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758)小売店売上高の土地価格への影響(前橋商業地)

 1ku当りの売上高1億円は、最高商業地価にどれ程の影響を与えるか。
 前橋市の最高商業地価で分析してみる。

 群馬県前橋市の商業地の一等地の平成23年の土地価格は、平成23年1月1日の地価公示価格によれば、下記のとおりである。

  地価公示価格 前橋5-2
  前橋市本町2丁目2番12号
  u当り  186,000円
  前橋駅850m
  SRC造10階建の敷地
  27m国道沿
  商業地 容積率600%
 
 上記地価公示地の平成22年1月1日の土地価格は、u当り200,000円であった。

 1年間で、

        186,000円  
            ───────   = 0.93                                
                200,000円

−7%下落した。

 平成22年の1年間に、前橋市内では2つの大きなショッピングセンターが閉店した。

 その2つのショッピングセンターの年間売上高は、

      イトーヨーカドー前橋店     46億円
      前橋サティ           64億円
        計             110億円

である。

 前橋の平成19年の小売業の売上高は商業統計調査によれば、

         36,892,330万円

であった。

 前橋の平成22年のデータは発表されていないことから、平成19年の売上高を使用する。

 平成23年の前橋の小売業の売上高は、

     3689億円−110億円=3579億円

ということになる。

 前橋の宅地面積は、57.43kuである。
 1ku当りの小売店舗の売上高は、平成22年は、

     3689億円÷57.43≒64.23億円

である。

 平成23年は、

     3579億円÷57.43≒62.32億円

である。

 ここで、土地価格をY万円とし縦軸にとり、1ku当りの小売店舗の売上高をXとして横軸にとる。

          A点(64.23,20)・・・・・・・平成22年
          B点(62.32,18.6)・・・・・・平成23年

 ABの2点を通る直線式が考えられる。
 その方程式を、

      Y=a+bX

とすると、上記AB点の数値より、

                         
            20=a+64.23b
    {  
      18.6=a+62.32b

の方程式がAB間に成立する。

 この方程式を解けば、

      b=0.733
      a=−27.08

である。即ち、

      Y=−27.08+0.733X・・・・・・・・(1)式

が求められる。但し Xの値が無限に下がる事はあり得ない。15%の1ku当りの小売店舗の売上高減が限界と考え、X>51 とする。

 (1)式より、例えば1ku当りの小売店舗の売上高が60億円になったとすると、(1)式のXに60を代入すれば、

     Y=−27.08+0.733×60=16.9

と求められる。土地価格はu当り16.9万円と求められる。

 前橋の小売店舗の1ku当りの売上高が60億円に減少すると、前橋の商業地の最高地価は、u当り16.9万円になると言うことである。

 (1)式より次のことがいえる。
 前橋の1ku当りの小売店舗の売上高が1億円変動すると、前橋の最高商業地の地価はu当り7330円変動する。

 上のごとく難しく考えずに、簡単に次のごとく考えてもよい。
 売上高が110億円減じた訳であるから、1ku当りの売上高減の金額は、

       110億円
           ──────  =  1.91億円                               
              57.43

である。

 土地価格はu当り20万円が18.6万円になったのであるから、0.93となり、−7%の減である。

        −7%
           ──────   = −3.66%                               
       1.91億円

 1ku当りの1億円の小売店舗の売上高減は、最高商業地価を−3.66%減すると言うことになる。

 先の方程式で売上高60億円となった例で験証してみると、1ku当りの小売店舗の売上高は、64.23億円が60億円になったから、減額の売上高は、

     60億円−64.23億円=▲4.23億円

である。

 1億円の売上高減で▲3.66%の地価減であるから、

     3.66%×4.23=▲15.48%

の土地価格減である。

 ここで土地価格はu16.9万円と求められている。

       16.9万円
          ──────  = ▲15.5%                                
       20万円

15.5%の土地価格減である。
 ほぼ同じ結果である。

 以上で、1ku当りの売上高1億円は、最高商業地価にどれ程の影響を与えるかについて、前橋市の最高商業地価で分析してみた。
 2010年11月12日発表の鑑定コラム706)で、
 「来年2011年(平成23年)3月末頃には、2011年1月1日時点の地価公示価格が発表される。
 来年1月1日にはu当り20万円の価格がどの様に変化しているのか。
 イトーヨーカドー前橋店と前橋サティの撤退が、商業地の土地価格にどれ程影響するのか見ていよう。」
と記したその分析回答である。


 現実の商業地の土地価格は、小売店舗の売上高の増減だけで形成されているものでは無い。歴史的商業地の形成要因、金融、社会要因等多くの地価形成要因が複合的に混交しており、上記分析のごとく単純ではない。

 しかしそれら他の要因の影響が全く無いものとして、小売店舗の売上高の増減要因のみで考えるとすれば、上記のごとくの影響力を考える事も出来よう。


  鑑定コラム706)
「前橋からイトーヨーカドー、サティが消えた」


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