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1883)京都市固定資産税務課しっかりせい 最高裁判決

 京都市固定資産税務課しっかりしないか。

 接面道路条件で建物が建つか否かは、建築基準法で条件が決められている。

 建築基準法で建物が建たない土地を、税務課の勝手な判断で、建物が建つ土地と判断して、建物が建つ土地の評価額で固定資産税を徴収するものではない。

 土地の価格というものは、建物が建つことによって価値がでるものであり、建物の建たない土地の価値は、建物の建つ土地価格と比較すれば甚だ低い価格になる。
 
 その甚だ低い価格とはどれ程かと云えば、不動産鑑定理論誌の『Evaluation 66号』(プログレス 2018年4月15日発行)P86の「無接道画地の接道宅地価格に対する価格割合」の拙著論文で分析している。この論文の内容は、鑑定コラム1716)「無接道画地の接道宅地価格に対する価格割合」とほぼ同じである。

 その論文及びコラム記事では、無接道画地つまり建築基準法の道路に面しない土地の市場価値は、建築基準法の道路に面している土地の価格の0.35である。

 建物利用の土地は、巾員4メートル以上の道路に接しなければならない(建築基準法42条1項)。

 その道路とは、建築基準法が道路と認定する道路でなければならない。国道とか都道府県区市町村道と呼ばれる道路である。法施行時に巾員4メートル無い道路は特定行政庁の指定した道路、私道でも位置指定道路されている道路である。

 その中で、建築基準法42条1項3号は次のごとく規定する。

 「この章の規定が適用されるに至つた際現に存在する道」

という規程がある。建築基準法は昭和25年5月24日公布 昭和25年11月23日施行された。

 この施行以前に、巾員4メートル以上あり、建築物が立ち並んでいる道路であれば、その道路は建築基準法の道路となり、その道路に面している土地は建物が建てられる。

 京都市税務課は、建築基準法施行時に巾員4メートル無いにもかかわらず、建築基準法42条1項3号道路であるとして、その通路に接面する土地を高い価格に評価して固定資産税を課税していた。

 この固定資産税課税行為は、適正な価格の把握を間違えており、法律違反となる。

 最高裁判所第三小法廷は、平成30年7月17日に、上記案件の事件「平成28年(行ヒ)第406号 固定資産評価審査決定取消請求事件」を、原審である大阪高等裁判所に差し戻す破棄差戻判決を下した。

 その判旨は、「本件街路が3号道路に該当するための要件を満たすか否かは明らかでないとしながら,本件道路判定がされていること等を理由に,建築確認を受けることができないために本件各土地上に建築物を建築することができない事態となる可能性はないとして,本件街路が3号道路に該当することを前提とする本件登録価格の決定は適法であるとした原審の判断には,固定資産の評価等に関する法令の解釈適用を誤った違法がある。」

 この事件名を、「京都市固定資産税3号道路事件」とでも付けておこうか。

 この「京都市固定資産税3号道路事件」の最高裁判決は、最高裁平成24年(行ヒ)第79号同25年7月12日第二小法廷判決で示された「土地の基準年度に係る賦課期日における登録価格が評価基準によって決定される価格を上回る場合には,同期日における当該土地の客観的な交換価値としての適正な時価を上回るか否かにかかわらず,その登録価格の決定は違法となるものというべきである」から導かれた判決である。

 最高裁平成24年(行ヒ)第79号同25年7月12日第二小法廷判決とはどういうものかと云うと、それは固定資産税の車返団地事件と呼ばれる判決である。

 この固定資産税の車返団地事件の判決は、判決当時、私は「不動産鑑定士の多くは気付いていないが、この判決は今後固定資産税の課税評価に多大な影響を与える判決である。」(鑑定コラム1101)と述べたが、案の定最高裁がそれを使用して京都市固定資産税務課の評価に厳しい判決を下した。

 最高裁の車返団地事件判決は、行政事件提訴の垣根を低くした。そして住民側勝訴の可能性を高くした。

 固定資産税務課の職員は、建築基準法の勉強が必須となった。

 建物が建たない土地を建物が建つ土地として課税することは、それ自体が法律違反である。それを住民から指摘されたら、すぐ税額訂正した方が良い。

 役所のメンツなどにこだわって間違いではないと言い張らず、課税の訂正に応じた方が良い。

 裁判になったら、今迄は役所は間違ったことをしないという予断を裁判官は持っていて、役所側勝訴の判決を出していたが、最高裁の車返団地事件判決がだされてからは、裁判官の考えが変わり、建築基準法違反の課税は法律違反の判決が出されることになってきた。つまり前記したごとく行政裁判の垣根が低くなってきているのである。

 固定資産税務課の職員は、建築基準法がいつ施行されたかの期日認識を持ち、建築基準法42条、43条を、しっかりと勉強する必要がある。

 日本全国の市町村の固定資産税の課税評価には、まだまだ不適正な価格評価があるものと思われる。市町村の固定資産税務課は、自らの仕事内容を見直しする必要があろう。

 そして固定資産評価審査委員会は、名誉職のお飾りの委員会の存在で無く、適正な課税を監視する委員会でなければならない。不動産鑑定士を委員の一人に入れ、固定資産税の適正価格に目を光らせる必要があろう。

 下記に、「京都市固定資産税3号道路事件」と名付けた平成30年7月17日最高裁判所第三小法廷の判決を転載する。

****


 平成28年(行ヒ)第406号 固定資産評価審査決定取消請求事件
 平成30年7月17日 第三小法廷判決

 主 文

 原判決を破棄する。
 本件を大阪高等裁判所に差し戻す。

 理 由

 上告代理人豊田幸宏,同田篭明の上告受理申立て理由について

1 本件は,京都市所在の4筆の土地に係る固定資産税の納税義務者であったAが,上記の各土地につき,京都市長により決定され土地課税台帳に登録された平成21年度の価格を不服として京都市固定資産評価審査委員会(以下「本件委員会」という。)に対し審査の申出をしたところ,これを棄却する旨の決定(以下「本件各決定」という。)を受けたため,上告人(Aは,第1審係属中に死亡し,Aの子である上告人が本件訴訟を承継した。)が,被上告人を相手に,本件各決定の取消しを求める事案である。

2 原審の確定した事実関係等の概要は,次のとおりである。

(1)ア 地方税法349条1項は,土地に対して課する基準年度の固定資産税の 課税標準を,当該土地の基準年度に係る賦課期日における価格で土地課税台帳又は土地補充課税台帳に登録されたもの(以下,これらの台帳に登録された価格を「登録価格」という。)とする旨規定し,同法403条1項は,市町村長は,同法388条1項の固定資産評価基準によって固定資産の価格を決定しなければならない旨規定する。平成21年度は上記の基準年度であり,これに係る賦課期日は平成21年1月1日である。

イ 固定資産評価基準(昭和38年自治省告示第158号。以下「評価基準」という。)は,第1章第3節において,主として市街地的形態を形成する地域における宅地については,市街地宅地評価法によって各筆の宅地について評点数を付し,これを評点1点当たりの価額に乗じて,各筆の宅地の価額を求めるものとしている。市街地宅地評価法は,@状況が相当に相違する地域ごとに,その主要な街路に沿接する宅地のうちから標準宅地を選定し,A標準宅地について,売買実例価額から評定する適正な時価を求め,これに基づいて上記主要な街路の路線価を付設し,これに比準して主要な街路以外の街路(以下「その他の街路」という。)の路線価を付設し,B路線価を基礎とし,画地計算法(評価基準別表第3)を適用して各筆の宅地の評点数を付設するというものである。
 このうち,その他の街路の路線価は,近傍の主要な街路の路線価を基礎とし,主要な街路に沿接する標準宅地とその他の街路に沿接する宅地との間における街路の状況,公共施設等の接近の状況,家屋の疎密度その他の宅地の利用上の便等の相違を総合的に考慮して付設するものとされている。また,画地計算法として,無道路地等に関する評点算出法が定められている。

ウ 被上告人が策定した「平成21年度京都市固定資産評価要領(土地編)」(以下「京都市評価要領」という。)は,土地の評価は評価基準に基づいて定めた京都市固定資産評価要綱に基づいて行うものとするが,適正な評価の均衡を確保するため,具体的な評価に当たっては,この要領により取り扱うものとするとした上,市街地宅地評価法におけるその他の街路の路線価については,地域の地価形成要因を数量化した「京都市土地価格比準表」,「京都市細街路等に係る建築制限等に基づく価格補正率表」(以下「細街路等補正率表」という。),「京都市通路等に係る土地利用規制に基づく価格補正率表」(以下「通路等補正率表」という。)等を活用し,主要な街路の路線価に当該主要な街路とその他の街路との間における各種の価格形成要因等の相違の程度に応じて求められる格差率を乗じて,各街路の路線価を付設するものとしている。なお,建築基準法43条1項本文は,建築物の敷地は道路に2m以上接しなければならないとし,同法42条が道路の定義を定めている(以下,同条に規定する道路を「42条道路」という。)ところ,京都市評価要領において,「細街路等」とは,幅員が4m未満の行き止まり街路又は建築物の建築許可を受けるために同法43条1項ただし書の規定による許可を得る必要のある街路(42条道路又は通路等を除く。)をいい,「通路等」とは,幅員1.8m未満の街路,沿接する画地において単独で建築物の建築許可を受けることが困難な画地に接する街路又は京都市都市計画局建築指導部建築指導課(以下「建築指導課」という。)に備付けの道路縦覧図において避難通路とされているもの(42条道路を除く。)をいうものと定められている。そして,細街路等補正率表及び通路等補正率表は,当該街路の幅員や通り抜けの可否等に応じ,90%から36%までの補正率を定めている。

(2)ア Aは,平成21年1月1日当時,第1審判決別紙物件目録2から5まで記載の各土地(以下「本件各土地」といい,個別の土地をいうときは,同目録の番号により「本件土地2」,「本件土地3」などという。)の所有者であり,これらに係る固定資産税の納税義務者であった。本件各土地は,駐車場として利用されている一団の土地である。

イ 京都市長は,ある道が42条道路に該当するか否かについて判定の依頼があったときは,これを調査した上で判定(以下「道路判定」という。)をし,建築指導課は,道路判定の内容を道路縦覧図に表示している。京都市長は,平成18年11月8日,本件各土地の西側に接する街路(以下「本件街路」という。)について,建築基準法42条1項3号所定の道路(以下「3号道路」という。)に該当する旨の道路判定(以下「本件道路判定」という。)をした。 なお,本件街路が3号道路に該当するためには,本件街路が所在する区域について同法第3章の規定が適用されるに至った昭和25年11月23日時点で,本件街路が幅員4m以上の道として存在したことが必要である。

ウ 京都市長は,本件各土地の平成21年1月1日における価格を次のとおり決定し,土地課税台帳に登録した(以下,これらの価格を併せて「本件登録価格」という。)。
 本件土地2 670万0100円
 本件土地3 1125万2500円
 本件土地4 4760万4500円
 本件土地5 887万3800円
 京都市長は,本件登録価格を決定するため,市街地宅地評価法により本件各土地の価額を算出したところ,その他の街路である本件街路の路線価を付設するに当たり,細街路等補正率表及び通路等補正率表所定の補正率を用いた補正をしなかった。

エ Aは,平成21年5月25日,本件委員会に対し,本件登録価格を不服として審査の申出をしたが,本件委員会は,同24年1月6日付けで,同申出を棄却する旨の本件各決定をした。

オ 上告人は,本件街路が昭和25年11月23日時点で道として存在したとしても,その幅員は4m以上ではなかったから,本件各土地の価額については,本件街路が3号道路に該当しないことを前提に算出されるべきであると主張している。

3 原審は,上記事実関係等の下において,本件各土地の価額は市街地宅地評価法により算出されるべきであるとした上,要旨次のとおり判断して,上告人の請求を棄却した。
 昭和25年11月23日時点で本件街路の幅員がどの程度であったかは明らかでないものの,本件道路判定は相応の根拠の下に本件街路が3号道路に該当する旨の判定をしたものであって,その結果,建築確認等は,これを前提として行われることとなるから,本件各土地が42条道路に接しないとして建築確認を受けることができないためにその上に建築物を建築することができない事態となる可能性はない。したがって,本件街路が3号道路に該当することを前提とする本件登録価格の決定は適法である。

3 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。

(1) 本件各決定は,本件登録価格の決定に違法はないとして,これに係る上告人の審査の申出を棄却したものであるところ,土地の基準年度に係る賦課期日における登録価格が評価基準によって決定される価格を上回る場合には,同期日における当該土地の客観的な交換価値としての適正な時価を上回るか否かにかかわらず,その登録価格の決定は違法となるものというべきである(最高裁平成24年(行ヒ)第79号同25年7月12日第二小法廷判決・民集67巻6号1255頁)。

(2) 42条道路に接しない土地の上に建築物を建築することについては,建築基準法43条1項本文所定の接道義務に違反するものとして,建築主事又は指定確認検査機関(以下「建築主事等」という。)の建築確認(同法6条,6条の2)を原則として受けることができず,これを受けるためには,特定行政庁の許可(同法43条1項ただし書)を受けること等が必要となる。42条道路に接していない土地は,このような利用上の制約があることから,42条道路に接している土地に比べて,一般的にその価額は低下するものと考えられる。 そして,評価基準は,市街地宅地評価法において,その他の街路の路線価を付設するに当たり,街路の状況等を総合的に考慮すべきものとするほか,画地計算法として無道路地等に関する評点算出法を定めている。
 そうすると,評価基準は,土地の価額の算出に当たり,接道義務に関する当該土地の利用上の制約の有無及び程度を反映するため,これが街路に接しているか否か,接している場合には当該街路が42条道路に該当するか否かについても考慮すべきこととしているものと解される。また,京都市評価要領は,このことを受けて,市街地宅地評価法におけるその他の街路の路線価の付設に際し,当該街路が42条道路に該当しない細街路等又は通路等である場合には,その利用上の制約の程度に応じた補正をすべきこととしたものであるということができる。

(3)ア 建築基準法42条1項3号は,同法第3章の規定が適用されるに至った際現に存在する道で,幅員4m以上のものを道路とする旨定めている。これは,客観的にこれらの要件を満たす道については,そのことのみをもって当然に42条道路とする趣旨であると解される。そして,ある道が3号道路に該当するか否かについて,市町村長等がその判定をする法令上の根拠も見当たらない。
 そうすると,3号道路該当性に関する京都市長の道路判定は,事実上の確認行為にすぎないというべきであり,当該道が3号道路に該当し,又は該当しないことを確定する効果を持つ行政処分の性質を有するものではないと解される。

イ 被上告人においては,道路判定の内容が道路縦覧図に表示され,建築確認に際しては,その運用上,上記の表示等をも参照して,当該道が3号道路に該当するか否かの判断がされていることがうかがわれるが,上記のような道路判定の性質に照らせば,当該道の3号道路該当性につき,建築主事等が道路判定と異なる判断をすることを妨げられるものではない。そして,本件街路が3号道路に該当するか否かは,昭和25年11月23日時点で本件街路が幅員4m以上の道として存在した事実が客観的に認められるか否かにより定まる以上,このような事実が認められず,本件街路が3号道路に該当するということができない場合には,本件道路判定がされていても,建築主事等は,本件各土地が3号道路に接していることを前提とした建築確認をすることはできない。

ウ したがって,本件街路が3号道路に該当するための要件を満たすか否かは明らかでないとしながら,本件道路判定がされていること等を理由に,建築確認を受けることができないために本件各土地上に建築物を建築することができない事態となる可能性はないとして,本件街路が3号道路に該当することを前提とする本件登録価格の決定は適法であるとした原審の判断には,固定資産の評価等に関する法令の解釈適用を誤った違法がある。

5 以上によれば,原審の上記判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨はこの趣旨をいうものとして理由があり,原判決は破棄を免れない。そして,本件街路が3号道路に該当すると認められるか否か,本件登録価格が評価基準によって決定される本件各土地の価格を上回らないか否か等について更に審理を尽くさせるため,本件を原審に差し戻すこととする。
 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。

 (裁判長裁判官 林景一 裁判官 岡部喜代子 裁判官 山崎敏充 裁判官 戸倉三郎 裁判官 宮崎裕子)


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