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564)2009年ホテル業界に何が起こっているのか

 帝国ホテルが、平成21年(2009年)7月24日に、平成22年3月期の第1四半期(2009年4月〜6月)の決算短信をホームページにプレスリリースした。

 その数値を見て驚いた。
 2009年、日本のホテル業界に何が起こっているのか。何が起ころうとしているのか。

 プレスリリースされた帝国ホテルの2009年4月〜6月の3ヶ月間の売上高と営業利益は、下記の通りである。

            売上高    12,399百万円
            営業利益     26百万円

 対前年同期比で見ると、
            売上高    ▲14%
            営業利益   ▲98.0%
である。

 営業利益のセグメントを見ると、
          ホテル事業   ▲364百万円
          不動産賃貸業      987百万円
          消去又は全社   (597)百万円
          営業利益      26百万円
の数値である。

 ホテル事業が赤字に成ってしまった。

 前期である21年3月期の第1四半期(2008年4月〜6月)は、下記のとおりである。
            売上高    14,512百万円
            営業利益    1,314百万円

 営業利益のセグメントを見ると、
          ホテル事業     796百万円
          不動産賃貸業    1,091百万円
          消去又は全社   (574)百万円
          営業利益    1,314百万円
の数値である。

 売上高が14.6%減少したら、ホテル事業は364百万円の赤字になってしまった。

 以下に、過去6年(平成16年3月期〜21年3月期)の通年の売上高・営業利益と、各決算期の第1四半期の売上高・営業利益を記す。単位百万円。


決算期 売上高 営業利益 第一四半期売上高 第一四半期営業利益
21年3月期 55785 3091 14512 1314
20年3月期 58080 3539 14562 1411
19年3月期 57061 4214 14504 1609
18年3月期 55395 3877 13864 1071
17年3月期 53296 2872 13505 747
16年3月期 53400 3231 13342 1048
         
平均 55503 3471 14048 1200


 過去6年の平均売上高は、
          通年平均     55,503百万円
          第1四半期        14,048百万円
である。

 第1四半期に対する通年の売上高の割合は、

       55,503百万円÷14,048百万円≒3.95
 
である。
 即ち、第1四半期の売上高を4倍すれば、ほぼ当該年の売上高となる。

 この割合を利用して、帝国ホテルの平成22年3月期の売上高を推定すると、

       12,399百万円×3.95 = 48,976百万円

となり、過去6年で最低の売上高になる。

     売上高−営業利益 = 原価及び販売管理費

とすれば、6年間の平均原価・販売管理費は、

       55,503百万円−3,471百万円 = 52,032百万円

である。

 この原価及び販売管理費を、平成22年3月期に当てはめてみると、

            売上高      48,976百万円
            原価・販管費      52,032百万円
            営業損失     ▲3,056百万円

の数値となる。

 大変な状態になる。

 帝国ホテルの経営者は、この様な事態にならないように、経営改善の努力をするであろうから、実際には、この様な数値にはならないと思う。

 2009年4月〜6月の大幅な売上高減の原因について、帝国ホテルは、以下の点を挙げる。

 @ 日本経済が、未だ本格的な回復局面に至っていない。
 A 新型インフルエンザの影響で個人消費が低迷。
 B 外国人宿泊者の減少。
 C 企業の業績悪化による宴会需要の低迷。

 日本を代表するホテルである帝国ホテルが、第1四半期とはいえホテル事業部門が赤字に陥るとは。
 その現象は、帝国ホテルのみに起こっている特殊なケースとは言えないでは無かろうか。

 一体、日本のホテル業界で今何が起こっているのか。又これから何が起ころうとするのであろうか。

 夏真っ盛りである。
 若い頃、穂高岳や槍ヶ岳に登るために上高地を通過する時、から松林の上に見える赤い屋根の夏の間だけ営業する帝国ホテルが、松本電鉄のバスの窓からよく目についた。

 そのホテルは立地といい、品位といい日本の最高の山岳リゾートホテルである。

 テントとシュラフのねぐらでなく、いつの日か一度は、上高地帝国ホテルに泊まってみたいと思った。

 憧れであった。その憧れは未だ実現出来ていない。価格が高すぎて、とても手が届かない。

 上高地帝国ホテルのホームページに紹介されている奥穂高岳をバックにした赤い屋根の上高地帝国ホテルの建物は、下記のアドレスをクリックすれば見られます。 当初建物設計は高橋貞太郎氏で、1977年に、開業当初の高橋貞太郎氏設計の外観を忠実に再現しながら、建て直しされたと聞く。
 
      http://www.imperialhotel.co.jp/j/kamikochi/index.html


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