○鑑定コラム



フレーム表示されていない場合はこちらへ トップページ

田原都市鑑定の最新の鑑定コラムへはトップページへ

前のページへ
次のページへ

鑑定コラム全目次へ


72)新不動産鑑定評価基準特集の『Evaluation』7号

 不動産鑑定実務理論雑誌で季刊誌の『Evaluation』7号が発行された。
 巻頭言は税理士で不動産鑑定士の鵜野和夫先生が「グローバルスタンダードとロシア経済の謎」という題で、ロシア旅行で感じた事を述べられている。
 国家としては破産に近いロシアに有りながら、庶民の余裕ある生活状況を活写される。そして酒に酔っぱらったアメリカと一緒に、借金という欲望という名の電車に乗って居る日本の姿を、テネシー・ウィリアムズの戯曲『欲望という名の電車』の題名にもじって警告する。
 テネシー・ウィリアムズの同戯曲の主人公の下車する駅名は、「極楽」という駅であったことを思い出した。

 『Evaluation』7号の特集は「新・不動産鑑定評価基準を迎えて」で、4本の論文が載っている。
 そのうちのいくつかを紹介する。
 北川孝氏は「新基準の収益還元法を考える」という課題で、アメリカのA.Iの「The Appraisal of Estate」の12版の考えと新基準を対比しながら、新基準がどう違うのか検討され、かつ自らの考えを述べられている。全額自己資金で求める収益還元法の価格と、借入金を加えた場合の収益還元法の価格では、後者の価格が前者の価格よりも高く求められることを認めるべきか否か問題提起されている。
 新基準に突然出てくる「借入金還元利回り」は、アメリカの前書の12版にあることを紹介している。このことを逆読みすると、今回の新基準はアメリカA.Iの鑑定基準の部分的とはいえ直訳導入なのか。データによる実証分析の裏付けも行わず、もっと砕けて言えば日本人での臨床実験も行わずに、アメリカで発売の新薬を日本で発売認可するごとくの部分があるというのか。

 堀田勝己氏は「改正鑑定基準に準拠した利回りの算定方法」の課題で、3つの還元利回りの求め方を紹介している。
 1つは統計的な分析で、重回帰分析を使って32のデータを7つの要因から還元利回りの求め方を説明する。
 2つ目はフアィナンス理論の応用による積み上げ法である。
     不動産の利回り=安全資産利回り+予想インフレ+不動産リスク
から成り立つとする。最も把握に難しい不動産リスクの分析にマコーヴィツの収益率、標準偏差でもとめようとする。このあたりは私には知識が無く分からない。
 3つ目は不動産投資インデックスの活用による方法である。個々の不動産収益率は投資インデックス等の指標に連動しているはずと仮定し、それらより求めようとする。複雑な数式が出てくると、もう私にはとても理解しがたく、各自論文を読んでそれぞれ勉強されたい。

 平澤春樹氏は「基準改正とともに周辺インフラの整備を」の課題で、鑑定理論の精緻化、手法の高度化がいくらされても、それを実行するには関係資料が必要である。しかしその資料であるデータベース、インデックス等が全くと言っていい位に整備されていなく、遅れていると説く。
 事例の守秘義務に関連して、平成14年3月7日の東京地裁の判決「東京都基準地価格は適正価格ではない」という判決を紹介し、事例比較中心主義の評価の限界を指摘する。
 そして新しい取引事例比較法を提案する。それは多くの事例を収集し、平均値、標準偏差等から、対象地の価格は同一地域の母集団のどの位置にあるかを検索し、分析して価格を求める方法であると論ずる。

 その他一般論文では、弁護士の山下真氏が「不動産鑑定書が情報公開される時代へ」という課題で、公的評価、国及び地方公共団体等による土地取得、売り払いの際にされる不動産鑑定書は全面公開される方向に基本的には進んでいると、裁判の判決例を示して論ずる。
 そして「鑑定評価書が公開され第三者の目にふれるかもしれないという緊張感が、鑑定の適正さを担保する大きな役割を果たす」と山下氏は説く。
 山下弁護士のこうした論文が登場するようになってきた事こそが、いよいよ不動産鑑定書の公開制が近づいてきたと言うことの何よりの証拠では無かろうか。

 その他5本の論文が掲載されている。

 『Evaluation』は日販、東販の大手書籍配本ルートに乗って、書店の店頭に並びますが、発行部数が少ないため、大都市の大書店にしか配本されないと思います。最寄り書店で注文するか、発行元のプログレスに電話(電話03-3341-6573)か、下記プログレスのホームページにアクセスして電子書籍販売で申し込んで下さい。電子販売申込みは簡単に出来ます。
 頒価は1500円+税です。

 なお『Evaluation』は企業からの広告を一切とらず、広告に頼らず発行していこうという編集方針で何とか頑張って居ます。不動産鑑定士がメデアを握った事は今迄にありませんでした。『Evaluation』は日本で唯一の、不動産鑑定の実務と価格分析を中心にして、不動産鑑定のレベルアップと鑑定文化の豊かさと奥深さを追求するために不動産鑑定士が発行している雑誌です。長く続けるために賛助会員・定期購読して頂けることを希望します。
 発行元へは右の「プログレス」名をクリックプログレス

フレーム表示されていない場合はこちらへ トップページ

田原都市鑑定の最新の鑑定コラムへはトップページへ

前のページへ
次のページへ

鑑定コラム全目次へ