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1716)無接道画地の接道宅地価格に対する価格割合

1.はじめに

 無接道画地の鑑定評価において、求められた無接道画地の価格が、果たして市場性を反映している妥当な価格であるのか疑問を持つことがある。

 その疑問を解決する一つ方法について述べる。

2.無接道画地とは

 建物の敷地は、建築基準法の認定する道路に間口2メートル以上接しなければならないと、建築基準法43条で決められている。

 敷地画地が、上記道路に2メートル以上接していないと建物を建てることが出来ないということである。

 道路に接しない土地は、当然建物を建てることは出来ない。

 この建築基準法が認定する道路に接しない土地を「無接道画地」と呼ぶ。

3.無接道画地の価格の求め方

 無接道画地の鑑定評価の求め方にはいくつかの手法があるが、最も多く使用されているのが、建築基準法の認定する道路に接するように巾員4メートル等の巾の取付道路用地を買収する方法である。

 巾員4メートル等道路に接面した土地の土地価格を求めて、取付道路用地取得費を控除する方法である。

 取付道路用地取得の難易度に応じて価格修正して求める方法である。

4.国交省の『土地価格比準表』の求め方

 国交省の『土地価格比準表・七次改訂』(地価調査研究会編著 住宅新報社 平成28年6月1日七次改訂発行)の住宅地の個別要因の画地条件の個所で、「無道路地」求め方として次のごとく述べている。

 「現実の利用に最も適した道路等に至る距離等の状況を考慮し取付道路の取得の可否及びその費用を勘案して適正に定めた率をもって補正するものとする。」(P33、P45、P57)

と記す。

 「適正に定めた率を持って補正する」と云うが、その適正に定めた率はどれ程なのか。

 それが知りたくて国交省の『土地価格比準表・七次改訂』を購入し、見ているのであるが、それが記載されていない。

 肝心要の適正な修正率が記されていない。

 購入しても、役だたずの書物である。

 これでは無接道画地の価格を求めることは出来ない。結局自ら導き出さざるを得ない。

 恐らくその導き出した割合に対してああでもない、こうでもないとケチを付けて貶すことであろう。貶すことを目的としているのでは無かろうか。

 それでは、鑑定評価は一向に進歩しない。

5.無接道画地価格と接道宅地価格との価格割合

イ、分析の考え方

 そうした方法等で求めた無接道画地の価格が、適正であるかを確かめることが必要である。

 その有力な方法は、近傍類似の接道義務を果たしている宅地の価格と、無接道画地の価格との割合関係である。

 不動産の取引はいろんな条件の取引があるが、無接道画地の取引も多くは無いが、存在する。

 その無接道画地の取引事例を集めて、接道義務を果たしている宅地の価格との関係を分析してみれば、何らかの関係が認められるのではなかろうか。

ロ、事例収集地域

 分析の場所は、東京都下の市の住宅地とする。その当該市及び周辺の無接道画地の取引事例とした。

ハ、条件と算式

 無接道画地として道路巾員1m未満の画地も含むものとする。

 無接道画地の価格は、無接道画地の取引価格とする。

 接道している宅地の価格は、無接道画地の近くの相続税路線価を0.8で割った価格とする。路線価は平成29年度の価格とする。

 価格割合は、

 
           無接道画地の取引価格
                      ───────────                        
                        近傍推定更地価格
とする。

ニ、事例と価格割合

 収集した無接道画地の取引事例とその無接道画地が所在する場所に近くの道路に付設してある平成29年度の相続税路線価を調べる。

 その路線価を0.8で除した価格を、当該無接道画地の更地価格とみなす。

 更地価格に対する無接道画地の価格割合を、上記算式に当てはめて求める。

 そうして求めた無接道画地と価格割合は、下記である。

 
  a,国立市大字谷保字東之原   JR南武線谷保駅南東約400m
      平成28年3月    99u  
      道  路          巾員1.2m
      用途地域          1低専  80/40
      取引価格     u当り 76,000円
      近くの相続税路線価  u当り 175,000円
      更地価格     175,000円÷0.8≒219,000円

76,000円 価格割合 ───── ≒ 0.35 219,000円
  b,府中市分梅町1丁目 京王線分倍河原駅南西約300m 平成29年2月    346u   道  路 無 用途地域 1低専  100/50 取引価格     u当り 78,000円 近くの相続税路線価  u当り 260,000円 更地価格     260,000円÷0.8≒325,000円
78,000円 価格割合 ───── = 0.24 325,000円
c,府中市西府町2丁目 JR南武線西府駅北西約600m 平成28年1月    500u   道  路 無 用途地域 1中専  200/60 取引価格     u当り 100,000円 近くの相続税路線価  u当り 205,000円 更地価格     205,000円÷0.8≒256,000円
100,000円 価格割合 ───── = 0.39 256,000円
d,府中市片町2丁目 京王線分倍河原駅東方約300m 平成26年10月   104u   道  路 無 用途地域 1中専  200/60 取引価格     u当り 142,000円 近くの相続税路線価  u当り 275,000円 更地価格     275,000円÷0.8≒344,000円
142,000円 価格割合 ───── = 0.41 344,000円
e,国分寺市東恋ヶ窪5丁目 西武国分寺線恋ヶ窪駅南東方約250m 平成29年3月    1424u   道  路 無 用途地域 1低専  80/40 取引価格     u当り 80,700円 近くの相続税路線価  u当り 190,000円 更地価格     190,000円÷0.8≒238,000円
80,700円 価格割合 ───── ≒ 0.34 238,000円

 f,まとめ

 上記価格割合をまとめると、下記である。

              a,   0.35
              b,      0.24
              c,      0.39
              d,      0.41
              e,       0.34

平均 0.346≒0.35

ホ、無接道画地と接道宅地価格の価格割合

 上記分析から無接道画地の取引事例とその近くの接道条件を満たしている宅地の更地価格との関係割合を見ると、
                        0.24〜0.41
である。平均は0.346で、約35%である。

 接道宅地価格に対する無接道画地の価格割合は、都下の国立、府中、国分寺の地域にあっては、35%程度と分析される。

 更地価格の35%程度が無接道画地の市場価格ということである。

 この割合は、上記地域の取引事例より求められた割合であって、この割合が日本全国に適用される割合とは、他の地域の割合を分析していないことから私にはわからない。

 それぞれの地域には、又違った割合関係があるかもしれない。

 それぞれの地域で、上記と同じ分析方法で分析してみれば、その地域の割合が分かるであろう。

 上記35%の割合は、その地域が作っている市場を反映した価格割合である。

 無接道画地の価格評価する時には、この割合を無視することは出来無いであろう。

 それは、不動産鑑定基準は、不動産鑑定について次のごとく云っていることからである。

 「不動産鑑定評価とは、現実の社会経済情勢の下で合理的と考えられる市場で形成されるであろう市場価値を表示する適正な価格」(平成26年改正鑑定基準国交省版P3)であると云う。

 鑑定基準は市場性の価格反映について次のごとく云う。

 「鑑定評価の手法の適用、試算価格又は試算賃料の調整等における各種判断において反映すべきである。」(平成26年改正鑑定基準国交省版P20)

 鑑定評価の求める価格は、市場価値を表示する価格であると鑑定基準は云い、その市場性の要因は、価格の調整等において市場性を「反映すべき」と鑑定評価基準は云っている。

 市場性の要因は、価格に反映させなければならないのである。

 市場性を反映させるということは、それは不動産市場で売れる価格を求めよということである。

 不動産鑑定評価基準は、売れる価格を求めよと云っているのである。

 上記無接道画地の価格割合は、不動産市場で売買された価格であり、更地価格は、市場を充分反映している価格である。

 上記で求められている無接道価格割合は、市場性を充分反映した価格割合であることから、この割合を更地価格に乗じて求めた価格は、他の手法で求めた無接道画地の価格の適正さを担保する価格になると云えるのではなかろうか。


  鑑定コラム1883)
「京都市固定資産税務課しっかりせい 最高裁判決」

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