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41)田の還元利回り4.2%

 コメの卸売価格が下落している。(日経2002.7.4)
 宮城産ひとめぼれ60sが15,200円、秋田産あきたこまちが16,000円の価格である。

 財団法人日本不動産研究所が『田畑価格及び小作料調』(発行者中島康典同研究所研究部長)という調査報告書を発行している。
 その平成13年(2001年)3月調査によれば、10a当りの田の小作料は全国平均で16,547円である。

 コメの収穫量は土質、気候、耕作条件、地域等によって異なっている。反当り5俵の田もあれば10俵の田もある。
 各農地耕作者は、自分の田の収穫量がどの位か必ず把握しているが、一応、反8俵の収穫量とする。

 反とは10aである。一俵とは60sの米を指す。
 コメの卸売価格は60s、16,000円とする。

 これより反8俵の田の収入は、
    16,000円×8 = 128,000円
である。

 小作料は10a当り16,547円であるから、収入に対する小作料の割合は、
    16,547円÷128,000円=0.129≒0.13
13%である。

 年間小作料10a当り16,547円は安い金額と思われるかもしれないが、コメの収穫に対する割合は13%であり、収穫より見ると安い金額とは言えなくなる。

 このコメ収入に対する小作料の割合13%と、借地の地代とその借地上に建つ建物の家賃との割合関係とは、一致はしないが、近似した割合を示すのに出くわす。

 最近2件の地代の評価を行った。
 その適正地代とその借地上の建物の家賃は次のごとくであった。

         地代(年間)      家賃(年間)     地代/家賃
  評価A 241.2万円 1,907万円 0.126
  評価B 215.2万円 1,482万円 0.145
 家賃に対する地代の割合は12.6%と14.5%であった。上記コメ収入に対する小作料の割合13%に近似した割合である。

 コメ収入と小作料の関係は、家賃と地代の関係の原型か。

 コメ収入と小作料そして地代と家賃の間には、目には見えない市場の経済原理が働いているのでは無いだろうかと思いたくなる。
 地代と家賃の間の経済法則性を見つけ出せそうだ。

 話を田に戻す。
 前記研究所は同じ報告書の中で田の価格も発表している。

 全国平均の田(普通品等)の価格は10a当り1,055,418円である。
     田の収入÷田の価格=田の粗利回り
とすると、田の粗利回りは、
  128,000円÷1,055,418円=0.121
12.1%である。

 農林水産省が『平成12年農業組織経営体経営調査』(平成13年12月発行)という調査報告書を発表している。

 経営規模の大きい農業経営体の農業経営の統計調査であるが、その中の「任意経営体」の稲作経営についての稲作所得率は34.5%である。

 稲作所得率とは、
     稲作所得÷稲作収入=稲作所得率
である。

 稲作所得とは、
     稲作収入−稲作経営費=稲作所得
である。

 稲作経営費とは、種苗費、肥料費、農薬費、修繕費、光熱動力費、賃借料、販売経費、租税公課、負債利子、雇用労賃、支払地代、その他費用、減価償却費(任意経営体の場合計上) である。

 これより稲作経営費率は、
    1−稲作所得率=1−0.345
           = 0.655
と求められる。

 この割合を採用して、田の還元利回りを求める。

 田の粗利回りは12.1%であったから、田の還元利回りは、
    12.1%×(1−0.655)=4.17%
             ≒4.2%
4.2%である。

 田の土地還元利回りは4.2%と求められた。

 これがコメ主食の日本の土地の基本還元利回りであり、住宅地の還元利回り、商業地等の還元利回りは、この還元利回りから発生変化して形成されているのではないだろうかと私は考える。

 一方、同研究所の同じ報告書で市街化調整区域の田(普通品等)の平均価格は10a当り5,181,310円と報告されている。
 この市街化調整区域の田の価格と、前記普通田の平均価格との価格差があまりにも大きい。
 田でも2つの平均価格が存在するようである。両者がどう違うのかはっきりと分からない。

 田は農用地であるからほとんど市街化調整区域にあるものと思っていたが、都市計画区域の指定のある市街化調整区域の中の田と、都市計画区域の指定の無い地域の中の田があるようである。その2つの地域の田の価格は大幅に異なる。

 市街化調整区域という都市計画区域にある田と都市計画区域の地域指定の無い地域にある田とでは、前者の田の価格は後者の4.9倍程度高いと言うことである。

     5,181,310円÷1,055,418円≒4.9倍

 市街化調整区域内の田の価格が10a当り5,181,310円ということは、平方メートル当たり5,181円、坪当たり約1.7万円と言うことになる。
 この価格はかなり宅地の価格水準に近い。
 農用地の価格とは言い難い。

 前記で求められた4.2%の田の還元利回りは、都市計画区域の地域指定の無い地域の田の還元利回りであるから、市街化調整区域にある田の還元利回りは、
     4.2%×(1÷4.9)≒0.86%
と言うことになる。
 しかし、この還元利回りを純農用地の田の還元利回りとは言い難い。
 

 なお家賃と地代に関する記事の一部として、鑑定コラムには次のものがあります。


  鑑定コラム226)「家賃より地代を求める家賃割合法」

  鑑定コラム244)「東京周辺の県庁所在地の、ある商業地の地代」

  鑑定コラム882)「北海道15.1%、新潟7.9%、滋賀4.1%、熊本4.4%(田の利回り)」

  鑑定コラム1127)「花嫁はお米3俵と伴に」

  鑑定コラム1276)「魚沼産コシヒカリが2万円を切った」

  鑑定コラム1545) 「2016年産米は高くなりそうだ」

  鑑定コラム1676) 「ある大学の不動産鑑定の期末レポート課題」

  鑑定コラム1973)「一人当り年間お米消費量 2018年は53.8kg」/a>


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