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315)不動産鑑定士の仰天すべき法廷証言

 土地価格の妥当性を争う裁判である。
 土地の状況を概略説明するが、不必要な部分は省き、土地数量は概略数量として表示する。

 幅員約2Mの道路に面する地積約1200uの土地(対象地と呼ぶ)である。
 地形は長方形の整形とする。土地利用は雑木林の繁茂する土地である。

 幅員約2Mの道路は建築基準法42条2項道路である。都市計画の地域地区指定は、住居系の用途に指定されている。
 地域は近くまで住宅が建っており、駅までは徒歩10分程度の住宅地である。

 この土地の所在する行政体の宅地開発指導要項は、500u以上の土地の地形等を変更し宅地開発する場合には、開発行為の許可を必要とすると規程する。
 そして道路幅員4M未満の道路に面する土地の開発行為は許可しない。
 例外として、500u未満までの土地の部分には、宅地利用を認めるというものである。

 対象地の土地面積は1200uであるから、宅地開発指導要項の対象とする土地面積に有り、対象地の土地利用には、同行政体の宅地開発指導要項に従わなければならない。

 対象地の50〜90M近くに幅員6〜9Mの公道があるが、それら公道より前面道路幅員を5〜6Mにして築造してくれば、対象地全体の宅地開発行為は許可されるであろうが、その土地の買収に各土地所有者がたやすく応じてくれる可能性は極めて少なく、実現性は低い。用地買収費・工事費も莫大な金額になる。その様な実現性の低い条件を前提にして、対象地の価格を求めるものでは無かろう。

 とすれば、合法的で実現性の極めて高い方法で評価すべきであろう。
 当該行政体の宅地開発指導要項によれば、対象地の前面道路は幅員約2Mであるから、宅地開発行為は許されないことになる。但し500u未満までの宅地利用は認められることになる。

 こうした状況の土地の評価に2つの評価額が提示された。
    1つの価格は6000万円(A価格と呼ぶ)
    他の価格は2000万円(B価格と呼ぶ)
     (注) 金額は説明を分かり易くするために概略である。

 B価格の鑑定は、対象地が前記のごとく宅地開発行為の出来ない土地であるから、500u未満の土地を宅地利用と考える。その500u未満の土地には雑木林が繁茂していることから、伐根、盛土、道路敷地のセットバック、インフラ整備工事費を控除して宅地利用部分の土地価格を求める。500uを越える部分の土地利用は、駐車場利用土地が最適であろうとして土地価格を求めていた。そうして総額2000万円の土地価格である。

 A価格が対象地の価格として適正と主張する側は、B価格の鑑定は鑑定評価基準に則って無い信頼出来ない鑑定評価であり、意図的に低額に求めた鑑定であると激しく非難・批判する。
 そしてB価格の鑑定は、対象地の最有効使用の判定を間違えていると強く主張する。

 B価格は意図的に低額であり、最有効使用の判定を間違えている理由として、A価格が対象地の価格として適正で妥当と主張する不動産鑑定士は、法廷の証人尋問で次のごとく証言する。

 「対象地を500u未満で宅地開発し、2年位たってほとぼりが冷めた頃、他の未利用地を、第3者の名儀に変えるかして、再び500u未満の宅地開発をする。
 それが対象地の最有効使用である。
 そうした宅地利用が残されているにもかかわらず、それらを全く考えずに、500uを越えた残地の土地利用は駐車場と勝手に決めつけて、2000万円という低額の鑑定評価額を書いた鑑定は、最有効使用すら把握出来ない鑑定であり信用出来ない。」
と裁判官に向かって堂堂とのべる。

 裁判官が、この証言をどの様に受け止めるか私には分からない。

 上記の証言内容の宅地開発行為は、私には合法的な行為とは認めがたく、脱法行為であると思われる。
 不動産鑑定の専門家であるべき不動産鑑定士が、法廷でその様な脱法行為を前提にして計算される土地価格が適正であると証言をするとは。証人尋問と言うこともあってか、法廷の傍聴席には訴訟事件関係者等の傍聴人が少なからずいるという公開の法廷である。

 2000uの土地であったら、同じ脱法行為を3回繰り返せと言うことか。そうすれば全て宅地利用出来る土地になるから、土地価格は宅地として高くても良いという考え方であろうか。
 それは不動産鑑定評価といえるものであろうか。
 イヤハヤ。

 知り合いのベテランの不動産業者にこの話をした。
 知識と経験豊富なベテランの不動産業者は言う。

 「マジの話ですか。
 その不動産鑑定士は、本当に裁判所で証人として、その様な非常識な証言をしたのですか。
 そういうことをするから不動産鑑定士の信用が無くなるのですょ。
 不動産業者の中には、或いは建売業者の中に、そうした手法を使う輩は時々います。それは宅地開発行為許可違反のやり方ですょ。それが許されたら、良好な住宅地を作ろうとしている行政側の宅地開発指導要項が何の為にあるのかと言うことになります。
 禁じ手です。見つかったら、営業停止、免許取り上げになりますょ。
 そうした行為は役所がまず許さないですょ。許したら大変なことになりますから。

 不動産鑑定士がマジでそうした違反行為を堂堂と裁判官の前で、証言し、それが正論のごとく述べ、そうして求められた土地価格が適正であると主張するとは。
 国土交通省がそれを知ったら激怒するのでは無いですか。
 田原さん、不動産鑑定士はそんな考えで土地価格を求めてはだめですょ。」
と半端あきれながら言う。

 この鑑定コラムの記事を読まれた方はどう思われますか。
 特に不動産鑑定士の方は、各自考えられたい。
 

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