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415)まさか杞憂の予測が的中するとは

 2008年3月14日の日本経済新聞は、一面のトップ記事の2番手記事として、東京都北区にある滝野川信用金庫の金融支援というショッキングな見出しの記事を載せる。

 これは日経のスクープか。

 自己資本比率が4%を切ることの確実性が高まったため、信金中金に資金導入の支援を滝野川信用金庫が要請したという内容の記事である。

 滝野川信用金庫の業績悪化の原因は、日経の記事によれば、「有価証券投資の失敗だ。サブプライム問題をきっかけに保有する有価証券の価値は大幅に低下」したことが原因という。

 加えて記事は、サブプライム問題によって経営がおかしくなった金融機関は、日本では滝野川信用金庫が初めてという。

 つまり、サブプライムローン問題が日本の金融機関に大きく影響を与えている事実と、それが半端な軽微な影響では無く、当該金融機関の存続を左右するほどまでの重大な事態の影響ということを伝えるのである。

 滝野川信用金庫の平成19年3月期の決算書を見ると、資産として保有する有価証券は、国債・地方債・社債・株式のほかに、「その他の証券」の項目がある。

 その他の証券とは、「外国証券とその他の証券」であり、その期末残高は1961億円である。
 この金額を、国債・地方債等の保有残高と較べると、その保有残高は桁違いに多い金額である。

 この「その他の証券」が、サブプライムローン証券を含んだ金融商品であり、その市場価格の下落によって、約400億円の損失の発生が生じ、信金中金に金融支援を仰いだものと思われる。

 滝野川信用金庫の19年3月期の経常利益(金融機関の損益計算書は特殊であり、経常利益が一般会社で言う営業利益に相当するのではないかと思われる)は、53億円であった。

 それが1年後には、約400億円の損失が予想される事態になったのである。

 サブプライムローン問題については、表面化した時、「日本の銀行にはそのような高度な金融商品を作り上げる能力は無く、出回っていない。又購入している金融機関は無いことからから日本への影響はない。例えあっても影響は無視出来るほど軽微だ」とかいう発言が、評論家、アナリスト、金融機関、研究機関等より、良く聞こえてきた。

 日銀総裁ですら、サブプライムローン問題は欧米の金融機関の間の話で、日本への影響は軽微であると語っていたように私は記憶している。

 私は、それらとは全く異なり、鑑定コラム386)「日銀はいつまで超低金利政策を続けるのか」(2007年11月5日発表)で、金融のグローバル化を考えれば、サブプライムローン問題は日本は例外であるとして存在するものでなく、必ず日本経済にボクシングのボディーブローのごとくじわりじわりと効いてきて、影響を及ぼすと述べた。

 私の知る限りでは、その頃、サブプライムローン問題は、日本経済に重大な影響を及ぼすと発言する人はいなかった。

 そして私は2008年3月8日、つまり4日前に鑑定コラム413)「東証リート指数1400割れ(2008年3月7日)」を発表した。
 そのコラムで、Jリートの価格が30%下落しており、地銀は集めた預金をJリート購入に充てているが、Jリートの価格下落で赤字決算の銀行がでなければよいがと述べた。

 Jリート株はサブプライムローン商品では無いが、有価証券の1つで有ることには間違いない。
 有価証券の価格下落で、銀行が経営不安に陥ることを恐れた。

 その杞憂が、コラム記事発表4日後に現実に発生してしまった。

 まさか、杞憂の予測が4日後に現実に発生、的中するとは。

 金融支援に陥った滝野川信用金庫の経営者達は、行員ともども企業存続をいかにすべきか、謙虚に考え、信金を再建して欲しい。

 甘い考えを持っていたら、会社が無くなってしまうのが容赦の無い現実であると思って信金再建に立ち向かって欲しい。

 行員を路頭に迷わすようなことを絶対しないようにして欲しい。
 銀行員の再就職先を見つける事は容易いことでは無い。
 会社員の殆どは、勤めている間は再就職の事など考えた事は無く、職を探すことなどは別の世界に住む人のやることと多くの会社員は考えているが、いざ自分が解雇されて就職先を捜すとき、それがどれ程難しいことか、そして自分の無力さを新ためて実感するであろう。

 私は職業柄、金融機関の不良債権処理の不動産鑑定を通じて、金融機関の合併・消滅によって、その後の人生を狂わされた銀行員の姿を多く見てきた。
 勝ち組・負け組の銀行員の姿である。

 また潰れた金融機関から融資を受けていた企業も、強制的な借り金の取り立てにあって、倒産する姿も見てきた。貸した方、借りた方、双方が地獄である。
 悲惨である。

 貸した方、借りた方、双方が地獄にならないように、経営者、行員共に頑張って滝野川信用金庫を立派に立て直して欲しい。


 上記で引用した鑑定コラムは、下記をクリックすれば繋がります。
 鑑定コラム386)「日銀はいつまで超低金利政策を続けるのか」
 鑑定コラム413)「東証リート指数1400割れ(2008年3月7日)」


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