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1678)継続賃料利回りは期待利回りにはならない(その1)

 期待利回りと継続賃料利回りとは性質が異なり、違うことについて述べる。

 そして継続賃料利回りは、期待利回りにはなり得ないと云うことを、一部とはいえ裁判所鑑定人不動産鑑定士ですら分かっていないことを指摘したい。

 何故、裁判所鑑定人不動産鑑定士の鑑定例を取り上げるのかと云えば、裁判所鑑定人不動産鑑定士は、不動産鑑定士の中にあって、その力量を評価されて裁判所が選任しているのである。

 裁判所鑑定人不動産鑑定士はそれだけの経験に裏付けされた的確な判断を要求され、その判断の結果の与える影響が甚だ大きいためである。

 その一部の裁判所鑑定人不動産鑑定士が、責任の重大さを自覚せずに、間違った鑑定書を書いている。それによって訴訟の利害関係者は、甚だ迷惑している。

@ 期待利回りとは
 
 期待利回りは、新規賃料を求める利回りである。

 不動産鑑定評価基準(以下「鑑定基準」と呼ぶ)は、新規賃料を求める鑑定評価の章の積算法の節で、次のごとく規定する。

 「期待利回りとは、賃貸借等に供する不動産を取得するために要した資本に相当する額に対して期待する純収益のその資本相当額に対する割合をいう。(平成26年改正鑑定基準国交省版P32)

 鑑定基準は、「賃貸借等に供する不動産」と云っている。

 賃貸借等に供されている不動産とは云っていない。

 賃貸借等に供されている不動産とは、既に賃料が決定されて、賃貸借契約が継続している不動産と云うことになる。

 鑑定基準は、「賃貸借等に供する不動産」と云っていることは、これから新しい賃貸ビルを建てて賃貸借契約するとか、或いは既存ビルを賃貸借ビルにして新規に賃貸借契約を結ぶとか、新しい賃借人と新規に賃貸借契約を結ぶと云うことを示している。

 このことは、新規賃貸借契約を意味する。期待利回りは新規賃料を求める際に使用する利回りということである。

A 継続賃料利回りとは

 継続賃料利回りとは、賃貸借等に供されている不動産の純収益のその不動産の額に対する割合である。

 鑑定基準は、継続賃料を求める鑑定評価の章の利回り法の節で、次のごとく述べている。

 「継続賃料利回りは、直近合意時点における基礎価格に対する純賃料の割合を踏まえ、継続賃料固有の価格形成要因に留意しつつ、期待利回り、契約締結時及びその後の各賃料改訂時の利回り・・・・」(平成26年改正鑑定基準国交省版P34)

 上記引用で分かる如く、鑑定基準は、継続賃料利回りとはどういうものかをはっきりと定義していない。

 鑑定基準は、継続賃料利回りについて長々と述べているが、それは継続賃料利回りの決定方法を述べているものである。それを読んで継続賃料利回りとはどういうものかは理解し難い。
 
 鑑定基準は、継続賃料利回りについて、しっかりと定義づけすべきである。

 前記したごとく、「継続賃料利回りとは、賃貸借等に供されている不動産の純収益のその不動産の額に対する割合である。」というごとくの定義付けをすべきである。

 次回の鑑定基準改訂にあっては、継続賃料利回りの定義づけを強く望む。

B 家賃の期待利回りの間違い

 継続賃料(家賃)の争いにおいて、裁判所が任命した裁判所鑑定人不動産鑑定士の鑑定書が提出された。

 その鑑定書には、多々の間違いがあったが、その中の一つに期待利回りの間違いがあった。

 それは見過ごすことが出来ない間違いであった。

 裁判所鑑定人不動産鑑定士の期待利回りの求め方は、Jリートの投資法人が発表している20数件の投資建物の還元利回りを集め、その平均値を期待利回りとするものであった。
 
 Jリートの決算期は6ヶ月である。

 Jリートは6ヶ月の決算発表時に、所有する投資建物ごとの還元利回りを発表している。

       Aビル    4.5%
       Bビル    3.7%
       Cビル    5.2%
       Dビル    4.8%
        ・           ・
        ・           ・
        ・           ・

という如くである。
 
 この発表されているA,B,C・・・・・のJリート投資法人の賃料は、当該決算期の6ヶ月の内で、新築されて新規契約された賃料であるのであろうか。

 1、2件は、新築の新規賃料であるかもしれないが、残りの全ての物件が当該6ヶ月決算内に新規契約されたというものでは無かろう。

 数期前の当該投資法人の決算書を見れば、同じ物件のデータが記載されている。このことは価格時点で期待利回り算出で採用されているデータは、既賃貸借契約の継続賃料であるということになる。

 それから求められた還元利回りは継続賃料利回りであろう。

 その還元利回りの平均の利回りは、継続賃料利回りの性格を持つ利回りであろう。

 継続賃料利回りは、期待利回りになり得るのか。

 それは、「否」であろう。
 
 裁判所鑑定人不動産鑑定士の求めている割合は、継続賃料利回りであり、それを期待利回りと云うことは出来ない。

 専門用語は、それぞれ専門用語としての概念がある。当然使い場所も決められている。

 継続賃料利回りを期待利回りとすることは、専門用語の誤魔化しである。

 専門用語を誤魔化して賃料を求めている鑑定書には、信頼性は無いということになる。
 
 加えて、Jリートの還元利回りは、収益価格に対応する利回りである。

 積算賃料を求める積算法の積算価格に乗じる利回りではない。

 このことに関しては、鑑定コラム1104)「Jリートの還元利回りは賃料評価の期待利回りにはならない」と、鑑定コラム1302)「再度云う Jリートの利回りを家賃評価の期待利回りに使うな」で論じていることから省略する。

 上記裁判所鑑定人不動産鑑定士の家賃評価の期待利回りは、期待利回りという代物ではない。

 求められた賃料に正当性は全く無く、失当な賃料鑑定である。

 こうした賃料鑑定が裁判所鑑定人の鑑定として、判決で採用されては、甚だ迷惑する。大通りを大手を振って、そこ退けそこ退けと我が物顔して闊歩されては大変迷惑である。


  鑑定コラム1104)
「Jリートの還元利回りは賃料評価の期待利回りにはならない」

  鑑定コラム1302)「再度云う Jリートの利回りを家賃評価の期待利回りに使うな」

  鑑定コラム1682)「継続賃料利回りは期待利回りにはならない(その2)」


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