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1647)賃貸マンションの経費率

1.はじめに

 賃貸マンションを経営していく場合の、公租公課、維持管理費等の必要諸経費はどれ程であろうか。

 賃料収入に占める必要諸経費の割合について考察する。

2.必要諸経費とは

 必要諸経費とは、賃貸目的の不動産が賃貸収入を得るために必要とする諸経費をいう。収入に対応しないものは、経費にはならない。

 賃料の鑑定評価においての必要諸経費として『不動産鑑定評価基準』は、次の7つを規定している。


       イ,減価償却費
       ロ,公租公課
              ハ,修繕費
       ニ,管理費
       ホ,火災保険料
       ヘ,空室損失
       ト,貸倒引当金

 空室損失、貸倒引当金は、収入に対応するものでないことから、必要諸経費にはならないが、改正鑑定評価基準(26年改正鑑定評価基準国交省版P33)は、今回も経費として載せていることから、止むを得ず載せるが、実務の処理では、両項目ともゼロ円計上としている。

3.データ

 Jリートに賃貸マンションに特化した投資法人の一つとして、日本賃貸住宅投資法人(東京都港区新橋6丁目16番12号、山根正喜代表執行役員)がある。

 賃貸マンションに特化しているその投資法人の有価証券報告書のデータを援用して分析する。投資法人の決算は6ヶ月ごとである。

 日本賃貸住宅投資法人の平成28年3月期、9月期合算の総売上高は、160.7億円で、そのうち主力の賃貸料収入は、138.3億円である。

 ワンルームマンション、ファミリーマンションの賃貸が中心で、所有賃貸マンションの棟数等は、下記である。平成28年9月期末現在である。

         所有棟数      197棟
                  賃貸可能戸数    13,151戸
                  賃貸可能面積       532,423.84u
                  総資産              223,278百万円

4.日本賃貸住宅投資法人の売上高等

 投資法人の決算は、先に述べたごとく6ヶ月毎である。  直近の2期(平成28年3月期、平成28年9月期)の損益計算書より、事業収益と事業費用を記す。下記である。


  平成28年3月期 平成28年9月期 合計 賃貸料収入に対して
A 賃貸事業収益 千円 千円 千円  
賃貸料 6843661 6987641 13831302  
共益費 440454 458549 899003  
駐車場収入 293635 299700 593335  
附帯収入 56436 54469 110905  
その他賃貸事業収入 309536 333459 642995  
7943722 8133818 16077540  
         
B 賃貸事業費用        
物件管理委託費 470924 473821 944745 0.068
公租公課 446281 504610 950891 0.069
水道光熱費 156666 143163 299829 0.022
修繕費 309126 397175 706301 0.051
保険料 20067 19484 39551 0.003
営業広告費等 210566 215622 426188 0.031
信託報酬 98543 76473 175016 0.013
減価償却費 1668207 1715666 3383873 0.245
その他賃貸事業費用 74956 80653 155609  
3455336 3626667 7082003  
         
C 賃貸事業損益(A−B) 4488386 4507151 8995537  


5.各項目経費の売上高に対する割合

 必要諸経費の各項目費用の賃料収入に対する割合を求めてみる。

@ 物件管理委託費
 
                 944,745千円
             ───────── = 0.068                            
                13,831,302千円

A 公租公課
 
                 950,891千円
             ───────── = 0.069                            
                13,831,302千円

B 水道光熱費
 
                 299,829千円
             ───────── = 0.022                            
                13,831,302千円

C 修繕費
 
                 706,301千円
             ───────── = 0.051                            
                13,834,302千円

D 保険料
 
                 39,551千円
             ───────── = 0.003                            
                13,831,302千円

E 営業広告費
 
                 426,188千円
             ───────── = 0.031                            
                13,831,302千円

F 信託報酬
 
                 175,016千円
             ───────── = 0.013                            
                13,831,302千円

G 減価償却費
 
                 3,383,873千円
             ───────── = 0.245                            
                13,831,302千円

まとめると、下記である。

          物件管理委託費         6.8%
          公租公課               6.9%
          水道光熱費             2.2%
          修繕費                 5.1%
          保険料                 0.3%
          減価償却費            24.5%

 賃貸マンションの賃料収入に対する各項目経費の割合は、利用価値があると、私は思う。

 a  公租公課は6.9%であるから、土地の固定資産税・都市計画税が7%になったら、それは健全な賃貸マンション経営が出来なくなると判断される。

 6.9%は土地のほかに建物の公租公課も含まれていることから、土地だけの公租公課が賃料収入の7%になったら、その土地固定資産税の課税額はおかしいと云うことになろう。

 土地の固定資産税は高すぎるのでは無いのかと云って、区市の固定資産税課に対して、不服申立の有力な根拠資料になる。

 b 公租公課+水道光熱費

     公租公課   6.9%
          水道光熱費    2.2%
             計     9.1%
 
 公租公課と水道光熱費で、賃料収入の約10%である。

 所有の賃貸マンションの公租公課と水道光熱費は、所有者は分かるから、それを合算して、その合計の10倍が適正な賃料ということになる。

 もし、現行賃料が8倍とか8.5倍の水準であったら、増額請求出来る可能性があろう。

 c 修繕費は、賃貸収入の5.1%である。

 良く実質賃料をXとして、修繕費を0.03X等として計算している賃料鑑定書を目にする。

 実質賃料が分からなければ、修繕費が分からないというおかしな鑑定書である。賃料収入は分かるのであるから、それに5.1%を乗じれば、修繕費は求められる。

 何も実質賃料をXになぞとする必要性は無い。

 d その他の経費項目割合も利用価値が充分あると、私は思う。

6.経費率

@ 日本賃貸住宅投資法人の経費率

 売上高に占める必要諸経費の割合を経費率と呼ぶこととする。

 算式は下記である。

                    必要諸経費
                  ──────  = 経費率                          
                      売上高

 日本賃貸住宅投資法人の経費率は、平成27年10月1日〜平成28年9月30日までの2期、一年間の売上高等で計算すると、

                     7,082,003千円
                  ────────  = 0.440                       
                    16,077,540千円

44.0%である。

 必要諸経費は、減価償却費3,383,873千円が入っていることから、上記経費率は、減価償却費込の割合である。

 減価償却費を含めない必要諸経費の場合は、

                     3,698,130千円
                  ────────  = 0.230                       
                    16,077,540千円

23.0%である。

 日本賃貸住宅投資法人の減価償却前経費率は、23.0%と求められた。

A 著書『改訂増補 賃料<地代・家賃>評価の実際』の経費率

 2017年2月に発行した著書の『改訂増補 賃料<地代・家賃>評価の実際』(プログレス)のP99に減価償却費を含めた貸マンションの必要経費率を

                    貸マンション     0.35

としている。

 一方、P104で「総支出に占める必要諸経費の割合」として、貸マンションの必要諸経費を下記のごとく記している。

                        貸ビル    貸マンション    アパート

   減価償却費 0.355 0.521 0.610    修繕費   0.163 0.150 0.148    維持管理費 0.101 0.082 0.070    公租公課  0.359 0.225 0.155    損害保険料 0.017 0.018 0.014

 総支出の必要諸経費に占める割合は0.521である。減価償却費を除くその他の必要諸経費の割合は、

                        1 − 0.521 = 0.479

である。

 減価償却費を含めない経費率は、

                    0.35×0.479=0.1676≒0.17

17%である。

B 経費率

 賃貸マンションの減価償却費を含めない経費率として、

         日本賃貸住宅投資法人   23.0%
                  改訂増補の著書            17.0%

と同じ賃貸マンションの経費率として、大きな数値の違いが出て来た。

 これはどうしたことであろうか。

 両経費率を比較検討すると、改訂増補著書には含めていない項目が、日本賃貸住宅投資法人の必要諸経費には含まれている。

 それは日本賃貸住宅投資法人の必要諸経費には「物件管理等委託費」という費用項目が含まれている。

 これは投資法人の所有する賃貸マンションを実質管理しているのは、不動産会社であり、その不動産会社の費用である。

 投資法人は、実質的にはペーパー会社のようなものであって、所有賃貸マンションを自らが管理運営などしていない。それら運営は全て関連の不動産会社が行っている。

 日本賃貸住宅投資法人の場合は、株式会社シカリ・アセット・マネジメントという会社である。

 この「物件管理等委託費」が、1年間で、
 
              470,924千円+473,821千円=944,745千円

である。

 売上高に占める割合は、

                       944,745千円
                    ──────── ≒ 0.059                       
                      16,077,540千円

5.9%である。

 この割合を23.0%より減じると、

                        23.0%−5.9%=17.1%

17.1%となる。

 改訂増補著書の17%の割合に近い数値となる経費率の開差の原因はこれで分かった。

 賃貸マンションの管理運営は、マネジメント専門の不動産会社に管理委託する場合が最近多くなって来ている。

 このことを考えると、

                            17%〜23%

が妥当と思われる。


  鑑定コラム1638)
「賃貸マンションのレンタブル比」

  鑑定コラム1637)「建坪1uの賃料収入」

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