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139)2003年12月30日夜NHKニュースのヘッドライン

 2004年最初の鑑定コラムです。

 2003年も押し迫った12月30日の夜7時の、NHKのニュースのトップニュースを見て驚いた。

 ヘッドラインのトップニュースは、牛どんの吉野家(吉野家ディー・アンド・シー)が、アメリカ・ワシントン州での狂牛病発生による牛肉の輸入ストップによって、2004年2月以降、牛丼の販売を止めるというニュースである。

 吉野家は、米国産牛肉を99%使用しており、在庫は1ヶ月程度しかない。狂牛病による牛肉の輸入禁止処置によって、2月以降は牛肉がなくなってしまうため、牛丼の販売を止めると安部修仁社長はテレビ会見で述べる。

 代替のオーストラリア産の牛肉では、現在と同じ味を出すことが出来ない。
 もしオーストラリア産の牛肉を使った場合、まずく、高い価格の牛丼を提供する事になってしまい、そうしたことは食品提供経営者のプロとして出来ないという気概を見せた。

 吉野家の牛丼の味は米国牛肉と、ある添加材をふんだんに加えて作られるようである。その添加材も味付けには重要であるが、素材の米国牛肉が欠かせないものであるようだ。

 自らの主力商品の販売を止めるということは、社長としての苦渋の決断であったに違いない。

 「早く、旨く、安く」の3つをモットーにする営業方針のうち、「旨く」がなくなっては、吉野家の名もすたろう。それを考えての決断ではなかろうか。

 私が吉野家の牛どん離れを一時したのは、煮込みの足りないタマネギと、味のしみこんでいなく、噛み切れない牛肉を食べさせられた時である。
 今は再び、時々カウンターに座って利用しているが、再びあのまずい牛丼は食べたくない。

 社長の決断は正しい方向であったかもしれないが、収入が落ち込むことが確実に見込まれる。経費削減が急務となる。守りの経営が要求される。

 その中で、とかく見落としがちになるのが、借りている店舗の賃料である。
 「賃料? そんなもの関係ない。」
と思ったら大間違いである。収入が無くても確実に支払わなければならない、出てゆく金である。積もり積もれば大変な金額になる。
 しかも経費項目の中で、経費削減の最も難しい部分のものである。
 賃料の減額交渉を家主と早急に始める必要があろう。

 たかが賃料と軽く考えてはいけない。

 製造業の企業経営者が、売上高に対して営業利益が4%有るから立派な経営をしていると考えていたら、それはとんでもない間違いである。

 工場の賃料は、製造業種・工場ごとに異なるが、平均すると製品売上高の4%である。(『民事再生法と資産評価』 p129 田原ほか共著 清文社 2001年)

 自社所有であるから賃料を払わなくて良いだけであって、製造工場を借りていたら、賃料として営業利益の4%など吹き飛んでしまうのである。
つまり企業は実質利益ゼロか、赤字経営と言うことになる。

 所有土地建物であるから営業利益が計上されているだけである。その金額は賃料相当の利益であるだけである。とてもそれが立派な経営といえるものではない。

 賃料の大切さが、これで少しは分かったであろうか。賃料を馬鹿にしてはいけない。

 経済事情の変動を原因とする賃料減額請求は、借地借家法で合法と認めている。
 BSEによる牛肉の輸入禁止による食材入手不可の状況は、吉野家という企業にとっては重大な経済事情の変動である。吉野家ばかりではない。日本という国にとっても大変な経済事情の変動の要因である。

 吉野家に店舗を賃貸している大家にとっては、家賃の減額はすんなりとは受け入れがたいことであるが、これまで、それなりの良い賃料を貰っていたであろうから、店子の危機の時には協力してくれるのではなかろうか。

 今まで攻めの経営を行ってきた吉野家が、一転守りの経営にならざるを得ない。
 牛どんを育て、それをラーメンと共に日本人の食文化の一つにしたのは吉野家であろう。

 本『鑑定コラム』の25) 「「牛どん吉野家の家賃6%」 の記事で、会社更生法から見事に立ち上がった姿の吉野家を書いた。
 吉野家に、それに匹敵するドラマが発生した。
 安部社長は、今度は経営者として、この危機を何とか乗り切って欲しい。

 大晦日の12月31日、東京の西郊外の国立の街を土地取引事例、建物賃貸事例を確認するためにさまよっていた。家賃の継続賃料の評価で、提出期限はもう20日間も過ぎてしまっており、依頼者には遅れて甚だ申し訳ないと謝り、正月に鑑定書を書き上げようと国立の街をうろついていたのである。
 鑑定の遅れの原因は、自分の仕事の段取りの悪さにあり、大晦日に仕事をしなければならない自分を、自身情けないと思っていた。

 曇りで雪こそ降っていなかったが、師走の寒気は厳しく、寒かった。暖かいものを食べて体を温めようと食べもの屋を捜していたら、おなじみの「吉野家」の看板が少し遠くに見えた。
 店までたどり着いた。
 店の入口の扉には、「12月31日〜1月4日まで休業」という張り紙がしてあった。
 「冗談じゃない。それはないだろう」と思わずつぶやいてしまった。年末・年始はかき入れ時ではなかったのか。
 テレビで安部社長の会見のニュースが流れたのは、前日の30日である。
 昨日の今日とはあまりにも手際良すぎるのではないかと思いつつ、がっかりして年末年始休業の張り紙のある吉野家を去り、もと来た道の国立駅の方向に戻った。


  鑑定コラム1237)「国立(くにたち)現象」

  鑑定コラム1233)「たかが賃料、されど賃料」

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