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557)リゾートホテルの家賃は売上高の13%

 河口湖の一つのリゾートホテル(2009年11月開業予定)の開業予定の記事を、日本経済新聞(20009年5月29日)は載せる。

 一つのリゾートホテル開業予定記事を、どうして日経は載せるのか私には分からないが、しかし私にとっては大変喜ばしい記事内容である。
 それは、不動産鑑定の分析に際して、公表データとして使えるからである。

 日経記事によると、河口湖に建てるリゾートホテルは、投下資本10億円で、規模は4階建で、床面積3000u、ツインルーム54室である。

 客室稼働率60%で、3年後売上高5億円を目指すという。

 この開業予定のリゾートホテルの実例情報は、幾つかの重要なことを教えてくれる。

 一つは、リゾートホテルの建設投資額と売上高の関係である。

 売上高5億円のリゾートホテルの投下資本は、10億円である。

      10億円÷5億円=2.0

 当該リゾートホテルの新設投下資本は、売上高の2倍と云うことである。

 建築工事費単価は、

      1,000,000,000円÷3,000u≒333,000円/u(坪当り110万円)

である。

 但し、投下資本の額が、そのままリゾートホテルの市場価格にはならない。

 ホテルの価格(市場価格)は、売上高あっての価格であり、建設費がいくらかかったからと云っても、その建設投下資本額は、市場価格イコールではない。

 一般的には、ホテルの価格は、

      売上高 = 当該ホテルの価格

である。

 リゾートホテルの場合には、リスク要因が高いことから、売上高の0.7掛けか、半値程度の価格で取引される。

 本件の場合、投下資本額を市場価格と仮に考えると、それは都市ホテル並である。
 ということは、良好な観光地に立地するリスクの少ないリゾートホテルと云える。

 しかし、開業して、利益が思うように出なかった場合には、10億円の投下資本の価値は、市場価値として3.5億円になってしまうこともあり得る。

 二つ目は、客室稼働率である。
 リゾートホテルを計画する場合、プロは、客室稼働率を60%として計算するということが分かったことである。

 客室稼働率の把握は、ホテル事業経営においては、非常に大切である。
 この点から見ると、リゾートホテルの客室稼働率60%の数値が分かったことは、不動産鑑定評価から見ると重要なことである。

 次に、リゾートホテルの営業利益率について考えてみる。

 中小企業庁編の『中小企業の財務指標』平成19年版p612(中小企業診断協会発行 同友館発売)によれば、「旅館、その他宿泊所」の売上高営業利益率上位25〜50%の平均値は、次の通りである。

             売上高    751,974千円
       営業利益    53,012千円

 これより、営業利益率は、

      53,012千円÷751,974千円 = 0.070

  7.0%である。

 求められる営業利益より、投下資本の回収年を考える。
 営業利益は、

      500,000,000円×0.07= 35,000,000円

である。

 投下資本10億円の回収年数は、

      1,000,000,000円÷35,000,000円=28.5年≒29年

である。29年の投下資本回収年は長い。

 10年程度経営し、利益率を高めて、途中売却して、投下資本の回収を図るのが良い方策と思われる。

 次に、求められた営業利益率より、売上高に占める家賃割合を推定する。

 本件河口湖の2009年11月開業予定のリゾートホテルの3年後売上高は、5億円と云う。この売上高で考える。
 営業利益は、先に求めた営業利益率7%とすれば、先に述べたが、
      500,000,000円×0.07= 35,000,000円
である。

 この営業利益は、経営、資本、労働、不動産の協働によって得られたものである。

 資本に属する利益は、不動産に化体しているものと考え、利益配分の必要はない。

 労働に属する利益は、給与として経費計上されており、計上の必要は無い。

 問題は、経営に属する利益配分である。経営者の賞与のみのものでは無い。本社経費もここに含まれてくる。そうしないと、本社の経費が無く、本社は存在出来なくなる。

 経営配分利益については、共著『民事再生法と資産評価』(清文社)で、私がデータ分析した論文を載せており、そこである程度の経営配分利益割合を算出している。

 リゾートホテルの経営配分利益を12%とする。

 営業利益より経営配分利益を控除したものが、不動産に属する利益である。

        35,000,000円×(1−0.12) = 30,800,000円

 不動産配分利益は、30,800,000円である。この金額は純賃料の性格のものである。

 それ故、これが家賃にはならない。家賃とするには、ホテル事業者側が事業の経費計上した費用のいくつかの加算が必要である。

    減価償却費    720,000,000円×1/40=18,000,000円
             (240,000円×3000u=720,000,000円)
    公租公課    1,000,000,000円×0.5×1.7/100=8,500,000円
    火災保険料    720,000,000円×1/1000=720,000円
        大規模修繕費   500,000,000円×0.01=5,000,000円
        小規模修繕費   賃借人のホテル側が行う
        管理費      賃借人のホテル側が行う
            必要諸経費計           32,220,000円

 賃料は、

      純賃料+必要諸経費=賃料

である。

 上記公式に数値を代入すれば、

      賃料(家賃) = 30,800,000円+32,220,000円 = 63,020,000円

である。

 リゾートホテルの売上高は、500,000,000円である。

        63,020,000円 
             ───────  = 0.126≒0.13                         
              500,000,000円
 リゾートホテルの家賃は、売上高の13%と求められる。

 当該リゾートホテルが、開業後、良好な経営業績を残すことを祈る。


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