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1679)2017年千葉県不動産研究会の講演

 2017年8月22日に千葉市に行って来た。長い間工事中であったJR千葉駅は新しくなっていた。

 千葉県の不動産鑑定士の任意の団体である「千葉県不動産研究会」(会長藤田宗晴不動産鑑定士、幹事長佐藤元彦不動産鑑定士)から講演を頼まれたので、その講演のために千葉市に行って来た。

 千葉市内のビルの5階の小ホールに、50人程度の不動産鑑定士が参加されていた。

 千葉県内の不動産鑑定士を、50人も講演の聴講に集めるという「千葉県不動産研究会」は、もの凄い組織力を持つ団体のようである。

 会の目的は何かと聞くと、「不動産鑑定士の評価能力のレベルアップを図ることを目的にした会です」と云う。

 そして、「千葉県の裁判所の競売、訴訟鑑定を会員がしていますので、裁判鑑定について常に研鑽をする必要があり、賃料評価の講演を(私に)お願いした」という説明を受けた。

 講演の演題は、『家賃と地代の具体的な鑑定例』であった。

 午後1時半から4時半までの3時間の講演である。

 去年は、26年改正鑑定基準に伴う継続賃料について話した。

 その前年は、明渡立退料について講演した。

 今年は3年連続の講演である。

 昨年の講演に不参加の人もいるであろうと思い、昨年の講演の骨子を冒頭に話した。

 昨年の講話は前記したごとく、平成26年改正鑑定基準の中の継続賃料の部分について話した。

 1つは、更地価格の求め方が一部変更したこと。

 2つは、地代の新しい求め方として賃貸事業分析法の手法が取り入れられたこと。

 3つは、利回り法の継続賃料利回りについて、従前賃料合意時点の利回りを標準とすることから、踏まえてに変わったこと。

 4つは、利回り法の継続賃料利回りの決定事項の一つに、「期待利回り」が付け加えられたこと。

 この4つが、改正鑑定基準に取り入れられたが、そのいずれもが、私が以前から主張していたことであり、それが取り入れられたことは、我田引水であるが、喜ばしいことであると説明した。

 このことについては、鑑定コラムのいくつかに既に述べている。

 昨年の講演内容の復習を少し冒頭で述べた後、本題に入った。

 昨年は継続賃料について話したが、それは数値をあまり入れず、項目ごとの文言だけの話であったが、今年もその様な話では面白く無い。

 不動産鑑定士は、具体的例を出して説明したほうが理解が早いことから、今年は、私の家賃と地代の鑑定の初めから最後まで書かれている鑑定書例を提示して講演をすることにした。

 あまり生々しい鑑定書の内容をオープンにしたくはないが、個人情報に抵触する部分は削除し、かつ省くところは省くとして、鑑定書そのものを公開して、話す事にした。

 恐らく、家賃、地代の鑑定書はどういうものか、60頁余の講演レジュメを得、講演を聴いた人は、自分で賃料の鑑定評価する時には大変役にたつと私は思う。

 鑑定コラムで偉そうに記事を書いている不動産鑑定士田原拓治の地代、家賃の鑑定書とはどういうものかを100%知ることが出来る。但し、鑑定書はそんなに立派なものではない。甚だシンプルである。

 賃料に対する田原の考え方が、ストレートに具体的に分かることになる。

 鑑定書例を題材にして、重要な個所では、今迄私が裁判鑑定で経験した間違いの具体例を、その都度示して話した。

 話を聞く人は、どう考えると間違いになるのかがより分かったであろう。

 家賃の鑑定書は、新規賃料を求めてから継続賃料を求めるという流れになる。

 新規賃料は、積算賃料と比準賃料より決定することになる。

 積算賃料の話になると、どうしても基礎価格の概念を話さなければならなくなる。

 そうすると、国家試験合格後、不動産鑑定士になるための国交省認可の実務補習のテキスト(鑑定協会作成)は、借地上の賃貸ビルの場合、賃料の基礎価格を「借地権付建物」にしていたという歴史事実は話さざるを得なくなる。

 鑑定協会にとっては、あまりそれに触れて貰いたくないであろうが、被害者にとってはふざけるなと云いたくなる。事実は事実として認識しておかねばならない。

 借地の上に建つ貸ビルの賃料の増減額請求訴訟があった。私は貸ビル側から賃料評価の依頼を受けていた。

 東京地裁の裁判所鑑定人不動産鑑定士が、賃料算出の基礎価格を「借地権付建物」の価格として賃料鑑定する鑑定書が提出された。

 借地権割合を80%とすると、更地価格に0.8を乗じた価格が基礎価格になるのであるから、ここで既に家賃は20%程度減額されてしまうことになる。20%の減額は甚だ大きい。その様な大きな減額は殆ど無い。

 その様にして家賃が求められている裁判所の賃料鑑定は、間違っていると、私は猛反発した。

 すると、鑑定協会が実務補習テキストに誤った判断を記述し誤指導しているにも係わらず、鑑定協会が発表しているテキストの記述が正しくて、田原鑑定は間違っていると、鑑定人の考えに同調する相手側に立つある不動産鑑定士が、実務補習テキストを相手側代理人弁護士を通じて、証拠として裁判所に提出してきた。

 この提出された鑑定協会の実務補習テキストの証拠により、私は、相手側に立つ不動産鑑定士及び相手側代理人弁護士から、鑑定協会の判断が間違っていると主張する田原不動産鑑定士はとんでもない不動産鑑定士であると、裁判で激しく批判され、大変な精神的苦痛を味わわされた。

 私の依頼者からの不動産鑑定士としての信頼も、一時は失われようとした。

 そうした苦い経験を私に味わわさせておいて、そんなことは私達には関係ありませんと云って、間違った基礎価格の記述をテキストに書いておきながら、あわよくば逃げ切ろうとする鑑定協会を許すことは出来ないであろう。

 常に鑑定協会は間違ったことをしない、鑑定協会の考えは常に正しいんだと主張している態度の方がおかしいであろう。

 不動産鑑定士実務補習テキストにおける借地上の賃貸ビルの賃料の基礎価格の変遷について、簡単に下記にまとめる。


 ・2003年 (協会) 基礎価格は、「借地権付建物」である。

 この協会の考え方に対して、「協会は理論的には借地権付建物を基礎価格とテキストは言うが、その理論的そのものが間違っている」と真っ向から反対したのは、私である。(鑑定コラム133、鑑定コラム639)

 ・2010年 (協会)「 借地権付建物の基礎価格については、現況どおりに借地権付建物としての価格を基礎価格とする考え方のほかに、当該不動産の自用の建物及びその敷地としての価格を基礎価格とする考え方も実務上存在する。」

 鑑定協会は、私の主張を渋々認めたが、全面的には認めない。
 実務上は存在すると云って、あたかも理論的には私の主張は間違っているといわんばかりである。

 ・2016年 (協会)いつの間にか当該案件をテキストから削除してしまい無い。所有権土地上の貸ビルの賃料の求め方例に取り替えられている。

 このことから思うに、「借地権付建物」の賃料評価の基礎価格は、「自用の建物及びその敷地の価格」であるとする私の主張が、鑑定協会との論争で勝ったと云うことになろう。

 上記で述べた「借地権付建物」の価格は、賃料評価の基礎価格にならないと云うことについては、2017年2月に発行した『改訂増補 賃料<地代・家賃>評価の実際』(プログレス)P36に記されている。

 講演終了後の千葉県不動産研究会の幹部10数人(その人達と挨拶をして分かったのは、殆どの人が千葉県の地価公示価格評価の各分科会の幹事をやっておられる方ばかりであり、実質千葉県不動産鑑定士協会の幹部の人達が千葉県不動産研究会を運営されていると知った。佐藤元彦幹事長は、千葉県の地価公示価格の代表幹事と知って更に驚いた。)との懇親会は、酒は旨く、料理は美味しく、雑談も弾み、楽しい一時を過ごすことが出来た。

 千葉県不動産研究会の方々に感謝する。


  鑑定コラム1569)
「Evaluation60号記念論文 鑑定基準改正の重要点」

  鑑定コラム133)「借地貸ビルと所有地貸ビルで賃料に差があるのか」

  鑑定コラム639)「借地権付建物の基礎価格」


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