○鑑定コラム


フレーム表示されていない場合はこちらへ トップページ

田原都市鑑定の最新の鑑定コラムへはトップページへ

前のページへ
次のページへ
鑑定コラム全目次へ

438)りそな銀行丸の内の東京本社ビル売却

 都市銀行の1つであるりそな銀行が、丸の内にある東京本社ビルを売却した。(りそな銀行HPプレスリリース 2008年3月25日)

 同銀行の丸の内の東京本社ビルは、SRC造の高層ビルで、お堀端に面し、皇居を北側に見下ろすという非常に立地の良い場所にある。
 昭和53年建築の建物で築30年であるが、まだまだ充分使用に耐えうる事務所ビルである。

 りそな銀行は、東京本社ビルの売却理由を、りそな銀行の顧客対象である個人、中小企業、中堅企業との関係を考えると、銀行機能として必ずしも丸の内にある必要性は無い。加えて、財務基盤の強化も兼ねて、東京本社機能を江東区木場一丁目の新築賃貸ビルに平成22年に移ると云う。

 移転先のビルが完成するまでは、現東京本社ビルを賃借して営業すると云う。

 売却するりそな銀行のビルは、マルハとの共有ビルである。

    延床面積      74,379.30平方メートル
    専有面積            42,470.56平方メートル

 専有面積割合は、
       42,470.56÷74,379.30=0.57
である。
 専有面積部分は賃貸事務所として貸すことの出来る床面積である。このことからレンタブル比57%ということになる。

 随分と共用面積部分の多い、ゆったりとした贅沢な事務所ビルである。

 このうち、りそな銀行の持分割合は73%である。
       42,470.56平方メートル×0.73≒31,000平方メートル
 りそな銀行の所有する事務所の床面積は、31,000平方メートルである。
 
 このりそな銀行の所有する事務所部分の土地建物の売買価格は、1620億円である。

 還元利回りはどれ程か分析検討してみる。

 この事務所ビルを賃貸した場合、支払賃料はいか程であろうか。

 三菱地所の木村恵司社長は、日経新聞の土居倫之記者とのインタビュー記事(2008年4月11日 日本経済新聞)で、建築中の丸の内のパークビルの賃料を、「最も高い賃料が坪当り7万円台」と発言している。

 りそな銀行のビルは、築30年経ていることから、この要因修正を0.8と考えると、
      7万円×0.8=5.6万円

坪当り5.6万円と推定出来る。

 31,000平方メートルは、坪面積換算では、
     31,000÷3.030578≒9380坪
である。

 賃料は、
     5.6万円×9380=52,528万円≒5.25億円
である。年間賃料は、
     5.25億円×12=63億円
である。

     年間支払賃料÷土地建物の売買価格=粗利回り

とすると、りそな銀行の売買価格の粗利回りは、
     63億円÷1620億円≒0.039
3.9%である。

 必要諸経費を35%とすると、
     3.9%×(1−0.35)=2.53≒2.5%
還元利回りは2.5%と推定される。
 但し、これは私の勝手な推測と分析によるものであることを断っておく。

 りそな銀行の新東京本社は江東区木場一丁目の新築ビルという。

 最寄駅がどの駅か分からないが、東京メトロ地下鉄東西線の木場駅、東陽町駅勢圏の貸ビルの募集賃料を調べると、下記のごとくである。賃料は坪当り単価。
 
 
1.木場    徒歩4分   150u    1994年築   1.05万円
2.東陽町   徒歩3分   150u    1994年築   1.05万円
3.東陽町   徒歩5分   170u    1990年築   0.95万円
4.東陽町   徒歩4分   280u    1992年築   1.58万円
5.木場    徒歩11分   370u    1990年築   1.26万円
6.木場    徒歩3分   350u    1992年築   1.37万円
7.木場    徒歩1分   460u    1992年築   1.28万円
平均      徒歩4.4分                 1992年築      1.22万円

 7件の募集中の事務所ビルの平均賃料は、駅より徒歩4.4分、1992年築(築16年)、坪当り1.22万円である。

 築16年の建物の賃料であるから、これから新築賃料を推定すると、
         1.22万円×1.15≒1.4万円
と推定する。
 移転先のりそな銀行の事務所ビルの支払賃料を坪当り1.4万円とする。

 移転先の事務所ビルの面積がどれ程の面積か分からない。
 事務所勤務の人数によって必要な事務所面積はおおよそ推定出来るが、どれ程の銀行員が勤務するのか私には全く分からない。
 とはいえ丸の内ビルの9380坪(31,000平方メートル)の面積は必要無いであろう。

 それは、経営のスリム化を考えた丸の内の東京本社ビルからの移転であるから、事務所面積も当然減少するのでは無かろうか。

 例えば、極端かもしれないが約半分の面積になったとする。
      9380坪×0.5≒4,700坪(事務所部分の面積)

 月額支払賃料は、
      1.4万円×4,700坪=6,580万円
である。
 年額賃料は、
      6,580万円×12=78,960万円≒7.9億円
である。

 丸の内より木場一丁目に移転することによる家賃負担分の削減は、
      63億円−7.9億円=55.1億円
である。

 今迄30年間丸の内に居たことから、今後30年間木場一丁目に居ると考えることは不自然では無かろう。今後30年間木場に居ると考える。
      55.1億円×30=1653億円

 家賃による経費削減額は1653億円となる。

 「たかが家賃」と小馬鹿にしていると、これだけの金額の節減になるのである。この金額を見れば、家賃を「たかが家賃」と云っていることは出来ないでは無かろうか。


  鑑定コラム113)「銀行の売買価格はどの様に求めるのか」

  鑑定コラム140)「遂に都市銀行本店も身売り」

フレーム表示されていない場合はこちらへ トップページ

田原都市鑑定の最新の鑑定コラムへはトップページへ

前のページへ
次のページへ
鑑定コラム全目次へ