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649)積算賃料=実際実質賃料という等式が成り立つのか

 間違いだらけの賃料の不動産鑑定書を見て、堪忍袋の緒が切れたと、つい最近の鑑定コラムに書いた。(鑑定コラム645「鑑定協会は実務修習テキストの継続賃料の減価償却費の求め方を即刻訂正せよ!」)

 堪忍袋の緒を切る間違った賃料鑑定書の賃料の求め方は多々あるが、そのうちの一つを紹介する。

 ある賃料鑑定書で、積算賃料を下記のごとく求めるものがあった。数値は読みやすく丸めにする。

 その賃料鑑定書によれば、

          月額支払賃料    X円
          必要諸経費     50,000,000円+0.24X円
          運用利回り     1.5%
          保証金             100,000,000円
          純賃料       150,000,000円
とする。

 上記数値が、いわば当該賃料鑑定書の積算賃料を求める際の基本数値である。
 この数値から、積算賃料を下記の等式を立てて求めようとしている。

    150,000,000円+50,000,000+0.24X=12X+(100,000,000円×0.015)
                                     ・・・・・・@式

 上記@式を解いて、Xを求める。

 0.24Xは、どうも管理費、修繕費、火災保険料のようである。

 上記@式で求められたXに、(100,000,000円×0.015)÷12 で求めた数値を加算して、月額実質賃料としている。

 ここで、再度上記@式を見て欲しい。それもじっくりと見て欲しい。

 じっくりと見て、@式の等式が間違っていないと思われた人は、不動産鑑定士として賃料評価を止められたい。厳しい言い方であるが、間違いが分からなければ、その様な人に継続賃料の評価をやってもらっては甚だ困るのである。

 賃料評価を行う資格は、現在の自分の知識レベルでは無いと反省されたい。勿論、今後賃料評価についての勉強を充分されれば資格はあることになる。

 その理由を下記に述べる。

 上記@式の左辺と右辺がイコールの等号で結ばれる存在性がありうるのか。

 積算賃料は、

     純賃料+必要諸経費=積算賃料

の算式で求められるものである。

 それから云えば、上記@式の左辺は、

     純賃料(150,000,000円)+必要諸経費(50,000,000円+0.24X)

となっているから、この左辺の式は、積算賃料を求める算式といえる。

 但し、管理費等が分からないからと云って、0.24Xと求める手法の考えなど、根本的に間違っているが。

 では、右辺の、

     12X+(100,000,000円×0.015)

は何かというと、これは、実際実質賃料を求める式である。
 但し、支払賃料Xに共益費が含まれている場合という条件がつくが。

 即ち、@式は、
     左辺=積算賃料
     右辺=実際実質賃料
である。

 この左辺と右辺、即ち、

     積算賃料=実際実質賃料

という算式が成り立つのか。

   @式の左辺=右辺の等式は成り立たない。

 そもそも、積算賃料に保証金が発生し、保証金の運用益が発生するものなのか。
 積算賃料に、どうして1億円の保証金が設定されるものなのか。

 積算賃料とはどういうものなのか。
 実際実質賃料とはどういうものなのか。

 上記2つの賃料概念は全く異なるものである。
 概念が全く異なるものが、等号で結ばれるという論理は成り立たない。

 当該不動産鑑定士は、両賃料は等号で結ばれると考えているのである。
 当該不動産鑑定士は、両賃料の概念、違いが全く分かっていない。

 両賃料をゴチャ混ぜにして理解し、等号で結ばれるとして、求められるXが積算賃料であるとしている。

 求められているXの数値は、積算賃料という名の代物では無い。訳の分からない金額のものである。賃料といえるものでは無い。

 @式で求めたものを積算賃料と云う当該不動産鑑定士に、積算賃料の求め方が間違っていると指摘すると、
 「当方の求め方は間違っていない。
 適正な求め方であり、求められた賃料は適正な積算賃料である。」
と反論してくる。

 間違いを間違いで無い。適正であると堂々と反論してくるのである。
 @式で求められたものが、果たして適正な積算賃料といえるものなのか。

 当該不動産鑑定士は、今迄に@式の求め方が間違いであると指摘されたことがないようだ。

 今迄にこうした考えで、多くの賃料の鑑定評価をし、それが通っていたようだ。
 私に初めて間違っていると指摘されて、心外も甚だしいと思っているのではなかろうか。

 上記と同じ考え方で積算賃料を求めている賃料鑑定書は、1件のみでなく複数見られる。誰かが書物等に書いていて、それを手本にして同じ様に鑑定書を書いているのか私には分からないが。

 こうした賃料鑑定書が、注意もされず、不当鑑定の誹りも告発も受けず、多分高額な鑑定報酬料をもらっているであろうが、適正な賃料鑑定書である、正当な賃料鑑定書であると広言して憚らず、大きな顔をして、我が物顔に大手を振って闊歩しているのである。
 摩訶不思議な不動産鑑定業界であると思いたくなる。

 堪忍袋の緒が切れないであろうか。


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