81823


 佐倉市の既存住宅地の土地期待利回り(償却後)の平均は、2.18%である。

 上記のごとくの難しい、ややこしい求め方をする必要は無く、地価公示価格の収益還元法は、土地残余法の土地還元利回りは明示されているから、その利回りを採用すればよいでは無いのかという疑問を持たれる不動産鑑定士の方がいるであろうと思われるが、その考え方は間違っている。

 それは、地価公示価格の収益還元法は、統一的に基本利率が提示されており、その利率に従って、地域性、個別性の要因修正を行って土地還元利回りが決定されている。

 基本利率(本件の場合5.0% 償却前)はどの様にして求められたのかという問題が生じる。基本利率の算出根拠の説明が必要である。

 その基本利率の算出方法は、一般にオープンにされていなく、一般不動産鑑定士は知る事は出来ない。

 それ故、地価公示の土地残余法の利率(本件の場合 4.9% 償却前)は、基本利率の説明が必要であり、それがなされずにそのまま採用することは、不可である。

11.佐倉市住宅地土地利回りグラフ

上記データを縦軸に土地利回り、横軸に土地価格を取って、グラフ化すると下図である。



佐倉市の土地償却後期待利回りと土地価格





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