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383)公定歩合(基準割引率及び基準貸付利率)と一時金運用利回り

 不動産鑑定評価で、貸ビルの預かり金である保証金・敷金の一時金の運用利回りを、2007年の現在において4%とする不動産鑑定評価について、私はおかしいではないかと疑問を呈した。

 それは、不動産鑑定評価は、現実の経済活動・状況を反映したもので無ければ存在価値の意味が無いものであると私は思っているから、疑問を呈したのである。

 世間一般は、不動産鑑定評価に対して現実の経済活動・状況から遊離した価格を求めていない。

 例えば、土地価格を求めるには、取引事例比較法というものがある。
 その手法は、価格時点に出来るだけ近い現実に取引された土地価格より、現実の土地価格上昇率で修正、地域比較等して土地価格を求めている。

 土地価格が下落しているのに、年率30%の地価上昇しているとして土地価格を求めることなどしない。

 また10年前の取引事例を持ってきて比較して土地価格を求めることなどしない。

 この行為は何故かといえば、それは現実の経済活動・状況に基づいて不動産鑑定を行わなければならないと認識しているからである。

 しかるに、保証金・敷金の預かり金の運用利回りになると、途端に何故か分からないが、現実から遊離した4%の利回りを持って来る。
 この論理の矛盾にどうして気づかないのであろうか。

 現在の公定歩合(基準割引率及び基準貸付利率)は、0.75%である。
 これに1%程度の運用益相当の利率を加算すれば、
       0.75%+1%=1.75%
となる。

 この利回り数値は、ほぼ国債の市場利回りに相当する。
 日本銀行発表の東証上場10年国債流通利回りは、下記の通りである。

      2007年6月   1.865%
      2007年7月   1.79%
      2007年8月   1.60%

 不動産鑑定評価基準は運用利回りについて、
 「長期預金の金利、国債及び公社債利回り、金融機関の貸出金利等を比較考量して決定するものとする。」
と述べる。

 この中で、「金融機関の貸出金利」については高金利のものもあり、また貸ビル事業者が預かり金の保証金・敷金を他人に貸し付けることが一般的に行う行為であるとは思われなく、金融機関の貸出金利を運用益の利回りに採用することは避けるべきと私は考える。

 不動産の価格は最有効使用によって決まるものであるが、その最有効使用は特別な能力を持つ人が考える使用でなく、一般の普通の人が考える標準的な使用方法を言うのである。

 土地価格の最有効使用の使用方法が、一般人の標準的な使用を考えているのであることを考えれば、保証金の運用利回りも一般人の標準的な使用による利回りを採用すべきであろう。

 現在の公定歩合(基準割引率及び基準貸付利率)が0.75%である時に、4%という利回りを運用出来るということは、特殊な能力を持った人でないと出来ないことでは無かろうか。

 保証金・敷金の運用利回りは、国債及び公社債の流通利回り程度が適切な採用利回りと私は考える。

 現時点の評価の場合には、国債の流通利回りは把握出来るが、過去時点の評価の場合に、どの程度の運用利回りが良いのか戸惑う場合が多い。

 同一不動産鑑定書の中において、現時点の運用利回りを2%として、バブル経済時の運用利回りも2%としている不動産鑑定書にお目にかかることもある。

 この不動産鑑定書を見て、第三者から、或いは弁護士から
 「不動産鑑定士は何を考えているのか。
 世間オンチも甚だしい。
 バブル経済時と現在とどうして運用利回りが同じなのだ。
 バブル経済時の公定歩合を知っているのか。
 公定歩合よりも低い運用利回りなぞ、運用利回りといえる代物か。」
という批判を浴びることになるであろう。
 この批判にどの様に、当該不動産鑑定士は答えるであろうか。

 過去の運用利回りを決定する場合には、当該過去の公定歩合に1〜2%の利率を加えたものが、その当該過去時点の運用利回りとするのが良いではなかろうかと私は思う。

 下記に日本銀行が発表し、使用してきた公定歩合の一覧を記す。

 日本銀行は、2006年8月11日に『「公定歩合」に関する統計の名称変更』を発表した。
 それは次の様な内容のものである。

 公定歩合は、日本銀行が各金融機関に直接資金を貸し出す時の基準金利を言うのであったが、公定歩合の性格が、1994年の金利の自由化とそれに伴って、2001年から金融市場調節の操作目標である「無担保コールレート」の上限の金利という政策金利の要因を持つものに変態したため、「公定歩合」という呼称を止め、「基準割引率及び基準貸付利率」と呼ぶ様になった。

 即ち政策金利の上限の金利というものに内容が変わったのである。
 ここで少し注目すべきことは、「基準割引率」と「基準貸付利率」とは同じ利率であると言うことである。

 説明が長くなったが、下記に公定歩合(基準割引率及び基準貸付利率)の一覧を記す。

 この金利に1〜2%(低い金利の場合は+1%、高い金利の場合は+2%)程度を加算したものが、保証金・敷金の運用利回りとすることが良いと私は判断する。

実施年月日 基準割引率及び基準貸付利率(公定歩合)%
 昭和48(1973)年 4月 2日 5.00
5月30日 5.50
7月 2日 6.00
8月29日 7.00
12月22日 9.00
50(1975)年 4月16日 8.50
6月 7日 8.00
8月13日 7.50
10月24日 6.50
52(1977)年 3月12日 6.00
4月19日 5.00
9月 5日 4.25
53(1978)年 3月16日 3.50
54(1979)年 4月17日 4.25
7月24日 5.25
11月 2日 6.25
55(1980)年 2月19日 7.25
3月19日 9.00
8月20日 8.25
11月 6日 7.25
56(1981)年 3月18日 6.25
12月11日 5.50
58(1983)年10月22日 5.00
61(1986)年 1月30日 4.50
3月10日 4.00
4月21日 3.50
11月 1日 3.00
62(1987)年 2月23日 2.50
平成 1(1989)年 5月31日 3.25
10月11日 3.75
12月25日 4.25
2(1990)年 3月20日 5.25
8月30日 6.00
3(1991)年 7月 1日 5.50
11月14日 5.00
12月30日 4.50
4(1992)年 4月 1日 3.75
7月27日 3.25
5(1993)年 2月 4日 2.50
9月21日 1.75
7(1995)年 4月14日 1.00
9月 8日 0.50
10(1998)年 4月 1日 0.50
13(2001)年 1月 4日 0.50
2月13日 0.35
3月 1日 0.25
9月19日 0.10
18(2006)年 7月14日 0.40
19(2007)年 2月21日 0.75


(追記) 2008年12月4日

 日銀は、基準割引率及び基準貸付利率を、平成20年(2008年)10月31日に0.50と変更した。

(追記)

 日銀は、基準割引率及び基準貸付利率を、平成20年(2008年)12月19日に0.30と変更した。


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