○鑑定コラム


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519)いつから不動産鑑定士が不動産鑑定書を発行出来るようになったのか

 不動産鑑定士は「不動産鑑定書」を発行出来ない。
 不動産鑑定書を発行出来るのは、不動産鑑定業者だけである。

 不動産鑑定業の業者登録を知事若しくは大臣にしている不動産鑑定業者のみが「不動産鑑定書」を発行出来る。

 それは「不動産の鑑定評価に関する法律」の第39条に明記してある。

 「不動産鑑定業者は、不動産の鑑定評価の依頼者に鑑定評価額その他国土交通省令で定める事項を記載した鑑定書を交付しなければならない。」

 鑑定書を発行出来るという文言でなく、「交付しなければならない」という文言である。発行以上の強い行為を示唆する。

 不動産鑑定士は鑑定書を発行出来るのでなく、鑑定業者は鑑定書を交付しなければならないと法律は規定する。

 不動産鑑定士は不動産鑑定書を発行出来ないのである。
 これが、「現行の「不動産の鑑定評価に関する法律」は業者法であって士法では無い」と言われる由縁である。

 では、不動産鑑定士が書いている鑑定書まがいのものは何かと言えば、それは「鑑定評価報告書」と呼ばれるものである。

 不動産鑑定士が不動産鑑定業者に提出するものが、「鑑定評価報告書」で、その提出された報告書に不動産鑑定業者の名前・住所が書かれ、代表者印が押されて外部に発行されるのが「鑑定書」であり、一般にいわれる不動産鑑定評価書である。

 不動産鑑定士なら誰でも不動産鑑定評価書を発行出来る様に法律改正をしょうというのが、「士即業」と言うもので、ずっと以前からその運動は、あるときは盛り上がり、あるときは低調に成りながらも続けられている。

 しかし、不動産鑑定評価の監督官庁である国土交通省の地価調査課は、どういう理由か私には分からないが、「厳」として不動産鑑定業者しか不動産鑑定書の発行を許さない。

 それはそれで良いのであるのだが、では不動産鑑定業者になれるのは不動産鑑定士のみなのかと言うと、そうでは無い。
 不動産鑑定士でなくとも、不動産鑑定士を雇い「専任不動産鑑定士」をおけば、誰でも不動産鑑定業を営むことが出来るのである。ここが問題となっている処である。

 そして不動産鑑定士の不満は、不動産鑑定書の発行体である不動産鑑定業者への違反行為に対する罰則は厳しいかと言えば、大甘であることである。

 違反を行って厳しい処罰を受けるのは、不動産鑑定士である。

 この状態を見て、人は、
 「人の良い不動産鑑定士よ。
 愚かな不動産鑑定士達よ。
 不動産鑑定業者に搾取されることを承知で生きている人達よ。」
といい、嘲り笑う。

 不動産鑑定士は不動産鑑定書を発行することが出来ない。

 しかし、あろうことか。
 不動産鑑定士の名前のみで発行された「不動産鑑定書」が私の所に届けられた。

 表紙にはバッチリと『不動産鑑定書』と書いてある。
 その不動産鑑定書の発行は、「不動産鑑定士****」と書いて有るのみである。不動産鑑定業者名は書いてない。
 不動産鑑定士の鑑定書の発行である。

 内容は、賃料の鑑定評価の内容が書かれ、鑑定評価額如何ほどと賃料が求められている。紛れも無い不動産鑑定評価書である。

 いやはや驚いた。「士即業」を地でいく人が現れた。
 不動産鑑定業者名を書かないからそれ以上である。「士即鑑定書発行可」の実施である。

 不動産鑑定士は鑑定書を発行出来ないと言うことを知らないことはあり得ない。
 知って行うことは、傲慢と言うのか、横柄と言うのか、ルール無視の無茶苦茶というのか、それとも国交省を小馬鹿にした行為なのか。

 いずれにしろこの行為は「不動産の鑑定評価に関する法律」という法律違反と私は思うが。

 それとも不動産鑑定士は鑑定書を発行出来る様になったのであろうか。
 そんな話は私は聞かないが。

 不動産鑑定士が鑑定書を発行出来る唯一の例外がある。
 それは地価公示価格の鑑定書の発行である。
 地価公示価格の鑑定書は、不動産鑑定業者でない不動産鑑定士個人が鑑定書を発行出来る。

 地価公示法第5条に、地価公示価格の評価においては、
 「不動産鑑定士は鑑定評価書を提出しなければならない」
と規定する。

 不動産鑑定業者は鑑定書を提出しなければならないという文言では無い。

 これに比し、同じ様な国土利用計画法に基づいて行われている「基準地価格」の鑑定評価には、その規定が無い。

 国土利用計画法施行令第9条1項は、下記のごとく規定する。
 「知事は・・・・・・・選定された画地について、毎年一回一人以上の不動産鑑定士及び不動産鑑定士補の鑑定を求め、その結果を審査し・・・・・・一定の基準日における当該画地の単位面積当りの標準価格を判定するものとする。」

 国土利用計画法施行令は、「不動産鑑定士等の鑑定を求め」とあるのみである。これを以て不動産鑑定士は鑑定書を発行出来るとは解釈出来ない。
 施行令は法律を越えることは出来ない。

 しかし、現実には7月1日時点の基準地価格の鑑定が行われ、その鑑定書が不動産鑑定業者でなく不動産鑑定士によって発行されている。

 この行為は一体どの法律、特別法等によって行われているのであろうか。
 私には分からない。
 基準地評価を行っている不動産鑑定士或いはその鑑定評価を発注している都道府県の担当者の方は教えて頂けないでしょうか。
 まさか法律違反の行為を行っているとは信じがたいので。
   

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